【ふしぎ旅】道楽稲荷
新潟県新潟市に伝わる話である。
湊稲荷は、伝説にあるように新潟の花柳界にあり、遊女などにあつく信仰され、その願いも、俗世間的なものが多い。
有名なのは、ここの願懸け高麗犬という狛犬で、狛犬が乗っている台座を回すことが出来る。
その昔の遊女達はこの狛犬の向きを変えることによって荒天気の祈願をしたとか。
晴天ではなく、荒天の祈願というと、不思議に思われるかもしれないが、伝説にもあるようにお客の大半が船の船頭、悪天候ならば、船は出せないので、遊郭に足止めが出来るというわけだ。
また、境内のお稲荷様の足を麻ひもで結ぶという願掛けもある。
これまた遊女たちが客を繋ぎ留めたいであるとか、町の女性達が旦那の深酒を止めるようにとかの願をかけるらしい。
いずれにしても、、五穀豊穣、商売繁盛などという一般的なものでは無く、刹那的な色恋や禁酒がからむなど、庶民の細やかな願いが感じられる。
そんな願をかける神社ならば、神様の使いであるお稲荷様も、また俗世間にまみれて当然だろう。
というよりは、深酒して境内の木を枕にして眠るなど、よっぽどの酔っ払いであることが分かる。
案外と、狐のせいにして、神主が寝ていたのではとも思えるが、そこまで呑気であると、昔のことながら心配になってくる。
もっとも、そんな話が生まれるほど、新潟の花街と、新潟の港が景気がよい時代であったのだろう。
今では、人通りも少なくなった、神社近くの繁華街を見ながら、時代の移り変わりを感じた。
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