見出し画像

薬物犯に対するマスコミと世論の制裁は過剰ではないか?

日本大学のアメリカンフットボール部で大麻所持など違法薬物事件があり報道が加熱しています。一部の容疑者は実名で顔写真付きで報道されていました。
また、事件はクラブ内で広がりを見たことから、日本大学がアメフト部を廃部にするというような話も出ているようです。

犯罪は法律で裁かれますが、それとは別に社会的制裁が加えられることがあります。例えば今回のように報道による制裁、その人が所属していた団体からの制裁もありますし、社会人であれば就労に関する制裁、また時には家族に対する誹謗中傷なども起こります。
行き過ぎてしまい人権侵害となることもあります。

日本弁護士連合会「人権と報道に関する宣言」でも行き過ぎた犯罪報道について警鐘を鳴らしています。
https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/1987/1987_1.html

また、私的制裁は行き過ぎると加害行為にもなります。薬物犯を過剰に悪者とし、周囲の人間まで巻き込んで「連帯責任」として制裁を加えることはやり過ぎではないでしょうか?

特に薬物の単純所持は被害者がいません。薬物の単純所持犯は薬物の蔓延や問題使用を防ぐ「抑止力・見せしめ」として、法的に制裁を受けます(これを一次予防といいます)。これは人権的に問題があるのではないかと世界的に議論されており、もしかすると数十年後には日本でも見直されるかもしれません。
そんな彼らに更に社会が追加して制裁を加える必要がありますでしょうか?

今回の事件は大学生ですが、大麻事犯は近年増加しており特に若者の占める割合が多くなっています。若く将来ある若者の未来をつんでしまって良いのでしょうか。

令和4年 再犯防止推進白書より
https://www.moj.go.jp/hisho/saihanboushi/hisho04_00009.htm

犯罪歴があると就職が難しくなります。大麻取締法で逮捕された方から、職場を解雇され、その後の再就職も難しいという話を聞きます。
さらに、無職であると再犯率が高くなると言われており、犯罪者の就労は大きな問題です。

https://www.moj.go.jp/content/001222537.pdf

報道でデジタルタトゥーが残ることで、さらに就労は困難になるでしょう。再犯を高めるようなことを社会的に行うべきでしょうか?

現代の日本の薬事行政はダメ絶対、すなわち「ゼロ寛容政策」をとっており、一度でも薬物を用いると人間ではなくなってしまうなど過剰なキャッチフレーズで薬物教育を行ってきました。また、厚労省の麻薬取締局は大麻もオピオイドもコカインもまとめて「麻薬」として取り締まるという法改正を行い、薬物の薬理作用や実際の害は国民に詳しく知らせず一緒くたに取り締まる方針です。

このような状況では世の中の人が大麻事犯を深刻と受け止め、容疑者の人権を二の次にセンセーショナルに騒ぎ立ててしまうのも分かります。

しかし実際には彼らは普通の若者でしょう。世界的に大麻は第三の嗜好品として広がりを見せており、本場のアメリカンフットボールの選手でも大麻使用者がいる状況です。
欧米では大麻が軽犯罪化、非犯罪化、合法化されており、これから留学に行く若い人が大麻を使用する機会も増えてきます。彼らのほとんどは皆さんのお子さんやお孫さんと同じ普通の若者でしょう。
彼らに過剰な社会的制裁を加えて社会から排除してよいですか?

特にリベラルで多様性を大切にする人は彼らの人権について考えて下さい。また、彼らの将来を暗いものにすることが社会にとって良いことなのか考えて下さい。
より良い社会のためにご一考いただけますと幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?