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10/23 長野県白馬村 のマフィン

10月下旬、長野県白馬村の「えいようフーズ」へ。

ちょうど前日に山に雪が積もり、雪景色が見えた

ここは写真家の栗田萌瑛さんが運営する、オーガニックの無人野菜直売所。白馬村に暮らす彼女が立ち上げた販売所です。29歳の栗田さんは、自分より年下とは思えない、なんとも強い芯のある方。もともと白馬でオーガニックマーケットの運営に関わっていて、地元の農業をもっと応援していきたいと思い、雲仙のタネトさんでのインターンなどさまざまな経験を経て、地元で有機栽培を行う農家さんの野菜を販売できるスペースを作ろうと、2年越しでこの場所を見つけて開いたそう。

白馬村近辺にも有機農業で野菜を作る方はいるけれど、村の中にそれが買える場所がなかったのだとか。出荷先がなくても、野菜の成長は待ったなしで、どんどん収穫の時期を迎えてしまう農家さんの現状。それを適正な価格で販売できる場所として作られたのが「えいようフーズ」。

年中無休なので、今は付近の農家さんが採れた野菜を納品に来て、栗田さんが写真を撮りインスタグラムにアップ。それを見たお客さんが買いに来て、お金を箱に入れて野菜を持ち帰る、というシステムで成り立っているそう。

初日は長野駅まで栗田さんが迎えに来てくれて、白馬村への道中、愛犬の玄米(げんまい。茶色くて大きくてかっこいい犬!)と2人と1匹で野菜の仕入れに。

えいようフーズに一番多くの野菜をおろしているという、芝崎さんが営む「サイバエン」へ。収穫間際の野菜を色々と見せてもらう。

ズッキーニの花は、シャキシャキした食感。

紫とうがらしはこんなに迫力のある見た目なのに、食べると甘い。ピーマンのよう。

驚いたのはフェンネルの花。かわいい黄色の花びらは、食べるとプチッと弾けて、口一体に広がる爽やかな香り。少しとうもろこしのような華やかさもある。いつも使っているフェンネルシードの生の状態ってこんななのか、と目から鱗だった。おいしい。これは生のままマフィンに挿したいなと思い、カスタードと合わせられないだろうか…と想像が膨らみ始める。

その後、チーズ作りをめざして羊牧場をはじめたレストラン「ウアレ」さんの山奥にある放牧場を訪ね、いつか羊のバターとチーズをマフィンにさせてもらおうと思いながら滞在するペンション「ボスコ」さんへ。近くのスーパーで長野の地粉や豆乳など、使う材料を買い出して、今夜はここでボスコのオーナーさんと、明日のマフィン販売と一緒にコーヒーを出してくれる、栗田さんの幼馴染で自然派喫茶Solを営むソフィー&よしさん夫妻と、栗田さんと夕食。

芝崎さんの野菜を調理して味見したり、新米と鹿肉の炒め物をいただいたり、ウアレさんのチーズを食べたり、お腹いっぱいになる。

翌朝はSolの厨房でマフィンを焼かせてもらう予定で、仕入れた野菜の下拵えを今日のうちにしなければ…と思っていたら、なんとボスコのオーナーさんのご厚意で、ボスコのキッチンでマフィンを作らせてもらえることに。
早朝から焼く予定だったので、荷物の移動なく焼けるのは本当にありがたく、そして厨房にあるガスオーブンのなんとも味のある雰囲気も最高で……あ
りがたく使わせて頂くことに。

仕入れた野菜を使って焼いたマフィンは全部で5種。

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・フェンネルの花 レモンとフェンネルのカスタード 黒糖 ホワイトペッパー

あのフェンネルの花を食べて、生のままマフィンに挿したい!と思い考えたもの。
ふるふるのカスタードをのせた焼きたてのマフィンに、新鮮な香りの花をプスッと挿す。そのイメージが先行してできたマフィン。

フェンネルの花はちょっと鼻の高い位置にぷんと香り、それが黒糖の高さと合うような気がした。なので生地の砂糖を黒糖に変えた。
カスタードは軽やかにしたかったので、砂糖はごく控えめに、レモン果汁とホワイトペッパー、刻んだフェンネルの葉を入れた。

