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95 - 編集会議!

シャアは、レコード屋に行くと私が早くしろと急かすから嘘をついたと言っていた。でも、それほどレコードが重要ならば、その重要さを私が納得いくまで私に説明し、その、レコードを買いに行く事の重要さを私に理解させるべきだ。何故シャアはそれをせずに、嘘をついたのか。つまりシャアは、私の事を理解力に欠けた人間だと思っているのだろうか。理解力に欠けた人間? それはつまり、バカじゃないか! 目を見開くと、シャンプーが目にしみた。
(『オートフィクション』)

95(*94はこちら

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): 今回のラストは、

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): うん。

C: さあ、「編集会議」だ。

メモ:編集会議

JC: ほう。

C: ニュースが毎週大変だったら隔週でいいけど? ”Step Weekly”にしようかなと。

JC: あぁ。ほおん……いや、全然いいけどね。確かに毎回ニュースというのは……一応動いてるのは動いてるけど、ニュースを拾っていくのは結構大変な時はある。

C: 隔週でいいよ。

JC: そうね……ニュースに興味がない時あるよね。はははは!

C: 何か月かやってみて、さあどうしましょうと。ちょっと緩めてもいいと思う。生活次第。

JC: 録音なしでもいいけどね。たまにはね。ご飯持って来てくれる……。

C: ははは! それすると毎回帰り際に「今日も各所に録るべき所あったな……」って言うじゃん。

JC: はははは。お約束。会話ってそういうもん。

C: あれ駄目だよ。ズッコケるから。

JC: 録ってないからこそ伸びやか。

C: わざわざ指摘されると悔しい。

JC: なるの?

C: なるよ、ジャーナリスト魂あるから。「残してやろう!」って。

JC: あるのか! はははは! それは……いいんだよ、録らないでも。

C: いいんだよ。いいんだけど、毎回帰り際にわざわざ言うからさ。

JC: 会話の真実だよ。オチみたいなもん。ミュージシャンのノリなんだよ。「録っときゃよかったね」って、本番より絶対リハの方が良いに決まってるんだから。そうやって帰るのが決まりなの。

C: ミュージシャンのノリがわかんない。

JC: ははははは!

C: 「なんでそうなるの?」って。ライブのイベント企画ね、やったことある。

JC: うん。不思議でしょう。

C: ファンじゃなくなる。

JC: 最悪なんだよ。そうね。わかる。

C: 作品は別で、人間とは知り合わない方がいいな、というのが学びというくらいのね。

JC: ははははは!

C: その……もっとそういうのやってた仲間とかがどういう扱いを受けてるかというのも見てね。彼女や彼らの頑張りによって、特に地方のシーンなんて持ってるでしょう? その人達の財布によって。

JC: 面白い事言うね。そうなんだろうな。そういうミュージシャン駄目だけどね。

C: はははは。

JC: それはちょっと駄目だけど……シーン云々とか、ライブハウス、オーガナイザーとの関係という事じゃなくてね。自分の言ってるのは「ミュージシャン間」でしか起こり得ない関係というか。どこまでが本気でどっからが冗談か分からない領域。ふふふ。

C: それはわかるんだよ。まあ、まだわからないんだけど。

JC: はははは!

C: だから……自身の「表現」として人を使っちゃ駄目なんだよね。イベンターがショーを表現の場にしちゃ駄目。演者が何するか、それ素材として扱っちゃ失礼。

JC: うん。

C: そういう反省はめっちゃある。その時は、「なんでそこちゃんとやんないの?」って。

JC: あぁん。

C: いきなり楽屋ネタみたいなセッション。ここまで完璧なのに、いきなり素人みたいなゲストが出て来る、とか。

JC: はははは!

C: 予定調和を崩して、続く旅にアクセントを付けたいのはわかるんだけど……。年間100回とか演奏するなら、各地でそれをする必要があるのも気持ちはわかるんだけど。別に企画してなくて客席で見てるだけでも、「外れの日か……」ってなってた。

JC: 自分の音楽に対する向き合い方で言うと、それは「無い」ことだよね。自分は企画者の期待以上にタイトにその場所をやる事の方が楽しいと思うタイプだから。そういうミュージシャンもいる。

C: きっといるんだろうね。

JC: じゃないと駄目。本当はね。だから自分みたいなのはSONYみたいなのに気に入られるんだよ。

C: ほん。

JC: それ以上のショーマンを的確にやるから。ただ期待に応える。ああいうビッグネームからすれば「最高」だから、そりゃあいいタレントだと思ったんだろうね。自分からすれば彼等の簡単すぎるビジョンがファックだったけどね。

C: そう。

JC: その……ミュージシャンのセッションの自由さっていうのは、本当のハイレベルの人達がやる事であって。自分みたいな考え方で、かつ「成功してる」人達がやる事だよ。

C: ふん。

JC: それならやってもはみ出ないわ。言ってみれば「神々の集い」だよ。そこまでの音楽的なビジョンが取れてるなら成立するけど、じゃなかったらイベンター泣かせだよね。プロモーターからしても最悪。それが音楽の表現だと思ってる事自体が変だなぁと思う。凄い厳しくなるけどね、いきなり。

C: うん。

JC: ミュージシャン……技術職ですから。すぐそっちに逃げるのは駄目だと思うよ。

C: 別のヒエラルキーを作ろうとしてるだけだと思った。各地の「憧れ」を源泉にね。「小権力じゃんこいつ」って思うともう音楽も入んないよ。

JC: うんうん。おふざけ入って、MC長くなってって。例えばRCサクセションのライブで「ゲストだ!」って誰か呼んで。そんなの楽屋の時なんてめちゃくちゃピリピリしてるに決まってるじゃん。それを表向きのステージだけ見て「いいよねぇ」って真似してやってると……本当にロクな事ないよ。音って瞬間瞬間しかない。適当にバンって出せるもんじゃない。実際は緻密なものだから。パンクロックだってそうだもん。

C: ふん。

JC: 「メジャーのそんなノリでしょう?」って。「俺らだってやっていい」って……違うから! まあ企画もやってみるとね……確かにアーティストをパーツで選んでたなという反省は誰だってするからね。

C: 奔放にやるタイプにはなれなかった。

JC: 企画の本当の仕事というのは、多少ショーの中で番狂わせがあってもドンと構えるくらいの器量があって、どっちかというと接待・応対とかに集中出来る人が向いてる。車の手配、宿の手配とか、そういう事を喜んで出来る人。

C: ショーの時間に繊細すぎると……。

JC: そういう人は向いてない。うん。

C: この辺で録音止めて、もう少し話して帰りますか。まあニュースはひとまず隔週がいい気がするな。ゆくゆくは月イチに……。

JC: ははは。忙しくはないんだけどね。一曲聴こう。この曲聴いて欲しいんだよ。

つづく


2022年12月3日 doubles studioにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)
#doubles_studio_talk でトーク部分を一覧表示できます。

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