誰かの心を軽くしたいなら、まず聞こう
こんにちは。最近、傾聴について思うことがあります。
20年以上内科医として活動する中で、診察で大切なことは患者さんの話を聞くことだと思ってきました。
いくら血液を調べても、胸の音を聞いても、心の内を語ってもらわなくては適切な治療はできないのです。患者が求めているのは何なのか。医師が勝手にゴールを決めるのは昔の話。
最近ふと気づいたのは、お話ししてもらうときに医療者が一人じゃないことが多いということです。後ろに医療従事者がいたり、大学病院だと研修医や学生がいたりすることも。最近は個室対応の診察室が多くなりましたが、それでも後ろのドアが開けっぱなしで誰が聞いてるか分からない状況がよくあります。密室によるデメリットやリスクもありますが、語りにくい環境であることは否めないなあと思います。
ここで改めて傾聴について考えてみたいと思います。
学校でも、職場でも、誰かの意見を聞く時、話を聞くメンバーを決め、日時を合わせて、会議室などで話し合いとして準備されることがよくあります。
意見を聞かれるその人は、数人を前にして話をしなくてはなりません。聞こうとする人は優しい気持ちでも、本人は本音を語るにはハードルが高い状況です。
10月の自殺者が増加しているニュースをみて、メンタル不調の社員さんが心配になった方も多いのではないでしょうか?
うつで孤独な感覚に陥っている時、助けになるのは「本音を吐き出す場所」です。誰かに語り、涙をぽろっと流せたら、抱えていた心の荷物が少しだけ軽くなります。
最近、メンタル不調の方をなんとかしたいという上司の方を対象に「傾聴」のワークショップを何度か行う機会がありました。
元気のない人にどうしてあげたらいいのか分からないので研修を受けたいという方々が申し込まれました。
「傾聴」のテーマを選んだのは、産業医の訪問先で以下の様な質問をよく受けていたからです。
「どうアドバイスしたらいいのでしょうか?」
「どんなことを言ったらいいのでしょうか?」
「適切な対処をするために、どんなことを学ぶべきでしょうか?」
大切な仲間の心を軽くしてあげたいのなら、
アドバイスしないで、まず「ただ聞いてあげる」ことです。
口を挟まず、自分の意見を押し付けようとせず、相手が間違っていることを正そうとせず、心に溜まっているものを出していく作業をお手伝いするのがとてもとても大切なことなのです。
「アドバイスしてあげたほうが親切なんじゃない?」と思うかもしれません。
実はそうではないんです。
心がとても疲れている時に、自分の間違いを指摘されたり、新しいやり方にチャレンジする様に次々と提案されると、今の自分が否定された様な気持ちになりますし、余計に疲れます。
そして、こう思います。
「ただ、聞いて欲しかっただけなのに・・・」
「あんな風に言われるなんて、相談しなきゃよかった・・・」
「次から、あの人に話すのはやめておこう」
すると、その人の心の荷物の降ろす場所が一つ減ったことになります。
誰にも打ち明けられない孤独感がさらに強まってしまうのです。
アドバイスして良いのは、意見を求められた時だけ。頼んでもいないのに正論を並べられても、相手に受け入れる心の準備がなければ「押しつけがましい人」になってしまう可能性があります。
大切な仲間が落ち込んでいたら、1対1で話す時間を作り、聞くことに徹底してみましょう。
そして、最後に行ってみましょう。
「話してくれて、ありがとう。」
最後までお読み下さいまして、ありがとうございました。
傾聴スキルなどのコミュニケーションは、こちらの講座の中で学べます。