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産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~自然分娩よりリスクだよね?編~

こんにちは。産科麻酔科医まるです。
今回のテーマは’無痛分娩のリスク’ です。
赤ちゃんに関するものは、次の記事で書くので
妊婦さんの副作用や合併症について。

日本で無痛分娩で使われる麻酔方法の多くは、’硬膜外麻酔’です。
その利点
1,痛みの緩和
2,妊婦のストレス軽減
3,帝王切開へ移行時の全身麻酔の回避
4,会陰切開や機械分娩、子宮内操作の痛みを軽減
などが挙げられます。

妊婦のストレス軽減は、実は赤ちゃんにも大きく影響しています。
妊婦さんの呼吸が浅かったり、痛くてアドレナリンが出ていたりするのは、赤ちゃんを苦しくする要因なのです。
妊婦さんを分娩のストレスから解放してあげることは、
赤ちゃんにとっても良い環境を提供することなのです。

一方、欠点副作用についてです。
1,一時的:血圧低下、嘔気嘔吐、痒み、尿閉
2,分娩方法への影響
3,命に関わる:局所麻酔中毒、高位脊麻
4,追加の手術や後遺症の可能性:硬膜外血種、髄膜炎、神経障害、膿瘍

2、硬膜外無痛によって、器械分娩や帝王切開が増えるのでは?
これは、昔から議論されてきました。
器械分娩も帝王切開も、医療行為なので合併症はあります。
できるのであれば避けたい。

実際どうなのか。
まず、帝王切開のリスクは増えない、という結果の研究がほとんどです。
実際、アメリカで無痛分娩が1%未満から60%に増えたタイミングがあったものの、帝王切開の数は変化しませんでした。

次に器械分娩。
実は、器械分娩のリスクは増えないというのが最近の傾向です。
ただ、器械分娩に関しては、提供する無痛分娩の質や産科医の判断の影響が大きいので、まだ議論中ではあります。

3,4起こったら怖い、局所麻酔中毒や高位脊麻、硬膜外血種や髄膜炎、神経障害は、医療行為に伴うリスクです。
多施設共同研究によると、それぞれの発生頻度は
局所麻酔中毒:0.02%
高位麻酔:0.006%
硬膜外血種:0.0004% 
硬膜外膿瘍/髄膜炎:0.0016%
神経障害:0.0028%
です。

頻度としては高くはありませんが、
起こった時に適切に対応し、最小の合併症になるようにすることが大切です。
そのために、医療提供側のレベルを上げることが必要です。

この結語は、結局この記事と同じですね。。。


質の高い無痛分娩を提供できる施設が、増えるように
そして、私自身もその一員になれるように!

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