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「世界のエリートがやっている最高の休息法」を試す

科学研究の成果を引用しつつ,マインドフルネスについてストーリー仕立てで解説している.まずはマインドフルネス呼吸とムーブメント瞑想から.「いま」「ここ」に自分の意識を向ける.実行あるのみ.

著者は,イェール大学医学部精神神経科を卒業した医師(アメリカ神経精神医学会認定医)であり,医学博士でもある.研究と臨床の両方の経験があるため,書かれている内容にも説得力がある.

世界のエリートがやっている 最高の休息法 ― 「脳科学×瞑想」で集中力が高まる
久賀谷亮,ダイヤモンド社,2016

重要なのは,体を休めるのと脳を休めるのはまったく別物であると認識することである.体が疲れているなら,何もせずにボーッとしたり寝たりすれば回復するだろうが,脳はそうではない.というのも,脳にはデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が存在し,何もしていなくても(寝ていても),脳は活動し続けているからだ.この活動が脳の消費エネルギーの60~80%を占めるとされる.このため,DMNの活動をうまく抑制することが脳を休ませるためには必要になる.

そして,科学的な脳の癒し方として注目を集めているのが,瞑想やマインドフルネスである.本書では,呼吸法をベースに,脳の休息法として7つが取り上げられている.

  1. マインドフルネス呼吸法
    とにかく脳が疲れているとき
    効果:ストレス低減,雑念の抑制,集中力・記憶力の向上,感情のコントロール,免疫機能の改善

  2. ムーブメント瞑想
    気づくと考えごとをしているとき
    効果:集中力・注意力の改善,フロー状態の実現

  3. ブリージング・スペース
    ストレスで体調がすぐれないとき
    効果:ストレスの解消,ストレス由来の緊張(肩こりなど),その他不調の改善

  4. モンキーマインド解消法
    思考のループから脱したいとき
    効果:思考ループの抑制,集中力の向上,自己嫌悪の回避,寝つきの改善,深い睡眠

  5. RAIN (Recognize, Accept, Investigate, Non-Identification)
    怒りや衝動に流されそうなとき
    効果:怒りの鎮静,欲望のコントロール,衝動の抑制,ダイエット,禁煙

  6. やさしさのメッタ
    他人へのマイナス感情があるとき
    効果:他人へのマイナス感情の抑制,ポジティブな感情の育成

  7. ボディスキャン
    身体に違和感・痛みがあるとき
    効果:ストレス性の痛み,皮膚疾患,ホットフラッシュ,自律神経の調整

それぞれの実行方法を知りたい場合は本書を読もう.

目次
[Lecture 0] 先端脳科学が注目する「脳の休め方」
[Lecture 1] 「疲れない心」を科学的につくるには? ― 脳科学と瞑想のあいだ
・疲れているのは「身体」ではなく「脳」だった!!
・瞑想の「科学的裏づけ」が進んでいる
[Lecture 2] 「疲れやすい人」の脳の習慣 ― 「いま」から目をそらさない
・脳疲労は「過去と未来」から来る─心のストレッチ
・ランチタイムにできる脳の休息法─食事瞑想 …など
[Lecture 3] 「自動操縦」が脳を疲弊させる ― 集中力を高める方法
・雑念は「自動操縦の心」に忍び込んでくる
・マルチタスクが脳の集中力を下げる …など
[Lecture 4] 脳を洗浄する「睡眠」×「瞑想」 ― やさしさのメッタ
・クスリで「脳の疲れ」は癒せない
・眠りながら「洗浄液」で脳の疲労物質を洗い流す …など
[Lecture 5] 扁桃体は抑えつけるな! ― 疲れをため込まない「不安解消法」
・「ブリージング・スペース」で緊張感をほぐす
・脳の疲れを防ぐ食事 …など
[Lecture 6] さよなら、モンキーマインド ― こうして雑念は消える
・月に一度は「怠けること」に専念する
・雑念が疲労を呼ぶ─モンキーマインド解消法 …など
[Lecture 7] 「怒りと疲れ」の意外な関係性 ― 「緊急モード」の脳科学
・「扁桃体ハイジャック」から脳を守れ!!
・脳から来る「衝動」にはRAINで対処 …など
[Lecture 8] レジリエンスの脳科学 ― 瞑想が「折れない心」をつくる
・瞑想が最強のチームをつくる
・苦境でも心の安定を保つエクアニミティ …など
[Lecture 9] 脳から体を治す ― 副交感神経トレーニング
・「競争」が最も脳を疲労させる
・身体をリフレッシュする「ボディスキャン」のやり方 …など
[Lecture 10] 脳には脳の休め方がある ― 人と組織に必要な「やさしさ」
・幸福の48%は遺伝
・リラックスだけでは「脳の休息」にはならない理由 …など

© 2023 Manabu KANO.

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