ドクターまる

産科麻酔科医 ドクターまるです。 今は情報を簡単に手に入れられる時代。 医療者じゃな…

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産科麻酔科医 ドクターまるです。 今は情報を簡単に手に入れられる時代。 医療者じゃない人たちが、選択肢を広げるための情報のひとつに、 そして、医療者が自身の医療を向上する術のひとつになったらいいな… と思っています。

最近の記事

帝王切開の麻酔 2024~嘔気嘔吐の原因と対策①血圧~

こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 さて、前回は帝王切開の麻酔管理中の嘔気嘔吐の概要についてお話しました。 今回から何回かに分けて、帝王切開の麻酔に関連する嘔気嘔吐の原因ごとの対策についてまとめようと思います。 今回は、低血圧について。 なぜ、起こる?低血圧理由は、血管拡張です。 前回も書きましたが、帝王切開の麻酔は、基本的には脊髄幹麻酔。 特に主役は、脊髄くも膜下麻酔(下半身麻酔)です。 脊髄くも膜下麻酔では、交感神経遮断が起きます。 しかも、帝王切開で

    • 帝王切開の麻酔 2024~嘔気嘔吐を防ごう 概要~

      こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 だいぶ時間が空いてしまいました。。。 今回は帝王切開の麻酔管理による ‘嘔気・嘔吐’の予防についての概要をお話しします。 発生頻度帝王切開での発生頻度は 嘔気:約80%  嘔吐:約40% と言われています。 そもそも、麻酔管理中の嘔気嘔吐のリスク因子は ・女性 ・手術(婦人科、腹腔鏡手術など)  ・使用する麻酔薬の種類  ・嘔気既往ありor乗り物酔いしやすい ・非喫煙者 ・麻酔時間 ・若年者 ・術後の麻薬の使用 と言われて

      • 帝王切開の麻酔 2022~ERAC: 血圧管理③Norepinephrine infusion rate~

        こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 さて、①でノルアドよさそう!②で治療的に使うなら…をご紹介し、 帝王切開の血圧管理③では Norepinephrineの持続投与の最適な量についてです。 ノルアドを予定手術で持続で使うなんて… 心臓麻酔や急性汎発性腹膜炎麻酔の時に使う印象でした。 でも、実際はPhenylephrineの持続投与が始まった時も 同様にハードルが高かったそうです。 この研究は、Norepinephrineを0.025、0.05、0.075γで予

        • 帝王切開の麻酔 2022~ERAC: 血圧管理②Norepinephrine intermittent boluses~

          こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 では、帝王切開の麻酔管理、血圧管理②です。 前回、Norepinephrineがよさそう…という研究を紹介しました。 今回は、Norepinephrineの使い方、ボーラス投与の量についてです。 40週の妊婦の帝王切開の麻酔管理で Norepinephrineを治療的に使用した場合の最適な量について調べた研究です。 実際に投与したNorepinephrine量は、Figure2のようになっています。 最初の患者は、収縮期

        帝王切開の麻酔 2024~嘔気嘔吐の原因と対策①血圧~

          帝王切開の麻酔 2022~ERAC: 血圧管理①Norepinephrine? Phenylephrine?~

          こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 前回の記事で、ERACで推奨される帝王切開の麻酔管理の概要について触れました。 その中から、血圧管理について。 昇圧薬の使い方が、治療的使用から予防的使用にシフトし、 今は、昇圧薬の選択、 特にNoepinephrine とPhenylephrineについて話題になっていますね。 まずは、2015年のAnesthesiologyから 予定帝王切開でその両者を比較したランダム比較試験を。 Phenylephrineのα作用に

          帝王切開の麻酔 2022~ERAC: 血圧管理①Norepinephrine? Phenylephrine?~

          帝王切開の麻酔 2022 ~ERAC~

          こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 今回は、医療者向けの投稿です。帝王切開の麻酔にかかわる方。 2021年にSOAPからコンセンサスステートメントが発表されました。 Society for obstetric anesthesia and perinatology: consensus statement and recomendations for enhanced recovery ahter cesarean 過去にERASで出ていた選択的帝王切開の管理は

          帝王切開の麻酔 2022 ~ERAC~

          産科麻酔科医が伝えたい’2022年’無痛分娩~病院選びのポイント編~

          こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 ながながと’伝えたい2022年無痛分娩’シリーズを書きました。 で、結局そういう病院はどこなの?ですよね、知りたい所は。 無痛分娩の死亡事故が発生したことをうけ、 全国の無痛分娩提供施設情報を把握するために厚生労働省と関連して立ち上がった団体JALAがあります。 JALA | 無痛分娩関係学会団体連絡協議会 (jalasite.org) ここで、地域ごとの施設を検索することができます。 上記に掲載されるにはいろいろ条件がある

