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『推す』ということ

皆さんは『推し』という言葉を聞いたことがあるだろうか。まだ辞書などのアカデミックな正式な文書には掲載されていないので、web上の言語解説サイト的なものから引用すると、『推し』の意味は以下の通りである。

自分が支持したり愛好したり信仰したりする対象を指す。AKBやハロプロなどのアイドルファンが使用していた「推しメン(=イチ推しメンバー)」が広まって短縮化した用語。「○○推し」として名前を併記するだけではなく、単に「推し」と書くことで対象をあえて匿名にした状態でも使われる。現在ではアイドル界以外にも広く浸透しており、俳優や声優などの実在人物だけではなく、二次元キャラクターや食べ物などに対しても幅広く使用される。同様の表現としてジャニーズファンなどの間で使われる「○○担(=担当)」があるが、「推し」と同義だとする解釈と明確に区別する解釈が存在しており、個々の判断に委ねられている。「箱推し(=ユニット全体のファン)」「推し変(=推しを変更する)」「単推し(=ひとりだけを応援する)」などの派生語も多数存在している。(はてなキーワードhttp://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%E4%A4%B7 2019年6月13日閲覧)

つまり、ファンの延長と解釈していいだろう。特定の女性・男性アイドルのことを猛烈に好きで、幾許か度を超えて(笑)応援しているがゆえの、愛情表現のようなものと捉えて良いと思う。

さて、何を隠そう俺にも『推し』がいる。俺は男性なのでこういうのは本来女性アイドルなのだろうが、俺の『推し』は男性アイドルである。しかも二次元。バリバリの女性向けスマホゲームのキャラクターだ。

なぜこんな事態になったのだろうかと思いを巡らすと、(詳細は省くにせよ)彼(推し)の魅力に惹かれたから、という月並みな答えしか出てこない。

「魅力に惹かれる」というのは何もアイドルだけじゃない、というのはそりゃそうで、読書の世界も同様だと思う。もちろん、衝動買いというか、表紙買いとかもある。しかし、そういった本であっても読み進めることができるのは、その本に読むだけの魅力を感じるからだ。

その魅力は別になんでもいい。作者の文章の書き方(いわゆるクセ)、ストーリーの紡ぎ方、テーマに対する作者の主張の鋭敏さ、などなど、本当になんでもいい。

我々出版甲子園実行委員会は読む人に魅力を感じてもらえるような企画を求めている。ここで重要なのは、作者の伝えたい想いが先行しすぎないことだ。本とは、「伝える」ツールである。「伝える」ツールは、常に伝わる方、つまり読者を想定しなくてはいけない

そうすると、「紙」という媒体について議論しなくてはいけなくなる。「伝える」ツールとして本がある、と定義したときの、電子書籍と紙の本の違いは何だろうか。

この違いがなぜ起きたかを考えてもいいだろう。実はこの違い、伝える側からするとそこまで大した差ではない(例外はあるけども)。伝わる方、つまり読者の問題なのだ。

皆さんも一度は読書をしたことがあるだろう。それは紙だっただろうか。はたまた電子書籍だろうか。俺の場合、実は使い分けをしている。というのは、ノベル形式のものはすべて紙で、漫画は多くの場合は電子書籍で読んでいるのだ。

これは、自分の中では意識の違いだととらえている。電子書籍ということは、たいていスマホである。スマホは、ゲームやコミュニケーションツールが入っており、なんだか遊びというかエンタメ的存在なのだ。対して、紙とはこれまで"勉強"の場面で付き合ってきた。ノベルや実用書等は必ずしも"勉強"ではないが、そういった真面目チックなものはやはり紙で読みたい気持ちがある。

出版甲子園実行委員会は紙の本に限定した募集を行っている(※電子書籍化することはある)。なぜなら、企画を送ってくださるような大学生の方々の魅力は、たいてい真面目チックな経験談がもとになっているからだ。大学生は、時間という大きな資本を持っており、そこで社会人の方々が経験し得ないことを経験している。それが、大学生たちの魅力であり、編集者たちの『推し』になりうるのだ。

このマガジンの過去掲載作を読んでいると、自分のことを外部へ伝えようとするものが多い。ということで今回は、ダイレクトに企画者へ伝える内容にしてみた。このマガジンを企画者さんがどれだけ読んでくださっているかは定かではないが、俺がnoteという「伝える」ツールの使用に賛成したのは、このような狙いがあってだ。

君は、『推し』になりえるだろうか?

第15回出版甲子園実行委員会渉外局長 PICASO~東大・早慶ベストセラー出版会~