KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、50回目の連載となる。では、講義をはじめよう。
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今回はVulfpeck(ヴォルフペック)のメンバー、
Joey Dosik(ジョーイ・ドーシック)について、どこよりも詳しく紹介する記事の最終回だ。
👆前回の記事では、Joey Dosikの人物紹介や、代表曲の解説、また幼少期から大学時代までの経歴を深堀りした。今回は、大学卒業から2023年現在までの経歴について解説していきたい。
それでは、はじめよう。
大学卒業~Vulfpeck参加まで
2008年にミシガン大学を卒業したJoeyは、My Dear Discoに参加していたためしばらくアナーバーに残ったが、2009年9月にバンドを脱退したことを機に、ロサンゼルスに帰郷。
以前は郊外に住んでいたが、今度はロサンゼルスの中心に近い、エコー・パークに引っ越してきた。
まず、2009年のシャフィーク・フセインのアルバム『Shafiq En' A-Free-Ka』にサックスで参加。ビラル、サンダーキャット、クリス・デイヴなどと同じトラックで演奏した。
さらに2011年には、My Dear Discoを辞めたTheo Katzmanが作った、初のソロアルバムにも参加した。こちらはキーボードでの参加。
同年、2011年にはニッカ・コスタのバンドに参加。キーボードを弾くツアーミュージシャンとして生計を立てていた。このバンドではプリンスとも会い、プリンス主催のフェスに出演したりもしている。
(👇Joey参加のライブ)
そしてこのニッカ・コスタのバンドを通じて、ついにあの男と出会うのである。
こちらの映像が、Jackが観たというニッカ・コスタのライブ。Joeyがシャツを着てキーボードを弾いているのが分かる。内容はゴリゴリのファンク、Jackが気に入ったことは言うまでもないだろう。
ついにJackと知り合ったJoey。ここからJackはJoeyの才能に惚れ込み、JoeyのMVをいくつか作っていく。
このようにJoeyに惚れ込んでいたJackが、自身のバンドにJoeyを呼ぶのは自然な流れだったろう。しかも、そのバンドにはかつてのルームメイトにしてバンドメイト、Theo Katzmanがいるのだ。
そして2012年、Joey DosikはVulfpeckの「Outro」のレコーディング」に参加する。
この時、同じアルバムでJoeyは「It Gets Funkier Ⅱ」にもキーボードで参加した。
このようにして、度々JoeyはVulfpeckに参加するようになっていくのである。
Vulfpeck参加~2017年まで
2012年には自身初となるアルバム、「Where Do They Come From?」をリリースしていたJoey。この頃すでに、ソウルのシンガーソングライターとしてのスタイルは確立している。
(👆2012年のJoeyの映像。既にRunning Awayを作曲し、現在のスタイルを確立させている)
2013年には、Vulfpeckの「It Gets Funkier Ⅲ」「Kuhmilch 74 BPM」に参加。さらに、2013年のニューヨークで行われたライブでは、Vulfpeckに参加しただけでなく、前座として自身のライブも行った。
ちなみにJoeyはVulfpeckの正式メンバーというわけではなく、非常に近い位置にいるレコーディング&ツアーメンバーのような立ち位置である。
特にこの時期は参加が不定期で、実際に2014年のアルバム『Fugue State』には参加しておらず、2014~2015年のライブにもほぼ参加していない。
2014~2015年頃、バスケットボールのプレイ中に前十字靭帯(ACL)を断裂するという、膝の大怪我を負ってしまう。その回復中、ACL再建術という治療を受けている時に「Game Winner」を作曲した。
こちらはVulfpeckで2015年に、自身のソロアルバムで2016年にリリースされている。
また、2015年にMOCKYのアルバム『Key Change』に参加。
LAのシンガーソングライターであるMOCKYとはとても良い音楽仲間となり、このアルバムのツアーで、MOCKYとJoeyは一緒に2015年に来日した。これがJoeyの初来日である。
またサブスクには上がっていないが、2015年にはディアンジェロのカヴァーもレコーディングしている。
2016年には、クインシー・ジョーンズ主催のライブ「Quincy Jones Presents」に招待され、「Running Away」などを演奏した。
そしてこの後、2017年がJoeyの知名度を大きく上げた年になったと言えるだろう。
Vulfpeckのアルバム『Mr. Finish Line』にて、ソウルのレジェンドであるデヴィッド・T・ウォーカー、ジェームス・ギャドソンと共演。
