【44】「今ここを大事にする」って、つまりどういうこと?
「過去や未来ではなく、『今ここを大事にする』ことが幸せの秘訣である」
古今東西で説かれてきたこの真理について、過去や未来ではなく「今ここを意識する」ことだと前回書いたのですが、それだけではやや観念的でわかりにくかったかもしれません。
そもそも、「今ここを大事にする」って、一体どういうことなんでしょう?
「今という時間を大切にする」「今ここで起こっていることに集中する」など、他の言い方もできますが、ともすれば、「今がよければそれでいい」という刹那主義に捉えられかねませんし、「今、あるものを大事にする=今以上を望まない」というふうな解釈もできなくありません。
もちろん、人それぞれ、いろいろな考えがあっていいのですが、幸せになるための真理として実践をするためには、言葉が意味することを明確にする必要がありそうです。
というわけで、そんな時こそ、動作学のレンズの出番。
「今ここを大事にする」ということについて、動作学のレンズを通すと、何が見えてくるでしょうか?
今、いい気分になる選択をする
「今ここを大事にする」、この言葉が言わんとすることを、動作学的に解釈するならば、「自分の生命システムの今の状態を意識して、生命システムがいい状態であれるような選択を今する」ことだと言えます。
…ちょっと堅苦しいので、平易に言い換えましょう。
「今、自分はどんな気分かを認識し、今、自分がいい気分になるような選択をする」
ここで注目していただきたいのは、「いい気分になる」ではなく、「いい気分になるような選択をする」という表現をあえてしたこと。
というのも、どんな気分になるかは、生命のシステムが出してくるアウトプットなので、あなたの意志だけでは制御できないんですね。
ただ、アウトプットは、あなたのインプットとプロセスの結果でもあるので、インプットとプロセスの部分において、いい気分というアウトプットが出るような選択をすることは、あなたの意志でできるんです。
もっと言えば、あなたが今、いい気分でないとしたら、それはいい気分が出てくるようなインプットとプロセスを今、あなたが選択していないということでもあるんです。ですから、今、選んでいるインプットとプロセスを変えるしか、今、いい気分になる方法はないとも言えるんですね。
いい気分になるために何を選択するのか?
では、今、選んでいるインプットもしくはプロセスを変えるというのは、具体的にはどういうことでしょう?
まず、あなたの選択で変えられる領域は、大きく分けて二つある、というところから整理していきましょう。
(1)環境を変える
(2)あなたを変える
今のあなたの気分は、あなたのインプットとプロセスの結果なのですが、あなたのインプットとプロセスには、「環境」と「個人(あなた)」の両方が関わっています。
ですから、今、いい気分でないなら、今いる環境を変えれば、必然、気分は変わります。
たとえば、嫌な人のそばから一時離れる、とか、仕事をする部屋を変える、とか。シャワーを浴びる、着替える、など、いわゆる気分転換を図ることも今すぐ自分の選択で変えられる環境と言えます。
実際、それでちょっといい気分になったという経験は、多かれ少なかれ皆さんにあることと思います。
ただ、先にも述べた通り、あなたのインプットとプロセスには「環境」と「個人(あなた)」の両方が関わっているので、環境という一方を変えるだけの対処法は、そのうち頭打ちになることは否めません。
だから、遅かれ早かれ、あなた個人も変わらなきゃいけなくなります。
となると、「何をどう変えればいいの?」というのが次に出てくる疑問だと思うのですが、今、いい気分でないということは、いい気分が出てくるようなインプットとプロセスを今、あなたが選んでいないということだから、いい気分が出てくるようなインプットとプロセスを今、選ぶようにすればいいだけなんですね。
…ちょっとまどろっこしくなりましたが、その瞬間瞬間に意識して実践することはシンプルに二つに集約できます。
一つは、自分の感性に従うこと。
ここで言う感性とは、ひらめき、直感、ふとした思いつきのことで、これらは無意識も含めた全てのインプット情報をプロセスした結果、生命のシステムが出してきた最適解であると言って差し支えありません。
その最適解を行動に移すことは、生命のシステムの働きをスムーズに循環させることなので、必然、あなたから出てくる気分はよくなるんです。
たとえ思い浮かんだことが突拍子なかったとしても、それを否定したり抑圧したりせず、できる範囲で実行してみると、気分はよくなるはずなので、これは是非とも実験して体感していただきたいところです。
もう一つ、意識して実践することは、このマガジンで何度もお伝えしているインプットの量と質を変えること、です。
繰り返しになりますが、いい気分でない時は、ネガティブな視点からのみインプットをしているということの表れでもあるんですね。
だから、ポジティブな視点からもインプットするようにすれば、必然、視点の数が増えますし、インプットの質もポジティブに傾きやすくなります。
そんなふうにインプットの量と質を簡単に変えるテクニックの一つが、前回お伝えした「これが最善だとしたら」という前提を持ってみること。
本当に最善だとは思えなかったとしても、その視点を持って状況を見てみる、ということをするだけで、あなたのインプット情報は変化します。結果、あなたから出てくる気分はその前の瞬間よりはよくなるはずなんですね。
ちなみに、いい気分になるというのは、歓喜の状態や、ワクワクと興奮が止まらない状態といった、意識しなくても誰もがわかるようないい気分とは限らず、ちょっとすっきりした、とか、ちょっホッとした、というような状態も含みます。
そんなふうにして、自分の状態は一瞬ごとに少しずつ変化していることを理解すること、そのうえで、今、いい状態を生み出すような選択を今、意識的にすること、それが「今ここを大事にする」の本質と言えるかもしれません。