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どこよりも詳しいJoey Dosikまとめ /// 来日直前!Vulfpeckでも活躍する稀代のシンガーソングライターを徹底解説[3] 経歴・後編

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、50回目の連載となる。では、講義をはじめよう。

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今回はVulfpeck(ヴォルフペック)のメンバー、

Joey Dosik(ジョーイ・ドーシック)について、どこよりも詳しく紹介する記事の最終回だ。



👆前回の記事では、Joey Dosikの人物紹介や、代表曲の解説、また幼少期から大学時代までの経歴を深堀りした。今回は、大学卒業から2023年現在までの経歴について解説していきたい。

それでは、はじめよう。


大学卒業~Vulfpeck参加まで

I did. Well, first I went to Yeah. Ann Arbor, Michigan. Yes. back to LA I lived in Echo Park for about seven years.

まず、僕はミシガン州アナーバーに行ったんです。その後、ロサンゼルスに戻ってエコー・パークに7年ほど住みました。

the third story : Joey Dosik

2008年にミシガン大学を卒業したJoeyは、My Dear Discoに参加していたためしばらくアナーバーに残ったが、2009年9月にバンドを脱退したことを機に、ロサンゼルスに帰郷。

以前は郊外に住んでいたが、今度はロサンゼルスの中心に近い、エコー・パークに引っ越してきた。

画像赤枠がエコー・パーク
画像出典:Google Map

まず、2009年のシャフィーク・フセインのアルバム『Shafiq En' A-Free-Ka』にサックスで参加。ビラルサンダーキャットクリス・デイヴなどと同じトラックで演奏した。


さらに2011年には、My Dear Discoを辞めたTheo Katzmanが作った、初のソロアルバムにも参加した。こちらはキーボードでの参加。


同年、2011年にはニッカ・コスタのバンドに参加。キーボードを弾くツアーミュージシャンとして生計を立てていた。このバンドではプリンスとも会い、プリンス主催のフェスに出演したりもしている。

(👇Joey参加のライブ)

I was lucky enough to play in the amazing singer Nikka Costa's band, and Nikka was tight with Prince. They worked together, had written together and Prince was coming out to our shows sometimes, and he had us come to Denmark to play a festival with him, and I kind of got to be around him. I remember being side stage in Copenhagen standing in between Larry Graham on my left and Prince on my right and we're watching Chaka Khan, and I'm pretending to be a normal person: "They're just watching the show, yeah this is music, this is Chaka … " and every now and then Prince would start dancing. He would walk out to the side and do a little majestic Prince twirl or something.

Joey : 僕は幸運にも、素晴らしいシンガー、ニッカ・コスタのバンドで演奏することができました。ニッカはプリンスと仲が良かった。彼らは一緒に仕事をし、一緒に曲を書いていて、プリンスは時々私たちのライブに来てくれていました。
 
しかもデンマークで一緒に(筆者注:プリンス主催の)フェスに出演することになって、僕はプリンスの周りにいられるようになったのです。コペンハーゲンのサイドステージで、左のラリー・グラハムと右のプリンスの間に挟まれて、チャカ・カーンを観ていたとき、僕は普通の人のフリをしていたのを覚えています。彼らはただショーを見ているだけだ……そう、これは音楽だ、これはチャカだ……そんなふうに普通の人のフリをしていると、ときどきプリンスが踊り始めるんです。彼は脇に出てきて、ちょっとしたツイストを、プリンスらしく踊っていました。

Joey Dosik talks about releasing his 'Inside Voice'


そしてこのニッカ・コスタのバンドを通じて、ついにあの男と出会うのである。

Leo:あなたはJackのことを知っていましたか?

Joey:大学にいた頃は知りませんでした。卒業してすぐだったと思いますが、Jackに本当に会ったのは、僕がロサンゼルスに引っ越して、ツアーミュージシャンとして活動していた時です。キーボード奏者としてバンドのツアーに参加していました。

Leo:それは誰のツアーでした?

