『投資家が「お金」よりも大切にしていること』/藤野英人

主題…日本人はお金に対して謙虚であり、お金を真面目に使っていると認識されがちである。しかし、こういった見方は誤っているのだという。日本人と「お金」の関係を見直すことで、「お金」や「投資」がもつ本来の意味を考える。

1章では、日本人の「お金」に対する意識について述べられている。
日本人は、「お金」に対して謙虚であり、あまりお金を好きではないと認識されがちであるが、藤野氏によれば、むしろ日本人はお金が大好きなのだという。他国に比べ、日本人は投資や寄付よりも、お金を預金に使う傾向にあり、現金に対するこだわりが強いのだという。
また、藤野氏は、日本人がお金に対して真面目ではない点を指摘する。日本人は何事に対しても真面目であると考えられがちであるが、実際は、日本人はお金に関しては、「本質をとらえる」という観点から言えば、真面目であるとは言えないと藤野氏は主張する。日本人は、目先の短期的利益に基づいた投資行動を行う傾向にあり、お金の本質を考慮した投資行動を行なっていないのだという。

2章では日本人のお金との距離感について論じられている。
日本人は、お金との距離感を考える時に、「清貧」の思想を念頭に置いている。しかし、藤野氏によれば、日本人の多くは「清貧」を誤って解釈しているという。そして、日本人には「清貧」と「汚豊」の二極の軸しかなく、最も理想的であるはずの「清豊」を目指すという発想に乏しいと藤野氏は述べている。

3章では、経済と人々の関係性について述べられている。
藤野氏は人は誰しも、「経済主体」である点に強調する。人々がそれぞれ経済主体であり、消費行動を通して「互恵関係」を結ぶということが、経済の本質なのだという。すなわち、藤野氏によれば、お金を使うことにより、互恵関係を結び、社会をよりよくしていくことが、経済の本質なのだという。
こうした点から、藤野氏は、消費行動に対して自覚的である必要性を指摘する。自らの日常的な消費行動を見直す姿勢をつけることが重要なのだという。

4章では、会社とはいかなるものであるべきか論じられている。
藤野氏は会社についても、「不真面目」な会社が多いことを問題視する。会社としての理念や理想など、本質的なことを目標として掲げるのではなく、目先の利益や安定の獲得にとらわれている会社が見受けられるのだという。
藤野氏はこうした点から、よい会社を見極める視点の一つとして、真面目さを挙げている。その会社が成長するかどうかは、会社の姿勢から垣間見られる真面目さにかかっているのだという。

5章では、「投資」と人生、社会の関係について述べられている。
藤野氏は、「投資」を「いまこの瞬間にエネルギーを投入して、未来からお返しをいただくこと」と定義している。この定義においては、「投資」はお金を使うことにとどまらず、エネルギーを投入して、お返しを得る行為は、すべて「投資」にあたることになる。藤野氏は、こうしたお金に限定されず「未来からのお返し」につながる投資行為が、より良い世の中の実現に繋がりうるとしている。閉じた世界において自分の利益だけを目指すのではなく、エネルギーの投入により社会をよりよくしていくような行動をとることが、「投資家」の本当の姿なのだという。

一行抜粋…あなたは、自分の人生をかけて社会に投資している、ひとりの投資家なのです。そのことを、本書を閉じたあとも忘れないでください。あなたには、「お金」よりも信じられるものがありますか?あなたには、「お金」よりも大切なことがありますか?その答えを探す旅を、私と一緒に歩み始めましょう。(243頁)

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