・ズッキーニの花とベーコンのマヨネーズ炒め ほうれん草 クリームチーズ

畑で食べたズッキーニの花、色や食感を残したままマフィンにしたかったので、軽く炒めてマフィンの上部にのっけることに。芝崎さんのほうれん草はものすごく力強く、茎なんて茹でてもなかなか切れないほどに強情。そして味がこく、おいしい。作り手さんのお人柄と野菜ってつながっているのだろうなと思い、おもしろい。力強さそのままを生地に練り込んだ。中にクリームチーズも入れて、食べごたえ満点のマフィン。

・宿難(すくな)かぼちゃ しょうゆ豆 あずき 酒粕

宿難かぼちゃは岐阜県の在来種。これも芝崎さんが育てているもの。大きくて瓜のよう。ボスコでオーナーさんが火を通してくれた。けっこう水っぽさがあり、甘みは控えめ。仕込み水がわりに、潰して生地に混ぜ込むことにする。
しょうゆ豆は白馬のスーパーで買い出しをしている時に見つけたもの。黒豆を発酵させたもので、ごはんのお供。あんこに混ぜたら甘しょっぱくて美味しいだろうなと思い、それをマフィンの中に入れることに。
地方のスーパーに行くとつい酒粕も気になってみてしまう。その地域の酒蔵さんが出しているものを見つけると嬉しい。そんなわけで買った酒粕も、生地に混ぜ込む。ぷあんと酒粕が香り、かぼちゃの甘みとしょうゆ豆の塩気が聞いた、煮物みたいなマフィン。


・菊芋 ブルーチーズ 松本一本ねぎ

鎌倉ではあまり見かけない菊芋。しょうがのような見た目で、シャキッとした食感。味も芋としょうがの間のような、爽やかな風味がする。面白い野菜。薄切りにして、オリーブオイルと塩で蒸し炒めにした。ウアレのゆかさんから、熟成したフルムダンベール(ブルーチーズ)をお裾分けしていただいていたので、これを合わせることに。同じくえいようフーズに野菜をおろしている宇治山いくさんの、力強い「松本一本ねぎ」の青いところをたっぷり刻んでスコーンに練り込んだ。ねぎはスコーンに入れると、驚くほど洋風に変化すると個人的に思っている。化学変化が面白くて、マフィンに入れるようになってからねぎの固定観念が変わった。

・トロなす 紫とうがらし味噌

サイバエンさんのトロなす(火を通すとトロッとする、緑色のなす)は、ボスコのオーナーさんがくったりするまでグリルしてくださった。それを刻んでスコーン生地の仕込み水がわりに混ぜ込む。紫とうがらしは粗く刻んで、栗田さんのお手製味噌と合わせて甘塩っぱい唐辛子味噌を作った。なすの旨みたっぷりの生地に、この唐辛子みそを折り込んで焼く。仕上げに、赤いとうがらしを飾って。このとうがらしは、紫とうがらしの熟成が進んだものなので、見た目に反してじつはとても甘い。

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野菜が魅力的で、どれも使いたくなってしまって、本当はもう少し焼く種類を抑えるつもりだったけれど欲張って5種焼いた。数も、想定していた2倍ほど。

途中粉やBPやいろんなものが足りなくなり(私が想定していた2倍焼いたからである…)、栗田さんに買い出しに走ってもらったり、ソフィーにBPを貸してもらったり、そして何よりボスコのお二人には作るのを色々と手伝ってもいただいた。初めてのチームプレーなマフィン作り。ずっと一人で作ってきたけど、こうやってみんなで作るのも楽しいのだなと知った。

みんなで焼きたてを試食して、休む間もなく次を焼き、窯出しや洗い物を手伝って頂いたり。そんな時間がとても新鮮で忘れられない体験になった。

朝6時から10時45分まで、4時間半かけて焼き、焼きたてを木箱に詰めて大急ぎでえいようフーズへ。平日だし静かだろうと思っていたら、なんと入り口にお客さんが待っていてくださった。

インスタグラムを見て、長野や富山から2,3時間かけて車できて下さったとのこと。そんなことがあるのかと、信じられない気持ちのままふわふわと店に立ち、そして売り切れた。

来て下さった方、本当にありがとうございました。ここに行かなければ出会えなかった方々にお会いできたこと、とても嬉しかったです。

そして栗田さん、おいしい野菜を作ってくださった芝崎さん、宇治山さん、くらりファームさん(お会いできてよかった)、ウアレさん、
Solのお二人、ボスコのお二人、いろんな方に感謝してもしきれず、
また必ずこようと思った。(今度はちゃんと粉とBPを多めに持って)

マフィンがあるといろんな場所に行く理由ができて、それはとても幸せなことだと思う。

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