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経済

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記事一覧

堂目卓生『アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界』(中央公論新社、2008年)

主題…アダム・スミスは、個人の私的利益の追求が社会全体の利益の実現につながるという「見えざる手」を説いた思想家のイメージが強い。そのイメージは正しいのか。スミスが『道徳感情論』で展開した人間観に焦点を当てることで、スミスの思想を「同感」という人間本性に重きを置く思想として読み解く。

 序章では、アダム・スミスが生きた18世紀ヨーロッパにおける社会の2側面について論じられている。
 堂目氏は、スミ

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水野和夫・大澤真幸『資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか』(NHK出版、2013年)

主題…資本主義は近代における核心的な原理である。今日では自明となった原理であるにもかかわらず、資本主義を取り巻く様々な事柄には謎も多い。社会学的・経済学的視点からその謎について考える。

 1章では、資本主義とは何かについて説明がなされた上で、「資本主義は特殊な現象か、普遍的現象か」という問いへの議論がなされている。
 市場経済を前提として合理性を追求する資本主義は、今日においてグローバルスタ

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岩田規久男『経済学を学ぶ』(筑摩書房、1994年)

主題…「経済学」は、生活に身近であるにも関わらず学ぶ機会は乏しい。そもそも経済学とはいかなる学問であり、何を明らかにするのか。実際の経済の動きに触れながら、経済学の基礎知識を学ぶ。

 1章では、経済学とはいかなる学問であるかについて、「価格」や「費用」「消費」といった基礎用語の解説を踏まえながら説明がなされている。
 「価格」とは、モノやサービスの利用を特定の人に限定する手段の一つであると岩

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『投資家が「お金」よりも大切にしていること』/藤野英人

主題…日本人はお金に対して謙虚であり、お金を真面目に使っていると認識されがちである。しかし、こういった見方は誤っているのだという。日本人と「お金」の関係を見直すことで、「お金」や「投資」がもつ本来の意味を考える。

1章では、日本人の「お金」に対する意識について述べられている。
日本人は、「お金」に対して謙虚であり、あまりお金を好きではないと認識されがちであるが、藤野氏によれば、むしろ日本人

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『不平等との闘い ルソーからピケティまで』/稲葉振一郎

主題…近年刊行されたトマ・ピケティによる『21世紀の資本』は、昨今の格差・不平等の実態を実証的に分析した書籍として世界中の多くの人々に読まれた。しかし経済学が格差や不平等にどのように向き合い、論を展開してきたのかはあまり注目されていない。ピケティの論の意義を知るためにも、経済学が不平等をいかに論じてきたのかを明らかにする。

0章では経済的不平等論争の出発点とされるジャン・ジャック・ルソーとアダ

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『日本銀行』/翁邦雄

主題…日本の金融政策を担う「日本銀行」 日本銀行による金融政策はどのように決められ、どのように運用されるのか。そしてそれらはどのように生活に影響しているのか。中央銀行の成立から、今日の金融政策の実相まで、幅広く考察を行う。

1章では中央銀行の歴史について取り上げられている。
中央銀行の起源は1694年に創立された「イングランド銀行」にまで遡るという。この「イングランド銀行」が各国の中央銀行

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『池上彰のやさしい経済学2』/池上彰

主題…インフレ、デフレ、金融政策、年金、リーマンショックなど、現代の経済をめぐる問題はどのように捉えればいいのか。リアルな経済の態様を辿るためには、前提としての事実の理解と知識の定着が必要となる。ニュースを通して経済を理解するために必要な知識を身につける。

1章では「インフレ」と「デフレ」の説明と、それらへの対処について、各国の経済史を辿り説明がなされている。
一般的に「インフレ」は物価水準が

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『池上彰のやさしい経済学 1』/池上彰

主題…アダム・スミス、カール・マルクス、ジョン・メイナード・ケインズ、ミルトン・フリードマン、デイヴィッド・リカードなど、彼らの理論を耳にしたことはあるが、具体的に説明することは意外と困難である。彼らの理論が生まれた背景や理論の内容、現代の日本への影響などを知り、経済学への理解を深める。

1章では経済の語源や役割、経済学の潮流などについて説明がなされている。
明治時代にeconomyを始め

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『ケインズとハイエク 貨幣と市場への問い』/松原隆一郎

主題…20世紀の経済学におけるビッグネームである「ケインズ」と「ハイエク」2人は20世紀の経済学を対立する立場から先導してきた。2人の経済理論・経済思想はどのように論じられ、展開されてきたのか。対立軸と背景を辿り、2人の議論に迫る。

1章ではケインズとハイエクの2人の生涯について取り上げられている。2人は互いに論戦を張りながらも、評価を重ねてきていたという。

2章はケインズとハイエクの

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『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』/渡邉格

主題…利潤の最大化を志向する資本主義は労働者を搾取構造へと追い込むことになる。マルクスのこの警句をもとに、資本主義の矛盾を打開する新しい経済のかたちが田舎のパン屋によって発見された。それが「腐る経済」である。

第1部では渡邉氏が田舎でパン屋を開店しようとしたきっかけや、その道のりについて紹介されている。そして第1部後半部では、渡邉氏がマルクスを読んだことより得た気づきについて取り上げられてい

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