「アフォーダンス入門」で行為と環境の関係を見つめ直してみる
アフォーダンスとは,心理学者ジェームス・ギブソンの造語で,環境が動物に提供するもの,用意したり備えたりするものとされる. 動物の行為は,アフォーダンスを利用することで可能になり,進化してきた.本書はタイトルの通り,ギブソン心理学の中核を為すアフォーダンスの入門書として書かれている.
アフォーダンスの入門書として,本書が特徴的なのは,「種の起源」でお馴染みのチャールズ・ダーウィンの研究を導入部分に持ってきていることだろう.ただし,「種の起源」を紹介しているのではなくて,ダーウィンが執念深く観察し記録した動物や植物について書いてある.これは本論とは違うが,とても興味深かった.
その一例がミミズの観察だ.ダーウィンのミミズ博士ぶりが凄い.その執念が凄い.地表のあらゆるものが地中に沈んでいくのはミミズのせいだとする自らの主張を確かなものにするため,半生をかけて,ミミズの糞による沈下を計測し続けた.さらにダーウィンの死後にまで,彼の息子が計測を続けている.ミミズの積み上がる糞が高々年間数mmなため,観察に膨大な時間がかかったわけだ.しかし,その執念の観察の甲斐があって,最初に論文を発表したときには反論する研究者もいたが,ダーウィンが正しかったと考えられている.
もう一つの例は珊瑚礁だ.珊瑚礁にはいくつかの種類がある.裾礁(きょしょう),堡礁(ほしょう),環礁(かんしょう)と言うと聞き慣れないかもしれないが,堡礁は英語でバリア・リーフと呼ばれる.そう,オーストラリアのグレート・バリア・リーフはこれだ.
珊瑚礁にいくつかの種類が存在することは知られていたが,そのような形状の違いが生まれるメカニズムは明らかにされていなかった同時,ヴィーグル号航海時の観察に基づいて,そのメカニズムを突き止めたのもダーウィンだった.いやはや凄い研究者だ.
本書「アフォーダンス入門」のまえがきには,次のように書かれている.
これを読んで本書を読み進めてみようと思った.そのような興味を持つ人は本書を読んでみるといいだろう.
ただ,個人的な読後感としては,そのような試みに必ずしも著者が成功していないのではないかという気もする.
© 2021 Manabu KANO.
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