これらの動画、特に「Running Away」でJoey自らが歌い、自分の曲でソウルのレジェンドをバックに演奏したことが大きな話題を呼んだ。
曲自体も素晴らしく、演奏も非の打ち所がない。現在でもJoeyを代表する動画のひとつだと言える。
ちなみにこの頃にはVulfpeckのライブにはほぼ必ず参加するようになっており、Cory Wongを含めた7名がバンドのツアー体制として固まっていた。2017年のヨーロッパツアーにも参加している。
この頃のVulfpeckはJoeyが前座としてライブを行い、JackやTheoがバックを務めるのも定番になっていた。
さらに2017年にはマディソン・スクエア・ガーデンにて、NBAの試合前に国歌斉唱を行う。これはJoeyらしく弾き語りで行われ、これもJoeyの知名度が上がっていたことを示すひとつの大きな出来事となっていた。
そして、2017年はもうひとつ、Joeyにとっても大きなニュースがあった。ついにレーベルと契約したのである。
2018年~2023年
2017年にSecretly Canadianレーベルと契約したJoeyは、ついに自身初のフルアルバム『Inside Voice』を2018年にリリース。
この頃、2018年にはアメリカのABCテレビで放映されているトーク・ライブ番組「ジミー・キンメル・ライブ!」に出演。
さらに「Inside Voice Tour」としてアメリカだけでなくヨーロッパも周るなど、精力的な活動を行っていた。
ちなみにこの頃、TheoとJoeが参加したライブが白眉なので是非ご覧いただきたい。
2018年にはVulfpeckの「Half the Way」「Darwin Derby」「Love is a Beautiful Thing」「For Survival」「It Gets Funkier IV」に参加。
さらに2019年には、The Fearless Flyersの「The Baal Shem Tov」や、Scary Pocketsのカヴァー「Believe」に参加した。
2019年7月、Joeyはブルーノート東京に出演するために来日。これが彼の2度目の来日となった。このライブにはJoe Dartが帯同。
この時はブルーノート系列店の、新宿のカフェレストランでライブも行っている。
そして2019年9月。今度はNBAの試合ではなく、自らの手で、Vulfpeckとしてマディソン・スクエア・ガーデンにてライブを行う。Jackの手腕によりチケットは完売。約14000人が集まった伝説のライブとなった。
この後は2019年、2020年に、アルバムに収録されないシングルを数曲公開。「Lakers Town」「23 Teardrops」はバスケットボール・ラブソングとなっており、Joeyの世界観がとてもよく表現された名曲となっている。
Vulfpeckでは2020年に発表された「LAX」「3 on E」「Test Drive」「Radio Shack」「Something」に、また2022年のアルバム『Schvitz』では全ての曲に参加。
この「In Heaven」はJoeyの2018年のアルバムに収録された曲のカヴァーとなっている。これでVulfpeckがJoeyの曲をカヴァーするのは4回目のこととなった。
(これについては過去の私の記事で理由を解説しているので、ぜひご覧いただきたい👇)
他にも、2021年にThe Bamboosのアルバムに、2022年にCory Wongのアルバムに参加している。
さらにJoeyはライブを行いながらアルバム制作も進めていき、ついに2023年にニューアルバム『The Nostalgiac』をリリースした。
そして、満を持して、2023年12月に、3度目の来日を果たす……。
以上が、Joey Dosikの2023年末までの経歴である。
こうして見てみると、最初はジャズミュージシャンとして音楽活動をスタートしたが、やはり大学時代のMy Dear Discoでジャズを離れた経験が、現在のVulfpeckなどでのJoeyの活動に大きく繋がっていると言えるだろう。
こうしてよりJoeyを知ることで、彼の楽曲やライブに触れるときに、さらにそれらを楽しむようになれれば筆者としても幸いである。
最後に、2023年11月にニューヨークで行われた、Joeyの最新のライブを紹介して終わりにしよう。これを観ていただければ、新曲も含めた現在の彼のスタイルが把握できる。
ブルーノート東京が行った、来日直前のインタビューも公開された。ニューアルバムに関してもたっぷりと話しているので、さらにJoeyの世界について触れることができるだろう。
―――――著者情報――――――
Dr.ファンクシッテルー
宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動しています。
「KINZTO」の活動と並行して、音楽ライターとしても活動しています。
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