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ケトジェニックダイエット とは?

「結果をコミットする」根強い人気のあるケトジェニックダイエット。
『カロリー収支のお話 がっつり編』で糖質代謝エンジンと脂質代謝エンジンについてお話しました。ケトジェニックダイエットはこの2機のエンジンのなか、糖質代謝エンジンを意図的に燃料切れの状態にし、脂質代謝エンジンをフル稼働させるダイエット法です。

普段、体の中では2機のエンジンがハイブリッド車のようにバランスをとりながら稼働している。糖質カットで糖質代謝エンジンに燃料切れを起こさせ、すべてのパワー供給を脂質代謝エンジンが一手に引き受けるため、効率よく脂肪を燃やす効果が期待できる。
脂質代謝エンジンが脂肪を燃やすときは体脂肪(中性脂肪)を直接的に燃料にするのではなく、中性脂肪 → 遊離脂肪酸 → ケトン体に分解して燃料とします。このように、脂質代謝エンジンでパワーを産生するために体内のケトン体濃度を高く保つ状態をケトーシスといいます。
ちなみに、ケトアシドーシスとは供給されたケトン体が利用されずにどんどん蓄積し、血液が酸性に傾いてしまう病態です。糖尿病のような代謝異常がある場合ではエネルギー産生回路自体がうまく回らず、供給されたケトン体が利用されないままどんどん蓄積されることによって発生します。似て非なるものです。(逆に言えば、糖尿病や耐糖能異常、インスリン感受性低下の状態でケトジェニックダイエットを行うには注意が必要です)

では、ケトジェニックダイエットをどう始めるか?
糖質をカットすればすぐにケトーシス状態になるかというと、そうはいきません。
糖質を制限し、まずは筋肉と肝臓に貯蔵されているグリコーゲンが枯渇するのを待たなければなりません。グリコーゲンを使い切り、糖質由来のエネルギー不足に体が反応し、メインエンジンを脂質代謝に切り替えるため肝臓がケトン体の増産を発動し、やっとこれでケトーシスに突入します。
この導入期は人によって数日〜10日前後かかり、スムーズにケトーシスに入る人もいれば、倦怠感や低血糖症状で苦労する人もいます。糖質制限をどの程度にすればいいかは 100g 以下〜 10g 以下といろんな説があるが、30g 以下が妥当ではないかという説は実際に自分が経験して体感的に同意します。
糖質制限が不十分だとなかなかケトーシスに入れず(糖質が供給され続けるためグリコーゲンが枯渇しない)、導入期が間延びしたり、導入に失敗したりします。油脂類を除けば、たいていの食材には多少の糖質が含まれます。糖質を完全にカットするつもりで食べて、ちょうど許容範囲内の糖質量に収まると思います。最初から糖質は 30g 摂ろうとすると、思わぬところで超過してしまいます。このあたりの指標もあくまでも目安なので、苦痛なく導入できる糖質の制限量をご自身で試してみるといいと思います。

また、ケトーシスをスムーズに導入するために、MCT(中鎖脂肪酸:Medium Chain Triglyceride)オイルを使うことが多い。(”必須”と断言する人も少なくない)
MCTオイルを 5〜10ml/回、30〜60ml/日の目安でコーヒーやスープ、味噌汁などに混ぜて摂取するといいでしょう。(加熱すると酸化されて煙を出すため、オリーブオイルのように炒め油として使っちゃダメ!飲み過ぎると胃もたれや下痢を起こします。少量から試しましょう。)
MCTオイルは小腸から吸収されると肝臓に入り、中性脂肪として貯蔵されることなく直接ケトン体に変換されて代謝されます。脂質代謝エンジンを加速させるための添加剤として重宝されます。

導入期をうまく乗り越えられたら、次はケトーシスの維持です。ケトーシスの状態を継続するためには食材選びが非常に大切です。
いわゆる主食と呼ばれるもの(米、そば、うどん、パスタ、パンなど)は避けなければなりません。他に、根菜類、芋類、果物(アボカドは高脂質なのでOK)、トマトやパプリカ・かぼちゃなど実が可食部の野菜、意外かもしれないがハム・ソーセージなどの加工肉(加工の過程で糖質が添加されている)、おでんやかまぼこなどの練り物類(加工肉と同じ理由)、ドレッシングや焼き肉のたれなども避ける対象となります。調味料類も含め、食材の選択肢がかなり少ない。
ブロッコリーや葉もの野菜は糖質が低いので食べても問題はないが、食事はどうしてもタンパク質と脂質が中心となり、ビタミン・ミネラル・食物繊維の摂取量が低下することにも気を配らなければなりません。
ケトジェニック中はビタミンとミネラルをサプリメントで補充するといいと思います。
また、期間中は便秘で悩む人も多い。意識的に水分摂取と、イヌリンや難消化性デキストリンなどの食物繊維サプリメントを併用するといいでしょう。

ケトジェニックダイエットは対照的な脂質制限のローファットダイエットと比べて体重の落ちかたが速い。特に導入期では肝臓と筋肉に貯蔵されてるグリコーゲンとその3倍の水が抜けるので、一気に 2〜3kg ほど体重が落ちます。思わずモチベーションも高まるが、ケトジェニックダイエットをやめれば返さなければならない前借りみたいなものです。その先に落ちるのが正味の減量です。それでも他のダイエット法に比べると減量速度が速いが、長期間続けることで人によっては耐糖能(血糖の上昇に反応してインスリンを分泌し、血糖を下げる機能)が低下するリスクがあります。
筋肉量への影響に関して言えば、グリコーゲンと水が抜けたためにパンプ感が低下し、なんとなく筋肉が萎んだと感じることが多い。実際は、糖質代謝エンジンがほぼアイドリング状態なので、筋肉からの糖新生が少なく、他のダイエット法に比べると筋肉量を温存しやすい。ただ逆に、同じ理由でケトジェニック中に筋トレのパフォーマンスを上げるのは難しいでしょう。
ケトジェニックダイエットを続けるための食材やサプリメントにかかるコストや、長く続けることによる減量の効果の低下(体の”慣れ“のため)、耐糖能異常のリスクを考えると、2〜3ヶ月程度で一旦終了してメンテナンスに戻すか、ローファットダイエットに切り替えた方がいいかと思います。ダイエットを継続する必要があれば、ローファットで停滞したらまたケトジェニックに戻すといいでしょう。

最後に、ケトジェニックダイエットのメリットとデメリットをまとめます。

< メリット >
・減量速度が速い
・空腹感が少ない
・糖新生が少なく筋肉を温存しやすい
< デメリット >
・コストがかかる
・食材の選択肢が少ない
・トレーニングのパフォーマンスが低下しやすい
・耐糖能低下のリスク
・便秘

いかがでしたか?
今後、他のダイエット法についても紹介していきたいと思います。

では、次回もお楽しみに。
“ 一時の減量より一生の健康 “

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