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【29】人は、前提をもとに、経験をする

イライラや怒りなど、あなたから何らかの感情や状態が出てくるのは、あなたの中でインプットとプロセスという過程が行われた結果なので、出てくる感情や状態を変えたかったらインプットとプロセスの部分を見直せばいい、という話の続きです。

インプットを見直す方法については

【23】インプットの仕方を変えるとアウトプットが変わる(1)
【24】インプットの仕方を変えるとアウトプットが変わる(2)

をぜひご覧ください。

また、プロセスに関しては、プロセスを邪魔する代表的なフィルターの一つ「常識」について、前回【28】常識というフィルターが生み出すもので取り上げましたので、そちらもぜひご一読ください。

今回はプロセスの過程を邪魔するもう一つのフィルター「ネガティブな前提」についてお話します。

前提と経験の関係

ネガティブな前提というのは、その言葉通り、物事を見る時の前提がネガティブである、ということです。

たとえば、仕事であれば、「働くことは苦しいものだ」というのはネガティブな前提の例。一方、「仕事とは楽しいものだ」というのはポジティブな前提の例です。

お金を稼ぐことに対して言えば、「お金を稼ぐのは難しい」というのはネガティブな前提になりますし、「お金は簡単に稼げる」というのはポジティブな前提になります。

ここでものすごく重要なのが、前提というのは経験に基づく感覚や信念とは異なるということ。

わかりやすくいうと、前提とする内容が事実か否か、あなたがそう感じられるか否か、信じられるか否かはまったく関係なく、ポジティブな前提を置いて物事を見る、ということが大事なんですね。

「でも、今までの経験からして、お金を稼ぐのが簡単だとはとても思えない」

「仕事は楽しいものだと思えたらいいけど、現実、とてもそうは感じられない」

そんなふうに感じる方もいるかもしれませんが、そもそも前提と経験(納得する体験)の関係って、前提が先にあるんです。

どういうことかというと、「ある前提を置く」→「その前提をもとに経験をインプット&プロセスする」→「その前提の通りだと思える/その前提の通りに感じる」という納得が出てくるという順番なんですね。

ちょっとわかりにくいかもしれないので、地動説と天動説の例を出してみます。

今の私たちの社会は、太陽が中心にあって地球がその周りを回っているという地動説を前提にして成り立っています。

でも、私たちのほとんどは地球が回っていることを実感をともなって経験したことはないはずです。

「いやいや、季節がめぐるし、朝と夜があるし、だから、地球は回ってるって感じるよ」と思うかもしれませんが、地動説が出てくる前、天動説が前提だった社会では、人々は地球ではなく太陽が地球の周りを回っているから季節が変わるし、朝と昼があるのだと信じていました。

つまり、季節がめぐり、朝と夜がある、という同じ出来事も、天動説を前提にしていたら天動説を納得させるような経験として入ってくるし、地動説を前提にしていたら地動説を納得させるような経験として入ってくるということです。

ですから、ポジティブな前提を置く時、本当にそう感じられる、それを信じられる、というのは全く関係がなくて、そう感じられなくても、そう信じられなくても、ポジティブな前提を置くことにする、ということがとても大切なんですね。

人は人に対してネガティブな前提を置きやすい

どのような物事に対してどのようなネガティブな前提を持っているかは、人それぞれあると思いますが、今現在の社会の成り立ちからして、多くの人が持ちやすい共通のネガティブな前提があります。

それは、「人」というものについて。

私たちの社会は、とりわけ私たちの生活に関わる政治や行政の仕組みは、「きちんとルールを作って、人にそれを守ることを強いないと社会は成り立たない」という前提に立っていると言わざるを得ません。

これ、言い換えると「人は自由にさせておくと悪いことをする」というネガティブな前提があるということです。

自由にさせておくと良いことは起こらないという前提があるから、管理・規制するルールが必要だし、ルールを守らせるためには違反者には罰が必要だ、という発想が出てくるわけです。

誤解がないように補足しておくのですが、このマガジンでは、ルールの是非を問いたいのではありません。

お伝えしたいのは、そのような社会を当たり前のものとして育っている私たちは、知らず知らずのうちに「人は自由にさせておくと悪いことをする」という前提を置いてしまいがちだ、ということです。

わかりやすい例は、小さな社会とも言える会社組織や学校でしょう。

「従業員(生徒)に自由を与えるとサボるからきちんと管理しなければ」と考えているとしたら、それは人というものに対してネガティブな前提を持っているということに他なりません。

では、どうすればいいか?

そう思えなくても、信じられなくても、人は信用できるものだ、という前提を置く、と決めて行動するしかありません。

先に述べたように、そう決めたら、あなたの経験はその前提をもとにインプットされプロセスされていくので、「ああ、やっぱり人って信用できるんだな」と納得できるような出来事をあなたは少しずつ体験し始めます。

魔法のようですが、これが本当の話だから、動作学は面白いのです。

人間というものに対してポジティブな前提を置くと、あなたの日々はきっといろんな意味で豊かになります。

さらに言えば、人が人に対してポジティブな前提に基づいて行動するということが、この先の人類、社会を大きく開くような進化・変化を起こすのに、とても重要な鍵でもあるのです。