Joey:ニッカ・コスタです。彼女は素晴らしい。ファンク・シンガーと呼んでもいいと思います。当時、Jackはシカゴに住んでいました。彼がそこに住んでいた時期は短くて……。

Leo:それは知らなかった。

Joey:そう、Jackは(筆者注:卒業後にアナーバーから)シカゴに引っ越して、そこでコメディーをやろうとしていました。なぜなら、シカゴには大きなコメディーのシーンがあったからです。彼がそこにいたのは半年くらいだったはずですけど。

Leo:(筆者注:Jackにインタビューした時には)彼はロサンゼルスに引っ越したと言っていたように思います。引っ越すにあたって、誰かがJackを説得したはずなんですが……。

Joey:ああ、それは(筆者注:既にロサンゼルスに住んでいた)ロブ・ステンソンですね。グッドヘルツ社の。彼は僕の「Game Winner」のMV監督とリミックスを担当してくれました。彼は天才ですよ。

Leo:ええと、Jackはシカゴにいたんですよね。話を戻しましょう。

Joey:(筆者注:2011年8月21日に)Jackは僕がいたニッカ・コスタのライブを観に来ました。彼はショーを気に入っていたと思います。バンドはすごかったし、ファンク・ミュージックでしたし。そこで初めて知り合いになったんです。

Leo:あなたがMy Dear Discoを辞めていたので、知り合う機会がなかったんですね?

Joey:そうです。僕たちはお互いに面識はありませんでしたが、共通の友人がたくさんいました。僕は、バンドのメンバーやミシガンの仲間たち(筆者注:JackやTheoなど)がロサンゼルスに引っ越すための、磁力のようなものとして機能したと思っています。Theoに対してはアグレッシブにやろうと思って、電話もかけていました。彼はニューヨークに住んでいたんです。(中略)

 Jackもロサンゼルスにやってきて、4日間くらい僕の部屋に泊まっていきました。狭い部屋だったので、同じベッドで一緒に寝ました。しかも暑い、とっても暑い時期でした。気温は100度(筆者注:摂氏37.8℃)くらいで、僕の部屋にはエアコンがなかった。そしてその時に、一緒にマーヴィン・ゲイやポール・マッカートニーのカヴァーなど、いくつかのビデオを撮影したんです。Jackも満足していたみたいでした。さらに、彼をライブか何かに連れて行ったようにも思います。その後、Jackも説得されてロサンゼルスに引っ越してきて、(筆者注:Theoも含めて)みんなロサンゼルスで生活するようになったんです。

the third story : Joey Dosik

こちらの映像が、Jackが観たというニッカ・コスタのライブ。Joeyがシャツを着てキーボードを弾いているのが分かる。内容はゴリゴリのファンク、Jackが気に入ったことは言うまでもないだろう。

Jack Stratton(ジャック・ストラットン)/// Vulfpeckのリーダー
画像出典:VULFPECK /// Beastly

ついにJackと知り合ったJoey。ここからJackはJoeyの才能に惚れ込み、JoeyのMVをいくつか作っていく。


このようにJoeyに惚れ込んでいたJackが、自身のバンドにJoeyを呼ぶのは自然な流れだったろう。しかも、そのバンドにはかつてのルームメイトにしてバンドメイト、Theo Katzmanがいるのだ。

そして2012年、Joey DosikはVulfpeckの「Outro」のレコーディング」に参加する。

画像出典:VULFPECK /// Outro

But with saxophone, I just have like, after college, my relationship with the saxophone was a little weird. I didn't get a lot of enjoyment playing it. And outro was the thing that kind of flipped that for me. Because jack was like, come to the studio, you know, and I was like, cool, cool. He's like, bring your sax. Okay, okay, I'll do that. And so I brought my sax and hadn't played it in a long time and took it out.

Joey : でも、サックスに関しては、大学卒業後、サックスとの関係がちょっとおかしくなってしまっていたんです。その頃はサックスを吹いていてもあまり楽しくなかった。でも、それを覆したのが「Outro」のレコーディングだったんです。Jackは、「いいからスタジオに来てくれよ」みたいな感じでした。彼はサックスを持ってこいと言いました。わかった、わかった、そうするよって。それで、長い間吹いていなかったサックスを持っていって、吹いてみたんです。

the third story : Joey Dosik

この時、同じアルバムでJoeyは「It Gets Funkier Ⅱ」にもキーボードで参加した。

中央の赤白のキャップがJoey。
画像出典:VULFPECK /// It Gets Funkier II

このようにして、度々JoeyはVulfpeckに参加するようになっていくのである。



Vulfpeck参加~2017年まで

2012年には自身初となるアルバム、「Where Do They Come From?」をリリースしていたJoey。この頃すでに、ソウルのシンガーソングライターとしてのスタイルは確立している。

――ありがとうございます(笑)。そもそも、あなたは初めて組んだバンドが、高校時代のジャズ・バンドだと聞きました。サックスも演奏するあなたが、ピアノを弾いて歌うスタイルになった経緯を教えてください。

