高タンパク質食って身体に良いのか?

世は空前のタンパク質ブーム。スーパーやコンビニにはタンパク質が付加された飲料や食品、お菓子などで溢れています。巷でもタンパク質の摂取を促す情報ばかりです。ネットでは「体重あたり1日2gのタンパク質をとろう」という記事も見かけます。 しかし、本当にそんなタンパク質の量は必要なのでしょうか。一体なんのためにタンパク質を取る必要があるのでしょうか。そんなにとっても大丈夫なんでしょうか。 今回は今まで語られていない「タンパク質の害」についてお話します。  

タンパク質は消化管で吸収、肝臓で代謝され、腎臓で排泄

まずは、口から食べたタンパク質がどのように体内で代謝されていくのかに触れておきます。 ざっくり言うと以下の流れです。 消化器→肝臓→腎臓

まず 口から食べたタンパク質は消化管でどんどん小さくなります。タンパク質そのままでは大きすぎで吸収できないので、消化液でどんどん切られ、アミノ酸という最小単位まで分解されて血液内に入ります。 アミノ酸はその後代謝され、我々の血肉となっていきますが、その過程でアンモニアという毒素をだします。この代謝産物であるアンモニアは肝臓にて尿素という無毒な物質に変換されます。 この残りの廃棄物(尿素)は腎臓にて排泄されていきます。 https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-3/

過剰摂取は担当臓器に負担をかける

さて、ここでタンパク質を過剰摂取した場合、当然これらの担当臓器は仕事量が増えてくるので負担が増えます。一時的であれば問題ないのですが、長期間にわたって長時間労働を強いられると、担当臓器はどんどん弱っていき、ついには不可逆的に機能が落ちてしまいます。臓器だって働きすぎは良くない。 さてこのタンパク質担当臓器のうち、最初にガタが来るのは腎臓です。 高タンパク食と腎機能の関係はすでにいくつか研究がされています。 腎機能が通常〜軽度低下している状態で高タンパク質の食事を長期間続けていると、腎臓の機能がどんどん悪くなってしまうという研究です。 High-protein diet is bad for kidney health: unleashing the taboo そして腎機能の低下は動物性のタンパク質でより顕著との結果も出ています。 The Effects of High-Protein Diets on Kidney Health and Longevity また、これはマウスの実験ですが、高タンパク質食が血管に負担をかけるとの報告も出ています。 High-protein diets increase cardiovascular risk by activating macrophage mTOR to suppress mitophagy

高タンパク食は肥満解消に聞くけれども....?

タンパク質を増やすと痩せる とうたったダイエット法が流行しました。これは実際に事実であり、多くの論文でタンパク質量を増やすことで体重減少に繋がったと報告されています。 A high-protein diet for reducing body fat: mechanisms and possible caveats

また、負荷の大きなトレーニングを続けるアスリートにとっても、リカバリーを促す意味でタンパク質は非常に大切な成分です。2018年の報告によれば、筋肉増強と脂肪をカットするためには1日あたり1.2–2.0 g/kgを推奨しています。これは、筋肥大と体脂肪を減らす効果を目的とした量です。 Kerksick, C. M. et al. ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations. J. Int. Soc. Sports Nutr. 15, 38 (2018).

しかし、これらは筋肥大を必要とするアスリートの話であり、長期的な影響は考慮されていません。さらに、脂肪減少においては高タンパク食(1.3g/kg/day)と通常タンパク食(0.8g/kg/day)では有意な差がないとする研究もあります。 Effect of a High-Protein Diet versus Standard-Protein Diet on Weight Loss and Biomarkers of Metabolic Syndrome: A Randomized Clinical Trial タンパク質は不足していた人が摂取すると、確かに体重減少に効果はありますが、取れば取るほど痩せて健康になる魔法物質ではありません。体重はそのほかの炭水化物/脂質とのバランス運動量によっても大きく左右されるからです。  

植物性タンパク質は腎保護作用がある

さてここまでタンパク質の量の話をしてきましたが、タンパク質の摂取源である質も重要です。興味深いことに、動物性タンパク質と比較して植物性タンパク質は量を取っても腎臓の機能を下げず、むしろ改善することが最近の研究で明らかにされました。

量を取りたいというアスリートは、植物性タンパク質の割合を増やすことで、腎臓機能を保護できるかもしれません。

高タンパク食は慎重に

特定の生活習慣と寿命との関連を調査する研究は、大規模かつ長い期間を必要とするものですが、タンパク質を多めに摂ると言う食事法はここ最近に普及したもので、データが蓄積されておらず、健常者が高タンパク色を長期的に食べ続けた影響ははっきりとした答えがわからない状況なのです。 つまり、タンパク質多めの食事と寿命との直接的な関係は”まだわからない” と言うのが現状です。 しかし、一方でタンパク質を過剰摂取したことによる腎機能の低下や悪性腫瘍の増加はすでに報告されており、長期的な悪影響や寿命との関連が今後報告される可能性は十分に考えられます。 トレーニングを始めたばかりの人や、現役アスリートの方はパフォーマンスを維持するためにタンパク質を必要とします。そういった方々はある程度の高タンパク食は続けるべきです。 しかしそうでない時期、例えばオフシーズンや引退後にも高タンパク質食を継続することはおすすめしません。

高齢者に限って言えばタンパク質は意識して増やした方がいい

唯一の例外は65歳以上の高齢者。高齢者は若い方よりも意識してとる必要があります。日本人を対象とした研究でも、タンパク質を沢山とったほうが腎機能が維持されるという研究があります。

理由としてはまず全体の食事量が減ってくるからです。加えて消化吸収の効率が下がってきて、同じ量を食べても吸収されにくくなってくるため、高齢者の場合は意識して1.0-2.0g/kg以上のタンパク質を摂取するようにしましょう。

https://jp.wsj.com/articles/SB10001424052702303565804579432310639070136  
Sekiguchi T, et al. Association between protein intake and changes in renal function among Japanese community-dwelling older people: The SONIC study.Geriatr Gerontol Int. 2022 Feb 10. 

まずは自分が食べている量を確認してみよう

ここまででタンパク質の過剰摂取の問題点を散々煽ってきましたが、現代人のタンパク質摂取量が減少傾向にあることは事実です。 タンパク質は多過ぎても少な過ぎても健康を害します。このブログの読者は主にロードバイクやトライアスロンなどの持久競技をされている方が多いと思いますが、持久競技者にとって過剰なタンパク質摂取は意味を成しません。1日に0.8-1.5g/kg程度で十分なリカバリー効果が期待できます。 まずは自分が1日にどれくらいタンパク質を摂取しているのか計算してみましょう。1日あたり0.6g/kgを下回る場合は少な過ぎますし、2g/kgを大きく超えている場合はとりすぎの可能性があります。

まとめ

・タンパク質0.8-1.5g/kgを摂取できれば十分
・練習が貴方を強くし、プロテインはそれをサポートする
・タンパク質は多く取ればとるほど健康になるような魔法物質ではない
・量を取りたい場合は植物性を混ぜる
・高齢者は若年者より多くの量が必要
・まずは自分がどれくらいタンパク質をとっているのか計算してみよう  

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