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孔子と弟子たちを身近に感じられる「論語物語」

下村湖人の「論語物語」は,論語の素晴らしい入門書だ.論語を読んだことがない人,読んだけれども挫折した人に特に勧めたい.

論語は,孔子の死後,孔子とその高弟の言行を弟子達が記録した書物であり,あまりにも有名だ.以下の記事「20歳代が学問する絶好機」でもいくつか引用したが,誰でも一度は口にしたことがある言葉も多い.

世に論語の解説書は多いが,それらは,元の漢文の日本語訳に注釈を加えたものであり,基本的に読むのに苦労させられる.論語を理性で理解させようとしている.ところが,下村湖人の「論語物語」は,その名の通り,論語を物語に仕立て上げたものであり,主人公の孔子とその弟子たちとが生き生きと描かれている.彼らの喜怒哀楽が伝わってくる.孔子や弟子が,どのような状況で,どのような心境で,それぞれの言葉を発したのかがわかる.だから,心情で論語を理解できる.孔子に最も期待されながらも早世した顏淵,血気盛んだが愛された子路,弁舌に優れ政治手腕を発揮した子貢,年少の弟子のなかで群を抜く曾子など,論語に登場する弟子たちを身近に感じることができる.

とにかく,読んで損はしない本だろう.お薦めだ.

下村湖人,「論語物語

参考までに,目次を示しておく.

富める子貢 / 瑚れん / 伯牛疾あり / 志をいう / 子路の舌 / 自らを限る者 / 宰予の昼寝 / 觚、觚ならず / 申[木長]の欲 / 大廟に入りて / 豚を贈られた孔子 / 孝を問う / 楽長と孔子の目 / 犂牛の子 / 異聞を探る / 天の木鐸 / 磬を撃つ孔子 / 竃に媚びよ / 匡の変 / 司馬牛の悩み / 孔子と葉公 / 渡し場 / 陳蔡の野 / 病める孔子と子路 / 一以って貫く / 行蔵の弁 / 永遠に流るるもの / 泰山に立ちて

© 2020 Manabu KANO.

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