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大腸癌を『超早期』発見するカギ、腸内細菌にあり

こんにちは😊
消化器専門医 Dr. Sです。
本日は腸内細菌と大腸癌に関する3分Note✏️

本邦発の大変画期的な研究結果についてご紹介します。

便潜血検査は早期発見には役不足

現在の大腸癌検診は、
便潜血検査を行い、陽性の場合は大腸内視鏡検査を行う流れとなっています。
しかし、便潜血陽性になる大腸癌はある程度進行した状態であり、早期発見に繋がるとは言い難いのが現状です。

『もっと早く見つける方法は無いものか?』
そこである研究者が目を付けたのが、腸内細菌でした。

『早期大腸癌で腸内環境はどう変化する?』という疑問が生んだ研究

大阪大学大学院医学研究科の谷内田真一教授らによる、
最新の遺伝子検査を用いた研究結果についてご紹介致します。
(Yachida S, et al. Metagenomic and metabolomic analysis reveal distinct stage-specific phenotypes of the gut microbiota in colorectal cancer. Nature Medicine 2019)

究極の癌検診は『癌を発症する前に発見し、予防する』ことですが、
その鍵は『早期癌特有の変化を見付け出す』ことにあります。

ある『口腔内』常在菌が早期大腸癌の段階から腸内に増加していた

はじめに、Fusobacterium nucleatum (F. nucleatum)という『口腔内に存在する』常在菌(グラム陰性嫌気性菌)が、
粘膜内癌(最も早期の段階)から進行癌に至るまで、有意に増加していることが示されました。

F. nucleatumとは歯周病の原因菌で、通常腸内から検出されることはほとんどありません。しかし、この菌が何らかの原因で腸内に移行することで大腸癌発生に至る可能性が考えられます。

近年、歯周病と大腸癌の関連性が示されつつありますが、
こちらの研究も大変興味深いので、機会を改めてご紹介致します😊

前癌病変や早期癌のみで増える菌種や代謝産物が見つかった

次に、前癌病変や早期癌に特徴的な腸内細菌や細菌が産生する代謝産物に着目しました。

・多発腺腫(前癌病変)や上皮内癌(超早期癌)においてのみ増加する菌種(Atopobium parvulum、Actinomyces odontolyticus)が存在する

・これらの細菌は大腸癌が進行するに連れて減少する
ことが示されました。

加えて、
デオキシコール酸(胆汁酸の一種)多発腺腫(前癌病変)で増加する
ある種のアミノ酸(分枝鎖アミノ酸やフェニルアラニン)が上皮内癌(超早期癌)で増加する
ことが示されました。

すなわち、
前癌病変や早期癌の段階から、大腸癌の進行度に応じて特徴的な腸内細菌や代謝産物が存在することが示されました。

早期発見のカギは、『早期の段階での変化』を掴むこと

発癌には遺伝的要素が関与しているものもありますが、
同時に後天的な要素が発癌に寄与する可能性も多くあります。

繰り返しますが、
究極の癌検診は『癌を発症する前に発見し、予防する』こと。
今回の研究結果が臨床応用され、
大腸癌の『超早期』発見が可能になる日
早く来ることを祈ります。

本日は以上です。
ご一読頂き有難うございました😊

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