2/25東日本大震災直後の実話をもとにした絵本「『はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ』講演会」@福島県立図書館
東日本大震災直後の実話をもとにした絵本『はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ』
2月25日(土)に、福島県立図書館で行われた「『はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ』講演会」に行ってきました。
2011年の東日本大震災直後、極度に燃料が不足した東北の被災地に、石油や灯油を届けるために活躍したディーゼル機関車を、皆さんはご存知ですか?
不通となった東北本線に代わり、普段は貨物列車が走行しない磐越西線(ばんえつさいせん)という線路に、全国から集められたディーゼル機関車が走った、被災地の人々を助ける大プロジェクトです。
その出来事を描いた絵本が『はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ』なのです。
デーデは「希望の光」/作者・すとうあさえさん、鈴木まもるさんの講演
今回の講演会では、作者のすとうあさえさん、鈴木まもるさんが登壇され、絵本の制作時のエピソードや、作品に託した思いなどを話されました。
すとうさんは、2011年3月27日に、テレビ番組で、寒さが残る東北地方にディーゼル機関車による石油の緊急輸送が行われていることを知りました。
悲しいニュースが溢れる中、この出来事に「希望の光」を感じたと言います。
どうしてもこのことを、子どもたちに伝えたいと思ったすとうさんは、4月12日に、緊急輸送の中継地である新潟に足を運び、JR貨物の関係者や運転手への取材をされたそうです。その際に、運転中に「すべるぞ!」や「よくやった」など、運転手の方が機関車に話しかけるという話を聞き、ディーゼル機関車を「デーデ」と擬人化し、物語を書くことを決めたそうです。
絵を描かれた鈴木さんは、この機関車をどう描くかを悩まれたそうです。原稿を読み、「これは乗り物が主人公ではなく、機関車を動かそうとした、たくさんの人たちが主人公の絵本」だと感じた鈴木さんは、ディーゼル機関車の絵は擬人化せずに、リアルなタッチで描くことに決めます。ディーゼル機関車が動いたのは、「誰かのため」にという人々の思いがあってのもの。その思いを温かく描きたいと思った鈴木さんは、ペンや色鉛筆、絵の具などを織り交ぜて、デーデを描いていったそうです。
実際に、緊急輸送を実現するためには、たくさんの人の力がありました。全国のディーゼル機関車の整備、ダイヤの調整、線路の状態を確認、運転手や同一規格の石油タンクの確保……被災地に向けて燃料を運ぶための準備を短期間でできたことは「奇跡的」なことだったと、関係者の方も語ります。
「被災地の人々を助けたい!」という多くの人たちの思いがあったからこそ、実現できたのだと、すとうさんは感じたそうです。
デーデのモデルとなった「DD51」は、現在はその役目を終え、2016年に解体されています。絵本を読んでくれた人たちの中で、思いを乗せて走り続けていってほしい……講演の最後に、すとうさんはそう語られました。
福島で行われた今回の講演会には、震災当時に緊急輸送に助けられ、励まされたという方がたくさん参加されていました。講演後の質疑応答では、被災当時の状況や、その中でデーデから受け取ったものについて、会場からも多くの声が寄せられていました。
人から人へ、思いを乗せて
実はこの講演会、2020年3月に開催予定だったのですが、新型コロナウィルス感染拡大を受けて、3年連続で延期を余儀なくされていました。ただ、『はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ』を、福島の子どもたちに届けたいという主催者の方々の強い思いがあり、決して「中止」にはせずに、今回ようやく実現に至ったのです。
なんとしてでも講演会を実現させたいというみなさんの熱意には、あの時、デーデに託した人々の思いと重なるものがあるように感じました。
編集部・N
2012年童心社に入社。『十二支のおもちつき』(すとうあさえ/さく、早川純子/え)『ウミガメものがたり』『わたり鳥』(ともに鈴木まもる/作・絵)などの絵本を担当しました。
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