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75 - 音楽の話④

なぜ流行歌には林檎が好まれるのか。そんなこと、私に分るはずがない。(『フローラ逍遥』)

75(*74はこちら

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): さっき来る前にタワレコの前を通ったらね。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): あぁ。

C: これ。

JC: 強烈だね! ははははは。どういうことこれ。

C: めくるとホワイトハット被ってる。はははは。

JC: そうなんだね。へえ……。

C: すごい足場ずらし。アルバムタイトルは『ルネサンス』。

JC: 図々しい! ははは。もう始めてるね。寝返った……。

C: 白帽子でクリスタルの馬にまたがる。で、ルネッサンス!

JC: はぁ、凄い。アルバム聴いてみないとね。寝返り感がどれくらいか。犯罪的寝返り感……。白帽子も意味深長になって来たね。

C: 日本はこれ。

JC: 日本?

C: たぶん。この美意識は。

JC: アニメズム。アニミズム。うぅん。

C: サイバー一直線。

JC: アバター化だよね。

C: めくるとこれ。

JC: あれれぇ。横尾忠則かっていう。

C: 如実に反映してる。表紙裏表紙だけの浅読みでもね。

JC: ビヨンセ……完全に向こうの人だからね。それでも間に合うってことだよね。

C: 「人間だから間違うんだ」って。間違ったんだってみんな言い出す。これからね。

JC: あぁ……そういうことね。

C: 人類総懺悔がこれから

JC: 始まってるわけね。クリスタルの馬の時点で「えっ?」てなるけどね。脱炭素って意味だけではなくなって来るからね、これからクリスタルは。

C: 大きい流れというのがこうやってあるみたい。

JC: うぅん……。

C: ちょっと面白かった。そうそう、ワイヤレスイヤホンってどう思う? 来る道で何人かすれ違ったな。

JC: 音が悪いよね。はははは。

C: わたしはナシかな。使ったことない。銃みたいな形の体温計と一緒で頭に近すぎる。影響があってもなくても……それは分からないけど、気味が悪くてわざわざ避けてる。

JC: あぁ。自分の場合はシンプルだよね。音が悪い、なくしそう、充電が面倒。避ける理由は充分だよ。

C: そうね。

JC: どうやったってあれは音質補正が必要な仕組みだからね。システム上ね。ちゃんとした音にはならない、買ったイヤホンの音にしかならない。まぁ……魅力はあるんだろうなと思うけど。ただ、付けてる人見ると馬鹿だなと思う。はははは!

C: これ要らないなって思う自分に対して古い人間なのかなと思う時もあるけどね。

JC: そう? 全然そこまで思わない。ちゃんと有線で聴いてる人は音楽好きなんだろうなと思っちゃう。それくらい決定的な「音」の話。まぁ……まずイヤホンで聴くこと自体ね、自分はめったにしない。

C: 余計にワイアレスが滑稽に見えちゃうね。

JC: あれは聴く環境じゃないなと思うね。

C: 坂本龍一さんが昔言ってたと思うんだけど、「音楽聴きながら何か出来ない」って。

JC: あぁ。分かる気がする。

C: その時の彼の自己申告ではね。音楽を聴く時は音楽を聴く時。だからiPodとかと散歩が結び付かないみたいなことを……ちょっと元が何の雑誌かは忘れちゃったけど、その記事は印象的で覚えてる。分かる話でもあるし、逆に音楽聴きながらの散歩もいいなとも思うし。

JC: そうそう。そうね。そのシチュエーションを特殊な状況にするという意味で言うと、「音楽を持ち歩く」というのは奇跡体験みたいなものだよね。本来は。

C: うん。

JC: イーノがそう言ってたね。「ウォークマンが音楽の歴史を大きく変えるだろう」って。彼みたいに環境音楽とかを考える立場からすれば、やっぱり散歩の時にそのシチュエーションに合った曲を自分が選んだら、幸運・感動が増幅する可能性というのももちろんある。

C: うん。

JC: それは捨てがたい選択なんだけど、さっきの坂本さんが言うように「どうしても聴いてしまう」となると……自分は居酒屋のジャズとかが駄目なのね。耳がそっちに行っちゃう。味がわかんない。ついついそっち聴いちゃう。

C: プロが選曲してるもんね。

JC: そう。練習してシャットアウトするように出来るようになったけど、いっとき本当に駄目だったもんね。だったら全然嫌いなポップスとかかかってる方がまだマシ。ジャズは耳持ってかれるぞ。はははは。

C: だいたいの人が持っていかれないからジャズなんだろうけど。

JC: そう……データ上あるみたい。ジャズって、飲食店で売上が伸びて、お客さんが喧嘩しない……率が一番高い音楽がジャズらしい。

C: へえ。まあ快適な食事のBGMというか、元々音楽の演奏ってそういう側面があるでしょう?

JC: はははは! 貴族的に言えば。そうそう。本来はそう。だけどそれだけじゃない世界を求めた時代があったわけだし。

C: 進化?

JC: だったのかもしれないし。民族音楽の中でも「儀式」みたいな、シャーマニズムのある音楽ってやっぱり人を取り込むから他の事に集中させない。音楽に集中させる。昔からそういう流れもあって、もう一つ別に室内楽みたいな。

C: うん。

JC: 快適さ、BGMとしての進化も当然あったわけで。そういうので言うと、今の音楽シーンのメジャーになってるなというのは「支配する」という。聴覚をね。

C: 支配する……。

JC: うん。

C: 音圧とかで?

JC: 没我感というのかな。映画もそうだけど。そういうのが優先される。

C: 空間を埋めちゃう。

JC: 支配だね。うん……そういう時代だからこそ環境音楽って、アンビエントって面白いんじゃないの? そう……ついつい強めに言っちゃう。はははは。そういう音楽もあるよって。

つづく


2022年9月1日 doubles studioにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)
#doubles_studio_talk でトーク部分を一覧で表示出来ます。

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