J:大学へはサックスの勉強のために行って、そこでジャズに夢中になった。20歳前後くらいのときだったかな、自分の残りの人生ついて考え始めたんだ。そのときに原始的な体験、幼少期を振り返ったら、僕にとって最初の楽器は歌でありピアノだったことを思い出した。そんなことを考えていたら、自分が良い曲をつくって歌えるか、そしてアルバムを作れるか、挑戦してみたいという気持ちになったんだ。挑戦しないで後悔したくなかったし、いまも試行錯誤の途中だよ。

1つの扉やチャンスが閉じられてしまっても他の扉が開かれる
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(👆2012年のJoeyの映像。既にRunning Awayを作曲し、現在のスタイルを確立させている)



2013年には、Vulfpeckの「It Gets Funkier Ⅲ」「Kuhmilch 74 BPM」に参加。さらに、2013年のニューヨークで行われたライブでは、Vulfpeckに参加しただけでなく、前座として自身のライブも行った。


ちなみにJoeyはVulfpeckの正式メンバーというわけではなく、非常に近い位置にいるレコーディング&ツアーメンバーのような立ち位置である。

特にこの時期は参加が不定期で、実際に2014年のアルバム『Fugue State』には参加しておらず、2014~2015年のライブにもほぼ参加していない。


2014~2015年頃、バスケットボールのプレイ中に前十字靭帯(ACL)を断裂するという、膝の大怪我を負ってしまう。その回復中、ACL再建術という治療を受けている時に「Game Winner」を作曲した。

こちらはVulfpeckで2015年に、自身のソロアルバムで2016年にリリースされている。



また、2015年にMOCKYのアルバム『Key Change』に参加。

LAのシンガーソングライターであるMOCKYとはとても良い音楽仲間となり、このアルバムのツアーで、MOCKYとJoeyは一緒に2015年に来日した。これがJoeyの初来日である。

来日記念で作られた曲と、その模様を修めたMV。他にも、回転寿司を食べるJoeyが観られる。
画像出典:"Amaimono" (Sweet Things ) Mocky feat. Nia Andrews and Joey Dosik


またサブスクには上がっていないが、2015年にはディアンジェロのカヴァーもレコーディングしている。


2016年には、クインシー・ジョーンズ主催のライブ「Quincy Jones Presents」に招待され、「Running Away」などを演奏した。

I saw you play a show at the Lyric Theater presented by Quincy Jones, who appeared on screen to introduce you with some very kind words. It must be amazing to have the endorsement of such a legendary figure in music. How did that relationship come about?

Quincy Jones Productions reached out to me a couple years ago, and we had been talking about doing something together for a long time. It manifested in this show with the Lyric Theater with Coco O, and it was just insane to have Quincy Jones somehow be a part of it. Because we are all at the altar of Quincy Jones. He means everything to me. He’s like a musical spirit animal. You can be in the studio and just sort of call on him in your brain, and it might give you the inspiration that you need.

Allegra : クインシー・ジョーンズがスクリーンであなたを紹介し、とても優しい言葉をかけてくれあした。そのような音楽界のレジェンドから推薦を受けるというのは、素晴らしいことですね。どうやってその関係を築いたのですか?

Joey : クインシー・ジョーンズ・プロダクションが数年前に僕に連絡をくれたんです。それが今回のCoco O.とのリリック・シアターでのショーに繋がっていったわけですが、クインシー・ジョーンズが関わっているなんて、まったく信じられませんでした。僕たちは皆、クインシー・ジョーンズの影響を受けているのですから。彼は僕にとってすべてを意味しています。彼は音楽における目標のようなものです。スタジオにいるときに、頭の中で彼を呼び出せば、必要なインスピレーションを与えてくれるかもしれません。

Fan Interview: Joey Dosik By Allegra Rosenberg
Quincy Jones主催イベントでのライブの様子。
画像出典:Joey Dosik Facebookページ


そしてこの後、2017年がJoeyの知名度を大きく上げた年になったと言えるだろう。

Vulfpeckのアルバム『Mr. Finish Line』にて、ソウルのレジェンドであるデヴィッド・T・ウォーカージェームス・ギャドソンと共演。

これらの動画、特に「Running Away」でJoey自らが歌い、自分の曲でソウルのレジェンドをバックに演奏したことが大きな話題を呼んだ。

曲自体も素晴らしく、演奏も非の打ち所がない。現在でもJoeyを代表する動画のひとつだと言える。


ちなみにこの頃にはVulfpeckのライブにはほぼ必ず参加するようになっており、Cory Wongを含めた7名がバンドのツアー体制として固まっていた。2017年のヨーロッパツアーにも参加している。

