自治体の財政状況と介護保険ー人口減少時代って本当に悪いこと?  Part2

 続編へのご要望を頂いたので、続きを。

前回、「毎年出生数は過去最低を記録し、80万人を割る一方、死亡者が倍増し、人口減少社会が進む」と書きました。

 超高齢社会の原因は、乳幼児死亡率の低下や少子化によるものです。平均寿命が延びたから、と誤解されている方も多いかもしれませんが、それは一因であって、主たる原因ではありません。沖縄は平均寿命は長いですが、高齢化率が第一位ではありません。

しかし、最近人口減少時代に既に突入していますが、それは本当に悪いことなのでしょうか?私は、社会学者として人口論も専門の一つで、私論を言えば、日本の現在の人口は寧ろ多過ぎるのではないか、と思っています。

 なぜなら、世界地図を広げれば、こんな小さい島国に、しかも4分の3が山地で少ない平野に人口が1億2千万人って過密過ぎると考えるからです。勿論、人口は大都市、特に東京に集中していて一極集中是正、というのは20世紀から言われていました。一方で限界集落から消滅集落の増加も現実です。

 一方、カナダのような広大な国土でも、人口はたった3千万人で、日本の4分の1です。グローバルに見たら、日本の人口は多いのです。

 かつて、国土庁(現国土交通省)が日本国全体の総合開発計画を策定し、それを新総合開発計画、第三次総合開発計画(略して三全総)、四全総と目標を定め、これを上位計画として各都道府県、各市区町村の基本構想を策定し、国に提出する義務がありました。その仕事を、私は多くの自治体から依頼され、審議会や委員会に参加しながら、務めてきました。 

その中では必ず、今後10年間の人口の目標があって、企業誘致や大学誘致などで人口増を謳ってきました。それではなぜ、地方自治体はかつて、常に人口増加を目標とした基本構想を策定していたのか?

 人口が増えれば、住民税も増え、活気が生まれ、より良いまちづくりに繋がる、と皆が信じていたからです。

 しかし、日本全体の人口のパイが減少するのが明らかな以上、自治体も人口増はパイの奪い合いで、現実的ではない。「高齢化」の定義も、総人口における65歳以上人口の割合」であり、過疎地域では高齢者比率は高くても人数は多くない。超高齢社会で問題なのは、割合ではなく、絶対人口なのです。

 もう少し詳しく言えば、かつては高齢化は過疎地域の問題と捉えられがちでした。しかし、今問題なのは、大都市圏に集中した人口が、一斉に加齢に伴って増加し、75歳を境に罹患率が急上昇する、後期高齢者の絶対人口が多い、大都市こそ深刻な問題なのです。

 少し考えてみれば判るのですが、家族に寝たきりの高齢者が1人いるのと、2人いるのとでは、介護の負荷が大幅に変わりますよね?しかも、高齢の子世代が更に上の80~90代以上の高齢者の介護をしなければならない、「老々介護」が大変な訳です。

 つまり、人口が多ければ良いというものではない。この議論は深いので、
自治体の行政を逼迫する大きな要因であることも、今後述べていきますね。


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