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DL作家のご紹介

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週刊ドリームライブラリで活躍する作家の皆さんをご紹介するマガジンです。作品の中から一編をご紹介します。
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#小説

小説「投稿者の名はキャリアちゃん」(おぼん・ライン・ほし)

三題話の今回テーマは「おぼん・ライン・ほし」とある。 三題話というのは、題が3つ出され、それを文章の中に織り込んで物語なりエッセイなりを考えるという私が参加している小説サイトのイベントの一つだ。 3つもの指定された言葉を織り込んでの制限を受ける話など最初は無理だと思ったが、何度か経験するうちに、面白くなってきた。 また他に参加する作家たちの話が興味深かった。 同じテーマにもかかわらずその内容やスタイルが千差万別で驚きを感じ良い刺激になる。 さらに、プロットも何も浮かばず書

小説「路地裏には不思議なお店があるらしい」

 確かこの辺りだと思ったけれど違ったかな。 私は現在、数日前偶然見つけ占いをしてくれたおばあさんのお店を探している。 あの噂はどうやら本当らしい。 ――よく当たる占いのおばあさんの店がこの町の路地裏のどこかにあるのだが探しても誰もがその店を見つけられるわけじゃ無い。 例えその店で占ってもらって次に同じ場所を訪れても何故か見つけられないと言う不思議な店があるらしい――  私は別に占ってもらいたいことがあった訳じゃなかった。 引っ越して間もない私は散歩がてらの町探検だった。横

あなたがいることで

 開通したばかりのシーサイドロードを星川椿(ほしかわつばき)は走っている。このラインができて週に数回の往復が便利になった。椿の自宅から県内のほぼ南端に位置する実家までの小一時間は、椿ひとりの自由な時間。スマホからブルートゥースで飛ばしたお気に入りの音楽が車内でランダムに流れている。椿はハンドルを握る両手に力が入るのを感じながらアクセルを踏む。雪道だというのにすれ違う車はスマートな運転で走り去る。対向車が途切れると右側に海が見えた。  冬の海には荒れた波がたち、その波は陸に近づ

【創作】ゴールライン

※お世話になっております『週刊ドリームライブラリ』さんの三題話に挑戦した2018年の作品です。お題は「おぼん」「ライン」「ほし」でした。良かったら読んでみて下さい。 https://note.com/dreamlibrary 定年退職した良作が、居酒屋「おかめ」に顔を出す頻度も増えた。カウンター席ばかりの小さな店で、気安く飲める。 その日店に入ると、一番奥の席に馴染みの顔があった。痩せて小柄で、髪も髭も伸び放題だが、善人を絵に描いたような笑顔。残り少ない歯も愛嬌である。