見出し画像

【怪異譚】火の玉を撃った話

 かつて山村で猟師をしていた親戚の体験談。

 今から30年くらい前の話かな(2002年採取となっているので1970年代)。すごく寒い夜でね。前日まで、雪が降っていて、その日の猟場は、もうとにかく真っ白でね。
 そこを三日月の明かりがぼんやりと照らしているたわけだ。

 その日のオレの収穫は、全然ダメでね。おまけに寒いものだから、早いところ切り上げて、小屋に帰って酒でも飲んで休むかと思っていたら、なんかオレから100メートルくらい離れていたところにボンヤリと光があって。
 あの距離から考えると、大きさは多分3mくらいはあったんじゃないかな、その位の大きさの光の玉が見えたんだ。
 最初は月の光が何かに反射しているだろうと思っていたんだけど、それにしては光の色がおかしい。
 月明かりというよりは、蛍のような蛍光色がボンヤリと光っていて。まぁ、そう考えると、いわゆる火の玉か。
 火の玉にしては大きすぎるような気もするが、実際に見たものだからどうすることもできない。

  で、まぁそのころはオレも血気盛んだったし、猟銃も持っていたから、その火の玉に向かって一発ズドンとやったんだ。火の玉も驚いたのか知らないけど、パァっと消えてね。それで、おしまい。
 その後、祟りとか何かあるかなと、しばらくは少し怖かったんだけど、何もなし。正直な話、ちょっと拍子抜けしたんだけど。

 ところがさ、春が来て、雪が解けたら驚いた、驚いた。
 猟場からさ、人の死体が出てきてね。見つかった場所が、ちょうどオレが火の玉を見たあたり。その辺りで、雪の下に埋もれていたんだね。
 まぁ、別に事件とかじゃなくて、単なる行き倒れ。酒を飲んで酔っぱらって、道を間違えて、倒れて凍死したというところじゃないかな。
 何か、オレが火の玉を見た3日前から、家族の人は捜索願を出していたらしいんだけどね。見つからずに一冬越えて、出てきたというわけだ。まぁ、家族の人も死んだのはつらいけど、とりあえず仏が出てきて一安心といったところだったろうね。

 たださ、困ったのは、その倒れていた男がさ、ちょと変質者が入っていたようで。ポケット一杯に女性ものの下着が入っていてさ、おまけに見つかった時は、その内の一枚を自分ではいていたようなんだよな。

 最初は、ちょっと喜んでいた家族もさ、そんな話を聞いたら、もう恥ずかしくてどうしようもなかっただろうな。おまけに小さい村だから噂が広まってね。子供なんて、もう変態の子供と虐められ、妻もあちこちであることないこと言われて、もう耐えきれずに村をいつの間にか、飛び出していなくなっていたな。

お読みいただきありがとうございます。 よろしければ、感想などいただけるとありがたいです。