ベルギーでの2017年のライブ。Joeyは右端
画像出典:Vulfpeck Live at AB - Ancienne Belgique

この頃のVulfpeckはJoeyが前座としてライブを行い、JackやTheoがバックを務めるのも定番になっていた。


さらに2017年にはマディソン・スクエア・ガーデンにて、NBAの試合前に国歌斉唱を行う。これはJoeyらしく弾き語りで行われ、これもJoeyの知名度が上がっていたことを示すひとつの大きな出来事となっていた。


そして、2017年はもうひとつ、Joeyにとっても大きなニュースがあった。ついにレーベルと契約したのである。



2018年~2023年

2017年にSecretly Canadianレーベルと契約したJoeyは、ついに自身初のフルアルバム『Inside Voice』を2018年にリリース。

He also spoke highly of his record label, Secretly Canadian, saying it shares mutual interests with him.
“When we chatted and got to know each other, I really got to recognize they are about the art and they get the music,” Dosik said. “Our relationship is one that will allow me to create, which is what I do best. It just seemed like a great fit.”

彼はまた、彼のレコード・レーベルであるSecretly Canadianを高く評価し、レーベルが自分と共通の関心を持っていると語った。「僕たちの関係は、創作を後押しするものです。創作こそが僕がもっとも得意とするもの。まさにぴったりな関係だと思いました」

On The Daily: U of M Alum to appear on ‘Jimmy Kimmel: Live!’


この頃、2018年にはアメリカのABCテレビで放映されているトーク・ライブ番組「ジミー・キンメル・ライブ!」に出演。

さらに「Inside Voice Tour」としてアメリカだけでなくヨーロッパも周るなど、精力的な活動を行っていた。

ちなみにこの頃、TheoとJoeが参加したライブが白眉なので是非ご覧いただきたい。


2018年にはVulfpeckの「Half the Way」「Darwin Derby」「Love is a Beautiful Thing」「For Survival」「It Gets Funkier IV」に参加。

さらに2019年には、The Fearless Flyersの「The Baal Shem Tov」や、Scary Pocketsのカヴァー「Believe」に参加した。


2019年7月、Joeyはブルーノート東京に出演するために来日。これが彼の2度目の来日となった。このライブにはJoe Dartが帯同。

この時はブルーノート系列店の、新宿のカフェレストランでライブも行っている。


そして2019年9月。今度はNBAの試合ではなく、自らの手で、Vulfpeckとしてマディソン・スクエア・ガーデンにてライブを行う。Jackの手腕によりチケットは完売。約14000人が集まった伝説のライブとなった。

画像出典:Vulfpeck Live at Madison Square Garden


この後は2019年、2020年に、アルバムに収録されないシングルを数曲公開。「Lakers Town」「23 Teardrops」はバスケットボール・ラブソングとなっており、Joeyの世界観がとてもよく表現された名曲となっている。


Vulfpeckでは2020年に発表された「LAX」「3 on E」「Test Drive」「Radio Shack」「Something」に、また2022年のアルバム『Schvitz』では全ての曲に参加。

この「In Heaven」はJoeyの2018年のアルバムに収録された曲のカヴァーとなっている。これでVulfpeckがJoeyの曲をカヴァーするのは4回目のこととなった。

(これについては過去の私の記事で理由を解説しているので、ぜひご覧いただきたい👇)


他にも、2021年にThe Bamboosのアルバムに、2022年にCory Wongのアルバムに参加している。


さらにJoeyはライブを行いながらアルバム制作も進めていき、ついに2023年にニューアルバム『The Nostalgiac』をリリースした。



そして、満を持して、2023年12月に、3度目の来日を果たす……。



以上が、Joey Dosikの2023年末までの経歴である。

こうして見てみると、最初はジャズミュージシャンとして音楽活動をスタートしたが、やはり大学時代のMy Dear Discoでジャズを離れた経験が、現在のVulfpeckなどでのJoeyの活動に大きく繋がっていると言えるだろう。

こうしてよりJoeyを知ることで、彼の楽曲やライブに触れるときに、さらにそれらを楽しむようになれれば筆者としても幸いである。


最後に、2023年11月にニューヨークで行われた、Joeyの最新のライブを紹介して終わりにしよう。これを観ていただければ、新曲も含めた現在の彼のスタイルが把握できる。

ブルーノート東京が行った、来日直前のインタビューも公開された。ニューアルバムに関してもたっぷりと話しているので、さらにJoeyの世界について触れることができるだろう。





―――――著者情報――――――

Dr.ファンクシッテルー

イラスト:小山ゆうじろう先生

宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動しています。
「KINZTO」の活動と並行して、音楽ライターとしても活動しています。

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