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本の紹介・読書の記録

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2021年12月の記事一覧

オードリー・タンから「デジタルとAIの未来」を学ぶ

公益のために尽くす,公益のためにデジタル技術を駆使する,自分に何ができるかを考えて行動する,というオードリー・タン氏の姿勢がよく伝わってきた.読むと台湾が羨ましくなる本だ. オードリー・タン氏が繰り返し強調しているのは,「デジタル技術は社会の方向性を変えるものでは決してない」ということだ.目指すべき社会を実現するために,人間が人工知能やデジタル技術を活用するのであって,人工知能やデジタル技術によって目指す方向性を変えるわけではなく,ましてや人工知能が人間に社会の方向性を指し

老子を始祖とする「タオの気功」

カメハメ波が打ちたくて気功の本を読むことにした.当分無理そうだが,気功について大いに理解が進んだのは間違いない.そもそも気功と宗教が密接に関わっていることすら知らなかったが,「タオの気功」のタオが老子の「道」であることくらいはわかる.本書で紹介されている気功は「道家気功」の主流をなす「武当龍門派」の「養生気功」だが,道家気功の始祖が老子とされる.歴史がありすぎる. 本書で紹介されている「養生気功」は,気の流れをコントロールすることで健康になるための方法のひとつとされる.医療

アートが持て囃されているので「13歳からのアート思考」を読んでみた

アートとは無縁な生活をしている私ですら,周囲でアートという言葉を聞くことが増えた.それも,美術館に行くとかそういう話ではなくて,ビジネスや工学と関連づけてだ.その関連が気になっていたので,本書「13歳からのアート思考」を読んでみた. 冒頭,アート思考とは「自分の内側にある興味をもとに自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探求をし続けること」だと書かれている.私のような凡人がアートと聞いて思い浮かべるのは,アート作品そのものだが,アーティストにとって,アート作品は結果であ

「アフォーダンス入門」で行為と環境の関係を見つめ直してみる

アフォーダンスとは,心理学者ジェームス・ギブソンの造語で,環境が動物に提供するもの,用意したり備えたりするものとされる. 動物の行為は,アフォーダンスを利用することで可能になり,進化してきた.本書はタイトルの通り,ギブソン心理学の中核を為すアフォーダンスの入門書として書かれている. アフォーダンスの入門書として,本書が特徴的なのは,「種の起源」でお馴染みのチャールズ・ダーウィンの研究を導入部分に持ってきていることだろう.ただし,「種の起源」を紹介しているのではなくて,ダーウ

「影響力の武器」を身に付けよ!

自分の希望を誰かに受け入れてもらえれば嬉しい.自分が勧めるものを多くの人が受け入れてくれるなら,スーパー営業マンになれる.いや,名経営者かもしれない.他人から承諾や同意を引き出すプロは一体どのようなテクニックを駆使しているのか.アリゾナ州立大学心理学部名誉教授で,著名な社会心理学者である著者が,その種明かしをしたのが本書「影響力の武器(INFLUENCE)」である. 極めて騙されやすい(勧誘に負けてしまうわけで,それを騙されると表現するのはどうかと思うが)人間だったと告白す