          産科麻酔科医が伝えたい’2022年’無痛分娩~病院選びのポイント編~

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~無痛でも実際は痛いの?編~

          こんにちは。 産科麻酔科医ドクターまるです。 勉強して得た知識を発信することで、より自分のものに そして、誰かの役に立てたら。。。 と思い始めたものの なかなか記事にするって難しい、と感じている今日この頃。 そんな今日のテーマは ’無痛やったけど痛かった’、’和痛だよね、結局’というチマタの意見について。 無痛分娩で痛みを評価するときに使う指標があります。 NRS=Numerical Rating Scale です。 0:何も痛みがない状態 10:考えうる最悪の痛みが

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~無痛でも実際は痛いの?編~

          産科麻酔科医が伝えたい’2022年’無痛分娩~自然分娩と比べて。赤ちゃんへの影響編~

          こんにちは。産科麻酔科医ドクターまるです。 今回は無痛分娩の赤ちゃんへの影響編です。 無痛分娩をやりたいけど、もし赤ちゃんに何かあったら… 大きな懸念事項ですよね。 前回の記事で 妊婦さんの痛みが緩和されて、ストレスが軽減するのは 赤ちゃんにとってもメリットという話をしました。 ただ、そのスピードがあまりにも早いとマイナスになることがあります。 上記の表は、 無痛分娩を希望した妊婦さんに2種類の麻酔方法を提供して、 赤ちゃんの心拍数や子宮筋の緊張具合の変化をみた研究

          産科麻酔科医が伝えたい’2022年’無痛分娩~自然分娩と比べて。赤ちゃんへの影響編~

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~自然分娩よりリスクだよね?編~

          こんにちは。産科麻酔科医まるです。 今回のテーマは’無痛分娩のリスク’ です。 赤ちゃんに関するものは、次の記事で書くので 妊婦さんの副作用や合併症について。 日本で無痛分娩で使われる麻酔方法の多くは、’硬膜外麻酔’です。 その利点は 1,痛みの緩和 2,妊婦のストレス軽減 3,帝王切開へ移行時の全身麻酔の回避 4,会陰切開や機械分娩、子宮内操作の痛みを軽減 などが挙げられます。 2妊婦のストレス軽減は、実は赤ちゃんにも大きく影響しています。 妊婦さんの呼吸が浅かったり、

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~自然分娩よりリスクだよね?編~

          産科麻酔科医が伝えたい’2022年’無痛分娩~痛みは我慢した方がいい?編~

          こんにちは。産科麻酔科のドクターまるです。 3.ぎりぎりまで痛みは我慢した方がいいのか?編です。 数年前、私も無痛分娩を経験しました。 その時はまだ、産科麻酔の入り口に立ったばかりで、気になることをネットで調べまわっていました。 ’無痛分娩レポ’ なるブログやSNSを見ると、 「ギリギリまで痛みを我慢した方が、うまくいくと言われた」 「いつ無痛を始めてもらえるのか分からないまま進んだ」 というようなことが書いてあり、不安になった記憶があります。 今、少し成長した産科麻酔科

          産科麻酔科医が伝えたい’2022年’無痛分娩~痛みは我慢した方がいい?編~

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~日本の無痛分娩の状況編~

          こんばんは。産科麻酔科医、ドクターまるです。 さて、今回は、2.日本の無痛分娩の状況編 です。 少し古いですが、上のグラフは、 2017年、日本産科婦人科医会が調査した’全分娩に対する無痛分娩の割合の推移’ です。 2016年全てのお産のうち、無痛で出産したのは 6%。 少しずつですが、増えてます。 総合病院(黄色の線)よりも、診療所(緑色の線)での出産の割合が多いですね。 次に、2018年に厚生労働省が出した、諸外国との比較の資料です。 アメリカは、2008年(上記円グ

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~日本の無痛分娩の状況編~

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~陣痛は痛い!編~

          自己紹介の記事を書いてから日が経ちました。 私が日々勉強しているのは、すごく専門的なこと。 論文を読んだり、賢者のセミナーを見たり… そのまま記事にしても、一般の人には響かないよな~と、むにゃむにゃ。 初めのテーマは、私の産科麻酔の入り口でもあった、‘無痛分娩’。 外来で、妊婦さんからよく聞かれる質問にも答えようと思います。 1.知ってほしい!陣痛ってどれだけ痛いか! 2.日本の無痛分娩の現状 3.痛みはギリギリまで我慢した方がいいの? 4.自然分娩より怖いよね? 5.

          産科麻酔科医が伝えたい‘2022年’無痛分娩~陣痛は痛い!編~

          はじめまして、産科麻酔科医のまるです

          はじめまして。 麻酔科になって十数年。 産科麻酔を勉強し始めて、日本の産科麻酔のレベルをあげたい!と思い、 noteを書いてみることにしました。 文章を書くことは大大大の苦手… でも、正直、医療の質には差があると感じている。 今は情報を簡単に手に入れられる時代。 医療者じゃない人たちが、選択肢を広げるための情報のひとつに、 そして、医療者が自身の医療を向上する術のひとつになったらいいな… と思っています。 なので、内容は専門的なことも一般的なことも、かな。 #not

          はじめまして、産科麻酔科医のまるです