老子を始祖とする「タオの気功」
カメハメ波が打ちたくて気功の本を読むことにした.当分無理そうだが,気功について大いに理解が進んだのは間違いない.そもそも気功と宗教が密接に関わっていることすら知らなかったが,「タオの気功」のタオが老子の「道」であることくらいはわかる.本書で紹介されている気功は「道家気功」の主流をなす「武当龍門派」の「養生気功」だが,道家気功の始祖が老子とされる.歴史がありすぎる.
本書で紹介されている「養生気功」は,気の流れをコントロールすることで健康になるための方法のひとつとされる.医療や薬に頼るのではなく,自然治癒能力を強化して,人間が本来持っている能力を引き出すことで,心身共に健康になることを目指す.
気血の流れ
我々の生命にとって極めて大事なのが「気」と「血」であり,「気」は新陳代謝を進めるエネルギー,「血」は血液を指し,これらを合わせて「気血」という.日常生活において,食事,睡眠,運動,そして感情などの生活習慣が自然の法則に合致していなければ,気血の流れが乱され,病気になったり,早々に老衰したりする.
気血は「脈」と呼ばれる通路を流れる.その主流を「経脈」,支流を「絡脈」といい,それらを総称して「経絡」という.気功は,この経絡を流れる気血を自分自身でコントロールできるようになることによって,健康になることを目指す.
陽の気と陰の気
人間は生まれたばかりのときには「陽の気」(先天の精・気・神)に満ち溢れているが,青春期から「陰の気」(後天の精・神)が出始める.要するに,欲望や煩悩が増大し始める.生命エネルギーである陽の気が低下し,やがて陰の気が極まると,人間は死を迎える.
この陽から陰への流れを反転させるのが「タオの気功」である.「陰の気」(後天の精・神)を制御し,「陽の気」(先天の精・気・神)を取り戻して,さらに増大させていくことができるようになる.
気功の練習
本書「タオの気功」は,健康に生きることを目指して,とにかく気功を実践してみることを重視している.そのため,理屈は後回しにして,具体的な練習方法が書かれている.
最初は丹田に集中するために,腰掛けの気功法,腹式呼吸法,逆腹式呼吸法が取り上げられている.続いて,導引気功,武当養生気功,全身呼吸導引気功,自然呼吸動員法などが紹介されている.目立つのは呼吸法だ.やはり,全集中の呼吸は大切で,全集中常駐ができるようにならないと話にならないのだろう.
タオの気功の7段階
最終的には,悟りを開いて自然と一体になった仙人を目指す.これがタオの気功だが,そこに至るまでの道は7段階にわけられている.
第一段階
気功の体操を通して心身を整える.体調が良くなる.第二段階
動功と並行して静功を始める.健康になり病気をしなくなる.第三段階
気を自由に操る.治療が可能になる.第四段階
潜在能力が目覚める.第五段階
第三の目が開く.第六段階
静功と精神修行のみを行う.金丹の根を得る.第七段階
悟りを開く.金丹を創って,仙人になる.
気功の種類
気功には色々な分類がある.まず,気には硬い気と軟らかい気がある.それに応じて,気功は大きく2つに分類される.
硬気功(武術気功)
激しい波動を持った「硬い気」を蓄え強める.修練によって,武術における戦闘能力などの技術を高める.軟気功(医療気功)
細かく繊細な波動を持つエネルギーを扱う.このエネルギーを主に健康の維持や長寿の達成,あるいは人間の精神的な進化のために役立てる.
さらに,気功にはいくつかの流派がある.
道家気功
道教と深い関係があり,「心身の修練を通して,健康長寿を達成し,金丹を得て仙人になる」ことを目的とする.最終的に,悟りを開いて自然と一体になった仙人を目指す.武家気功
仏教とともに発展した流派で,「心の修練を通して,叡知を獲得する」ことを目的とする.精神的な側面が重視され,座禅に代表されるように,統一された精神によって,肉体的・即物的な私利私欲を支配する.儒家気功
儒教に関連し,宗教的な側面よりも,文化的・文学的な側面が重視される.心の持ち方と修練を通して,豊かな精神性を育むことを目的とする.
武当龍門派の養生気功
本書で紹介されている「武当龍門派」の気功は,道家気功の主流派であり,その目的は「心身の修練を通して,肉体を越え,虚空の世界に戻り,永遠の命として宇宙に存在するようになること」とされる.
ちなみに,「武当」とは道教の霊山の名で,道家気功の修行者はこの山で修行をしてきたそうだ.また,「龍門」も地名で,老子の6代目の弟子である邸長春が得道(悟りを開いて仙人になること)した場所とされる.
武当龍門派の気功が最終的に目指すのは仙人になることだが,当然,そんな簡単になれるはずがない.
最終段階に到達すれば仙人になれる.そう言えば,亀仙人というのがいたな.カメハメ波を打てるようになることも夢ではないのかもしれない.
© 2021 Manabu KANO.
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