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情報に振り回されないために

先日、健康をテーマにしたある講義で、講師がある製品について解説をしてくれました。

その製品が体にどう悪いか、という内容でしたが、その講師は話終えた後、こう言ったんです。

「私は、この製品を作っている会社が、人の体に悪い影響をおよぼしたくてやっているとは思わないんです。世の中にこれを必要としている人がいる、これが助けになると思って作っているんだと思うんです」

続けて、こうも言いました。

「健康に関する情報は巷に溢れています。何を基準にして選べばいいのでしょう? 私は『自分が心地よく感じるものを選ぶ』ということを提案したいんです」

聞いた瞬間、「ああ、動作学も同じ!」と思わず膝を叩きました。

この考え方は、自分の幸せ、そして世界の幸せを築くのにとても重要なので、改めて深掘りさせてください。

本当にいろんな視点をインプットできている?

先の講師がやっていたことは、動作学でいうと「視点の数を増やす」こと、そして「ポジティブな前提を置く」ことです。

具体的には、製品を作っている人(会社)の視点を増やしたわけですが、その視点を考える時に「全てが善きことだとしたら」という前向きな前提を置いてみることもしていたんですね。

おそらく、いろんな視点で見てみることや、物事を前向きに捉えてみることの利点は多くの人が認識していて、心がけてもいると思います。

でも、ここで問いたいのは、本当にいろいろな視点で見ることができているか? 本当に前向きな前提を置くことができているか? です。

たとえば、Aという製品は体に悪いという情報に触れた時、「それは本当か?」ということはきっと皆さん、調べられると思うのです。そして、「Aは体には悪くない」という立場の意見、「Aは害である」という立場の意見、両方を入手すると、あたかもいろんな視点で考察したような気になります。

でも、それは、「Aは体に悪い」という一つの視点について情報を集めただけで、視点の数が増えたとは言えないんです。

視点の数を増やすというのは、Aという製品とそれにまつわる状況まで含めて立体的に見てみるということ。

どうしてAという製品が作られたのか? どういう歴史があるのか? どんな人たちが使っているのか? といったさまざまな側面の情報をインプットしていくことなんです。

その際、大切なのは偏見をできる限り取り払ってニュートラルに情報を入力すること。

ただ、同じ情報をインプットしても、「世界では悪いことが起こっている」という前提を持っているのと、「世界では善きことが起こっている」という前提を持っているのとでは、自分から出てくる反応が変わってきます。

もちろん、「世界では悪いことが起こっている」という前提を持っていても構わない、というか、その前提は生命の危機から身を守るための本能として誰もが備えているものです。だからこそ、あえて意図的に「そもそも全てが善いことだとしたら?」というふうに正反対の前提を置いてみることをするのです。

動作学でいうと、視点を増やすことはインプットを変えること。違う前提を置いてみることは(脳が行う)プロセスを変えること。それらがなぜ大事かというと、最終のアウトプットが変わるから…ということはこれまでもお伝えしてきたのですが、それだけではありません。

視点を増やし、前向きな前提を置くことをしていくと、何が正しくて何が間違っていると簡単に言い切れる物事はほとんどないということが実感を伴って感じられようになるんです。

そうすると、自分が感じることが答えであっていい、人と違っていい、ということに誰の承認を得なくても自信を持てるようになる、つまり自己肯定感が自然と高まるのです。

情報にたくさん触れると混乱する?

さて、ここで、インプットの視点を増やすこと、すなわちたくさんの情報を得ることについてよくある誤解を解きたいと思います。

「情報が多すぎると混乱する」。

もちろん、そう感じるのであればその感覚を何よりも大事にしてください。

ただ、もしかしたら、無意識に正解を選ぼうとしていないでしょうか? その場合、どの情報もある視点で見たら正しいと言えるので、混乱してしまって当然です。正しいものを見極めるために情報を得ているのではなく、自分が感じる答えを引き出すために情報を得ていると考えたらどう感じるでしょう?

「情報より直感を大事にしたい」。

動作学でも直感を大事にすることは両手をあげて推奨しています。

ただ、直感というのはさまざまな情報が意識できないレベルでプロセスされた結果として出てくるアウトプット。情報をインプットすることは直感を邪魔をすることではなく、むしろ直感の精度をあげることなんです。


情報はあくまでも自分にとっての最適解が出てくるようにするために得る、そう考えると情報に振り回されることはなくなって、より主体的に関われるようになるのではないでしょうか?

動作学的に物事を見る時の3つの考え方については以下の過去投稿をご参照ください。
◉インプット・プロセス・アウトプット(知覚行為循環)
 アウトプットを変えるために知っておきたいこと
◉動的平衡(ゆらぎ)
 生きることは揺らぐこと
◉適応
 今のあなたは過去の適応の結果