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ステロイド外用薬の誤解

ステロイドは副腎という臓器から出てくるホルモンで、天然ものです。

かつて不適切に使われた時代の名残で、何だか恐ろしい薬と漠然と考えていらっしゃる方もまだまだ多いと感じます。

九州大学医学部皮膚科のHPにアトピー性皮膚炎のしっかりとした根拠に基づいた情報がまとめられていて、とっても有用です。

今回はここから「ステロイド外用薬を不安に思う理由」の記載を以下に転記しました。



1.ステロイド外用薬が体に蓄積されて患部も広がり更に悪化する


ステロイド外用薬が体に蓄積することはありません。

外用薬は皮膚で効果を発揮し、体内に吸収されることはほとんどありませんが、血液中に入った場合でもいろいろな酵素で代謝されるようになっています。

また、ステロイドが蓄積することで患部が悪化したのではなく、適切な治療がされなかったために患部が広がったことが考えられます。




2.ステロイド外用薬を塗れば塗るほど皮膚が黒く、固くなる


ステロイド外用薬を塗ることで皮膚が黒く、固くなることはありません。

適切な治療をせずに炎症を長引かせることにより、色素沈着がおこり皮膚が黒くなったり苔癬化といってゴワゴワとした固い皮膚になることがあります。




3.長期間使っていると慣れてきて強いランクの薬でも効かなくなる


どんなに長く使ってもステロイド外用薬が効かなくなることはありません。

皮膚の炎症の強さに合ったステロイド外用薬を使わないと塗っても効かないと思うことがあるかもしれません。

主治医に患部を見せ、適切な強さのステロイド外用薬を使うことや塗り方をチェックしてもらうことが必要です。




4.ステロイド外用薬を処方されて塗るとすぐに効くので、強い薬なのではと怖くなる


すぐに効いたということは、症状に合ったステロイド外用薬が処方されたということで、強い薬だということではありません。

すぐに効いたからとやめてしまわず、医師から指導された期間はきちんと塗り、良くなったら薬を変えられるのか受診して確認しましょう。

すぐに効いたということは適切な治療を受けているということですので安心してください。




5.副腎機能を抑制し、内臓疾患を起こす


ステロイドの内服を長期間使うことで副腎機能を抑制することはありますが、外用薬を主治医の処方通りに塗って副腎機能の抑制を起こすことはありません。

ステロイド軟膏を塗ることで、皮膚から吸収され血液中に検出されるステロイドの量はきわめて微量で、検出できないこともほとんどです。

腸管から直接吸収される内服のステロイドとの大きな違いです。内服の副作用と混同している情報もありますので注意してください。




6.アトピー性皮膚炎はステロイドが原因でなる病気と本で見た


アトピー性皮膚炎はアトピー素因と言われる体質とバリア異常により発症します。

ステロイド外用薬が原因でなる病気ではありません。

アトピービジネスの本などでこのようなことが書いてあることがありますが、全くの誤りです。




7.やめると「リバウンド」が起きてひどい状態になる


ステロイド外用薬を使って皮膚の炎症を抑えている途中でステロイド外用薬をやめてしまうために、炎症がぶり返して以前よりさらに悪化したように思うことを「リバウンド」だと思っている人がいます。

皮膚の下の炎症までしっかりと治療してからやめると、すぐに悪化するということはありません。




8.「長期連用は良くない」と言われるが、医師はステロイド外用薬を出すだけ


皮疹の状態によりステロイド外用薬を使う期間は様々です。

医師は皮疹を見てステロイド外用薬が必要と判断して処方しています。

薬の強さや副作用の心配があれば主治医に確認してみましょう。




9.ステロイド外用薬を使うと一生やめられなくなる


一生やめられなくなるということはありません。

適切な治療をすることで良くなり、やめられるようになった人はたくさんいます。

ステロイド外用薬を使って炎症が取れれば使う必要はなくなり、保湿剤だけでコントロールすることもできるからです。

ただアトピー性皮膚炎はまた炎症が出てくることがありますのでその時はまた必要な期間使う必要があります。




10.ステロイド外用薬を否定する療法を勧める販売業者からの情報


アトピー性皮膚炎によいとされる商品を販売する業者がまだ存在します。

アトピービジネスといわれるもので科学的根拠のない商品や治療法を勧めるものばかりです。

このようなものにお金を使うことなく、標準治療をすることが良くなるための早道です。




11.ステロイド外用薬を使わない治療をする医師の意見


独自の治療法を推奨し、理論的に説明している医師がいますが、正しい根拠に基づいている治療とは言えないものもあります。

医師がやっている治療だからといって鵜呑みにすることなく、皮膚科専門医の標準治療を行いましょう。



<参考文献>

九州大学医学部皮膚科HP  https://www.kyudai-derm.org/atopy/patient/02.html

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