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現実の手ごたえ

 せめて、妄想くらいは良いだろうと、男はかつて見た海や森を思い浮かべたが、それが現実となることを期待することは、罪であることは分かっていた。

 世界が光と闇に包まれてから、残ったものは、この荒野だけということは、何十もの昼と夜を重ねて、現実の感覚として、男の身体に刻まれていた。

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