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126/365 【%b&'(#q*(或いは声にならない声)】 ナショナル・シアター・ライブ改めホーム配信 「フランケンシュタイン」

毎週1本、週替わりでナショナルシアターライブ(NTL)作品がYouTubeで公開されている。題してNational Theatre home。TheaterではなくTheatreな辺りはやっぱりイギリス。

今週はフランケンシュタインが公開されています。

このトップ映像だけでもドキドキしません?有名すぎるくらい有名なのに、観劇は初めてでした。

まずは結論から。

すごい。

この一言で終わらせたいくらいの衝撃作だった。(じゃあ終われ)(やだやだも少し話させて)

「生」と「死」を隔てるものは何か?化学の力で生命を生み出すことが出来ないものか?と愛を知らない科学者が、科学的好奇心のみで突き進んだ挙句に生み出した「怪物」

名前すら与えられず、野に放たれた生まれたての「怪物」は、初めて聞く鳥の囀りに驚き、金平糖をぶちまけたような天の川に歓声をあげ、太陽の暖かさに感動し、なんでもまずは口に入れる赤子のように萌える若草を食み、びっくりして声を上げる。ただただ生きているだけで、喜び笑う。

偶然出会った盲いた老人から教育を受け、どんどん知性を獲得する怪物。

だがその恐ろしい容姿のせいだけで「見える」人から迫害を受ける。夜中に畑から石を取り除いても、若夫婦の為に狩りを行い、闇に紛れてその獲物をそっと差し上げても、若夫婦には伝わらない。二人はいもしない妖精に感謝を捧げ、そこにいる(実際に手を動かしていた)怪物に罵声を浴びせる。

産んでくれなんて願わなかった。だが生まれたからには、僕は戦う。

抑圧されている者には、声を上げることさえ許されていないのか。

終盤、怪物は産みの親であるフランケンシュタイン博士への復讐を誓う。

僕には人間を真似る才能がある。それを使い、人間のように憎み、傷付け、貶めることを学んだ。そして、人間の持つ最も高度な技を僕はようやく獲得した。”嘘をつく”という技を。


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観劇中、人間の聴覚野には引っかからない音域の悲鳴をあげ続けていた。その声にならない声すらも出なくなるような幕切れだった。

劇場内の天井に飾ってある電飾が驚愕的に素晴らしい。

時には脳内で延々とスパークし続けるシナプスの連続体のようにきらめき、時には口をポカンと開けて見上げる天の川のように輝く。外界の電気信号にも、悪夢の閃きのようにもなる。

盆の使い方も素晴らしく、回りながら沈む風景が地平線に消えていく彼方の街のようだった。

それらの全てを捉えていくカメラワークも素敵。

そして何よりも、キャストの力量

ほぼ空舞台になる瞬間が何度もあるが、そこが1人(ないしは2人)で埋まる。

主役2人の入れ替え版もあるのだが、私は冒頭にリンクを貼った

怪物: Johnny Lee Miller
フランケンシュタイン博士: Benedict Cumberbatch

のバージョンの方が好きだった。ジョニーすごい。ずっとぞわぞわしっぱなしだった。

入れ替え版のどちらも基本的には同じだが、ステージングが少し違う。役者がスイッチしたが為の有機的な変化も2つを見比べることで楽しめる。

英語の字幕しかないが、冒頭30分くらいは殆どセリフがないのでそこだけでも一見の価値はある。頭上の電飾の素晴らしさも、ジョニーの怪演もそこだけで分かるから。

とはいえ、そこまで見たら多分残りはあっという間なはずだ。

舞台や映画のレビューは劇場で見るまでお預け!とうっすらと思っていたのだが、これは書かずにはいられなかった。イギリス時間5月8日までの限定公開。(カンバーバッチが怪物役の方は5月7日まで)

ちなみに演出はダニー・ボイル。映画監督としてしか知らなかったが、実はこの方のキャリアは、Royal Court Theatre Upstairsでの芸術監督がスタートだったそうで、今回の「フランケンシュタイン」で久々に舞台に「帰ってきた」そうだ。

「トレインスポッティング」とか、昨年の「イエスタデイ」が印象深い為、てっきり映画オンリーの人かと思っていた。

色々知るなあ。

残りの期間は短いものの、暑苦しく書かずにはおられなかった作品だった。

明日も良い日に。






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