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お題企画「私の学びなおし」に乗っかってみる、行動経済学(損失回避バイアス)

お時間があればこちらのリンクを見ていただきたいと思います。

https://note.com/info/n/nd49d6f2f91b0

お時間のない人のために要約しますと、noteの企画で、國學院大學がその企画の後援をするので、どしどし応募してね、ということです。
たまたまnoteを開いたら目についたので、せっかくなので、その企画に乗ってみることにしました。


私の学び直しは「経済学」です

数年前から、大学に在籍しています。といっても社会人であり、通学する時間は取れないため、通信課程で経済学を学んでいます。もともとアカウンティングに興味があり、入学したのですが、広く経済学について学んでいくうちに今の興味の中心は数学になっています(ずいぶん前に大学生だったときに、経済学部の友人がそれほど数学をやっていた様子は無かったのですが、いまの経済学は数学を知らずして通れる道ではないのですね)。
確率・統計と微積をやりなおしているうちに数学そのものが面白くなってきてしまい、経済学と並行して、高校数学をしっかり学びなおしています。

経済とは何ですか

経済とは何ですか?という問い、あるいは経済学は何を研究する学問ですか?という問いに、(異論や違う見方、または表現はあると思いますが)ざっくりとした回答として「資源の分配」と言えると思います。これは実際に講義で先生がおっしゃったことですし、たしかにその通りであると思います。
ほぼ無限に見える資源もあれば、とても限られた資源もありますし、仲良く分配できるときもあれば奪い合いになることもあります。どのような資源をどのように分配するかというのが経済の本質だと思います。人間が生きていく上で、資源を分配しないものが、経済(学)の範囲ではないと言えますが、息をするのだって空気という資源を自分に分配させるという行為ですから、ヒトの一生は常に経済(学)とともにあるわけですね。
そしてその経済(学)はおおきな「マクロ」的な視点で見るべきものと、ちいさな「ミクロ」的な視点のものと、二つに分けられます。後者のミクロ経済(学)は個人について考えるもので、その中の研究分野に行動経済学というものがあり、今日はその中の「損失回避バイアス」を例に、経済学が家づくりに役立つという話をします。

損失回避バイアスとは

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提唱した行動経済学の中で示された「人は得をすることと損をすることが同じくらいの度合いであれば、損をするほうを嫌う」という性質のことです。
カーネマンとトベルスキーはこの功績でノーベル経済学賞を受賞しました。受賞は二人だったのですが、一般向け啓蒙書などのヒットがあるカーネマンのほうが知名度があるでしょうか。
そのノーベル賞をもらったほどの経済学の理論のひとつである、損失回避について、例を出して説明します。

(コイントスによる1万円の授受の例)
最初の問題です。あなたはどちらを選びますか?
a)コイントスをして表が出たら2万円貰えるが裏が出たらなにも貰えない
b)無条件に1万円貰える

次の問題です。どちらでしょうか?
c)コイントスをして表が出たら2万円払うが裏が出たら何も払わなくていい
d)無条件に1万円払う

最後の問題です。さあ、どちら?
あなたは今日会う友人に借りていた2万円を返す予定です。
e)コイントスをして表が出たら2万円貰えるが裏が出たらなにも貰えない
f)無条件に1万円貰える

カーネマンらの研究によれば、多くの人はb, c, eを選ぶのだそうです。二分の一で2万円かゼロかというのは、平均して1万円ですから、最初の問題と二番目の問題では合理的に考えればどちらでも良いということになります。ランダムに選ばれるとしたら答えがかたよることは無さそうです。
最後の問題も、前提条件が付いていますが、この前提条件と選択肢には何ら因果関係がありませんので、やはりどちらを選んでもということになります。
しかし、多くの人はこう考えるのだそうです。
「コイントスでお金が貰える?2分の1で2万円もらえるよりもいま確実に1万円もらうほうが良さそうだぞ。だがしかし支払うほうがどうだ、確実に1万円を払うのはゴメンだな、支払がゼロになるかもしれないコイントスに賭けるほうがいいだろう。そうだ今日はアイツに2万円返さなきゃいけなかったんだっけな、1万円を貰ってもあと1万円は自分で足さないといけないじゃないか、それならコイントスで返済の全額である2万円を狙ったほうがいいってわけだ」
どこかがおかしいのですが、どこがおかしいとはなかなか指摘しにくいですね。なぜなら私たち経済学などまったく知らない人はもちろん、経済学をしっかり学んだ人でも同じ傾向にあるからです。ですから多くの人が、どこかおかしい?いや、どこもおかしくないんじゃないか……と思うわけで、これは次のように一般化できます。
「利得と損失が同じ程度である場合、損失のほうがより強く感情に訴えかける」
一般化できたということでノーベル賞をもらうことができたというわけですね。

家を建てるのはいかに「損失回避」を回避するかの戦い

家を建てるときに、しばしばこの「損失回避」を必要以上に重視してしまうことがあります(もちろん、それ以外のたくさんの行動経済学からの教えはがあるのですが)。
例えば窓。ここにも損失回避バイアスの罠が潜んでいます。

南向きのリビングに大きな掃き出し窓をつけます。そこから、庭に設置したウッドデッキに出ることができます。採光は申し分ありませんし、開け放てば換気どころか家中の空気を入替えできそうです。景色を楽しむのも大きな窓の魅力ですね。

と、書いてきてどこに罠が?と思いますが、これって損失回避の視点で考えると、本当にそのメリットは、本当に大きな掃き出し窓のメリットなんでしょうか。

南向きのリビングに腰高の窓をつけます。庭に出るには、一度玄関から出る必要がありますが、毎日出るわけでもないのでそう不便ではなさそうです。窓の高さと日が射しこむ向きを考えて採光は十分です。窓は左右に縦すべりと間にフィクスのコンビ窓なので、空気を入れたい時には窓を開けられます。腰高の窓で、まるで絵を壁にかけたような景色を見ることができます。また、部屋のデザインや家具の配置に自由度があり、断熱と防音の性能が高く、防犯にも効果があり、掃除がしやすいというのもメリットです。

さあ、どうでしょう。おおきなデメリットである「庭に直接出ることができなくなる」という損失を回避するために、大きな掃き出し窓をリビングにつけてしまっていませんでしょうか。
「リビング 掃き出し窓 後悔」などでググると、とてもたくさんの声がヒットします。その窓を掃き出し窓にするメリット(利得)と、その窓を掃き出し窓にしないデメリット(損失)を天秤にかけたときに、損失を大きく見積もってしまったのではないでしょうか。

何かを勉強すればどこかに役に立つ

行動経済学ではたくさんの理論が発表されています。行動経済学と近い研究分野である社会心理学でも同じように研究が盛んです(もともとは社会心理学のほうが先行しています)。それら理論たち、そこで提唱されるバイアスたちを知り、理解すれば、自分が家を建てるという重要な決断をするときにどのように行動してしまいがちか、と批判的な目で自分自身の行動を観ることができます(クリティカルシンキング)。
土地や建物について勉強するのも、もちろん大事ですが、それ以外にも一見関係無さそうに思えるようなことも、勉強すれば役に立つということですね。まさかの窓の選択に行動経済学ですから。

#私の学び直し



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