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【パーリーナイトとは】 チェーホフ 「桜の園」

チェーホフがこんな風に現代に生まれ変わるのか!に終始仰天。

人間の本質なんて未だに何も変わらない、とはチェーホフ作品に触れる度によく思うけれど、それでも、言うたかてこれまでに見た「桜の園」は、やはりロシアの落ちぶれ貴族と哀愁の成り上がりの物語だった。

いや、今作だって、確かに目の前にいるのは、現実を見ようとしないロシアの落ちぶれ貴族たちと、金策に振り回される養女と、頭でっかちな大学生と、どんなに財を成しても、ちっとも振り向いてもらえない元百姓の資産家なんだけれど、その一言一言が、「今の日本人」にチクチク刺さる。

世界に遅れを取っている、今の社会を見て見ぬふりをしていることに対する警告や揶揄が、どストレートに迫ってくる。しかも、押し付けがましくなく。

変化についていけないから、変化自体を「無かったことにする」のも人間に備わっている現実逃避能力だし、頭でっかちの理想主義に走ってしまうのも人間の持つ能力だ。

それらに何の忖度もせずに、鳴り響くチェーンソーの音。安安とフェンスを乗り越えて訪れる変化。視覚化って、こういうことだ。

確かにチェーホフなんだけど、確かに「桜の園」なんだけど、同時にそうじゃない「今ここ」が、きゅうり齧りまくって(!)水着着て(!)ビニールプールに寝そべって(!)くっちゃべるシャルロッタと共に、提示されていた。

2幕頭の「自宅パーリーナイト」も、大爆笑だった。三輪車!狼!まさかの手品がこんな感じに!いや、あんたら金ないんちゃうんかーい!と超特大のツッコミを入れたくなるようなパーリー。ああ、Tシャツ買えばよかった。後悔。

舞台美術もシンプルで現代的。コンクリートの冷たい皮膚感にゾクゾクした。

チェーホフの懐の深淵さに圧巻された。オススメ。

https://stage.parco.jp/program/sakuranosono2023

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