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【怪異譚】鏡の迷路

 幼い頃、お盆の季節に、父方の実家に墓参りに行き、その時に親戚たちと一緒に地元の遊園地に行った。

 非常にローカルな遊園地で、乗り物も10機種ほどしかなく、ジェットコースターと言っても、トロッコが少しアップダウンするといった感じのささやかなものだった。

 その中でも、ミラーメイズという鏡の迷路があった。
 私は、そこに親戚たちと一緒に入った。
 
 そんなに規模は大きくなかったのだが、鏡の壁で、方向感覚がなくなり、親戚たちとはぐれ道に迷ってしまった。

 迷っている最中に、不思議なゾーンがあった。
 ブティックにあるような眼鼻もない黒いだけのマネキン像が道に沿って並べられている。
 合わせ鏡に映ったマネキンは無限にあるように見え、非常に気味が悪かった。
 出口を探していた私は、早急にその場を立ち去ろうとした。
 突然、マネキンの一体が、私の手をつかんだ、かのように思えた。
 それで非常に驚き、怖くなって、その場を走って立ち去ろうとした。

 ところが、床が妙にふわふわしていて歩きづらく、マネキンからから逃げようとしても、なかなか逃げられない。
 よくは覚えていないが、半泣きになりながら出口にたどり着き、先に出口を出ていた親戚たちの顔を見て、号泣したことだけは覚えている。

 それから10年ほど後、当時のアルバムなどを見ながら、両親とその頃のことを話していた時、その遊園地は規模が小さく、ミラーメイズはもとより、お化け屋敷などの建物系の遊具が無かったことを知った。

 その遊園地は、今では、その残骸すら残ってなく、住宅地になっているという。

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