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【密やかな会話とは】 スペクタクル・リーディング 「バイオーム」

わたしたちは死ぬとはいわない。変化するの

クロマツ

植物は、話している。
周りのことも、自分たちのことも
ただ、事実だけを、無感情に、淡々と。

3本足の生き物がこちらにくる。
ハサミの生き物に、根っこを踏まれた。
小さい獣が、僕たちを登っていく。

無感情な植物の方が、差別しない。周りのことも、そこで起こることも、そのまんま受け入れている。分け隔てすることもなく。

感情に左右される人間の方が、獣だ。
周りの出来事も風景も、自分の都合と感情で歪めて解釈をする。

物理的には動けなくとも、何ものにも縛られていない植物と、
どこへでも行けるのに、その場にがんじがらめにされて苦悩する人間たちの共存する世界。

バイオーム:生物群系。ある気候条件の地域で,それぞれの条件下での安定した極相の状態になっている動植物の集まり

ブリタニカ国際大百科事典

あるお屋敷の「バイオーム」での、人間と植物の物語。

植物の声や音楽が聞こえる少年は、学校の授業が物足りない。だから植物の声に耳を傾ける。それが周りには、「勉強ができない子ども」に見える。「チエオクレ」だと決めつけて、施設に入れてしまおうとする。

出来すぎてつまらなくて、別のことを考えているだけなのに。そこにある植物の声を聞いていないのは、「健常者」の方なのに。

その両親や屋敷で働く者たちも、愛のない政略結婚、代々続く不倫、実らぬ恋など屋敷内に交差するドロドロとした因縁の全てを、見てみぬふりをする。#昼ドラエッセンス全部盛り。

そしてそれは悲劇を生む。

セコイアって、100メートルにもなるんだって

こんな風に言う人間たちに反応して、少しだけ背伸びをするセコイアの成河さんが可愛かった。

麻美れいさんのクロマツの存在感たるや。屋敷の庭園というバイオームを司るものの超越感や全てへの慈愛が、一言一言に感じられた。身体を動かさなくても、言葉だけでその場の空気を動かしていた。

ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの「100年の秘密」の裏主人公の大木を思い出した。あの木も、こんな風に一族の栄枯盛衰を見守りながら、会話をしていたのだろうか。

植物を演じる人々の植物っぷりが、ひたすらに植物で、自宅の植物たちにも話しかけてみようと思った。私の自宅というバイオームでも、密やかな会話は存在する。あちこちで、淡々と。

「スペクタクルなリーディング」体験だった。

明日も良い日に。

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