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牛きっかけで始まった「ドットわん」

「ドットわん」の淺沼悟です。今回は犬の自然食を仕事にするきっかけについてお話しします。それは30歳から始めた個人事業/販促プランナー時代に遡ります。

いただいた仕事を断らなかったせいで、100人組手のようにいろいろな業種・業態のクライアントから広告提案・コンセプトデザイン・キャッチフレーズ・メニュー作成など様々な仕事をいただきました。その中に和牛専門の問屋A社があり、案件は「自社で取り扱っている高知県産黒毛和牛の価値付け/ブランディング」。当時日米貿易摩擦解消の交渉カードとなっていたアメリカ牛肉の関税引き下げが実施されるとの憶測が流れ、危機を感じたA社が価値の差別化を図るために依頼してきたものでした。

まず和牛を知るところから

牛肉という商材も業界も流通も、引き受けるにあたってまったく知らない世界。牛肉の加工・流通過程を現地で見せてもらった際、霜降り肉とその他の扱いに差があることに気づくのです。切り分けられた霜降りの塊はすぐに湿らせた布やラップにくるんで冷蔵庫に移すのですが、ほかの部位は量が溜まるまでそのまま。中にはトリミングと称して分厚く切り落とされた端材が、価値のつかない商品として出荷されることもあるらしい。「赤身やすじ肉は売れ残ることもあるよ。買い手がつくんなら同じように品質管理するんだけど…」や「消費者は“新鮮な肉は赤い”と決めつけてるから、熟成して出荷する牛肉は表面をそぎ落として赤い部分をだす。少し黒ずんで熟れた部分のほうが旨いんだけどね…」との裏話を聞いているうちに、「ブランドを付けて霜降りを高く売るのもいいが、すべての部位に価値をつけて売り切る提案が先!」と考えるようになったのです。

そしてドッグフードに行き着く

すべての部位に価値をつける!それは簡単ではありません。安く買いたたけば牛一頭の収益を上げるという本来の目的が果たせない。また黒毛和牛という希少食材でも部位によって売れ残っている現状にも釈然としない。「ターゲットと市場を変えられないものか…」発想を転換しなければと悩んでいた時に見かけたテレビCM。そこには家族全員から大げさに溺愛され、それに応えるように全力でシッポを振る愛犬が映っていました。つぶらな瞳が何とも愛おしくて、この犬が喜ぶご褒美をあげたい…「そうだ!黒毛和牛を使ったワンコの高級トリーツには需要がある」と気づいたのです。牛の価値が上がれば出荷量が見込める畜産農家、霜降りはヒト向け・歯ごたえある赤身は犬向けで収入増のA社、企画が通れば新しい事業に関わることができる弊社(当時は個人事務所)、安心なご褒美を手に入れる飼い主さんと愛犬。関係者みんながハッピーなビジネスは成功すると気づいたとき、「これしかない!」と確信しました。

最初に手掛けたドッグフード

品質の高い食肉を安定調達できれば、それだけで差別化になる。当時のペットフードはできるだけ安価で原料を仕入れ、それを加工し直して再上市する考え方が主流でした。“安い販売価格・長持ち・よく食べる”がいい商品。品質より経済が優先という印象でした。そのため低品質フードが起こすトラブルも多く、飼い主がもつ不信感の払しょくが急がれる市場だったのです。そう飼い主さんが欲しがっていたのは安心して与えることができるドッグフード(ブランド)。そこで食材を透明になるべくそのまま、不要な添加物を排除した商品づくりに着手しました。

和牛一頭買い・部位を切り分ける技術をもつA社の強みを生かし、すべての部位を乾燥ジャーキーに。和牛赤身ジャーキーだけではなく、腸の弱いワンコには小腸や大腸・心肺が不安ならハツやフワ・股関節にはアキレス腱など、「牛一頭丸ごと食べる!」という犬にとって叶わぬ夢を実現した最高級トリーツです。地元の工業試験場にある乾燥機を借りて試作を繰り返し、含水量を調整した我ながら完成度の高い仕上がりまで漕ぎつけました。

大事件勃発!ここで諦めたら「ドットわん」はなかった

さぁA社に事業計画を提案しようと目論んでいた矢先、たった一つの出来事で事業自体がとん挫してしまったのです。それが“狂牛病/BSEの伝染”でした。A社の決断は早く、事業化はナシ。私を中心としたプロジェクトはあっけなく解体です。こういった仕事はクライアント/経費捻出元があってこそ。本来なら気を取り直して他の仕事にかかるのが常識。ただこの仕事だけはどうにか続けられないものか足掻いていました。ドッグフードの問題点に気づき、愛犬の健康で長生きを食で支えるという大義も持てた。生産者を手助けする新しい販路作りもイメージできる。そしてゴールが見えない運命のまま、自力で開発を続ける決心をしたのです。

今では犬の自然食開発を生業として全国の生産者と6次産業化を推進する立場ですが、この決心がなければ犬の自然食「ドットわん」は誕生しなかったのです。今では多くの愛用者をもつ「ドットわん黒毛和牛ステーキ」がヒット商品に成長。当時を振り返ると感慨深いですね。

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「ドットわん 黒毛和牛ステーキ」

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