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「100の思考実験」を試してみた

思考実験の目的は,本質的でないものを削ぎ落とすことで問題の本質に迫ることにある.日本語訳は「100の思考実験」という当たり障りないタイトルになっているが,原著のタイトルは「The Pig That Wants to Be Eaten: And 99 Other Thought Experiments」である.

何かしらの科学技術を駆使して,豚が人間にその意志を伝えられるようになったとしよう.そして,豚が「私を食べて欲しい」と人間に懇願するとしよう.そのとき,豚肉食を忌避している人達はどうすべきなのか.

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか
ジュリアン・バジーニ,紀伊國屋書店,2012

本書「100の思考実験」には,超有名な問題も含め,100の問題が列挙されている.問題を示して,その解説を行うというスタイルだ.例えば,「トロッコ問題」や「アキレスと亀」は知っている人が多いだろう.

砂粒の問題も含まれている.題材を変えて説明すると以下のようになる.

頭髪がフサフサの人がいる.この人から髪の毛が1本抜けたとしてもフサフサであることに変わりはない.まさかそれでハゲにはならない.では,髪の毛が1本が抜けたとしよう.その後,さらに髪の毛が1本が抜けたとしよう.もちろんフサフサのままだ.髪の毛が1本抜けたくらいでフサフサが揺らぐことはない.ところが,1本ずつ抜けていくと,いずれ波平さんのようになる.こうなると,もはやフサフサではないように思える.フサフサであってフサフサでない.ハゲであってハゲでない.どういうことか.

本書を読んで様々な思考実験をしてみることができるのはよいと思う.しかし,100は要らない.類似した思考実験が沢山あって無駄だ.ほとんど同じ思考実験をまとめれば,もっと実験の数を少なくすることができて,中身の濃い本にすることができたはずだ.

© 2021 Manabu KANO.

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