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【35】自己進化型組織を作るステップ(2)

前回【34】からの続きです。

「自己進化型組織」とは動作学が提唱する新しい概念の組織論で、具体的には組織が「多様性:高」「選択圧:高」という状態にあることを言います。

動作学がこの「自己進化型組織」を提案するのは、「多様性:高」「選択圧:高」という状態こそが、生物が自ずと強く進化していくのが生命の仕組みだから。

つまり、そのような状態を作り出せれば、その組織は自ずと強く進化していくようになる、という理論です。

しかし、実際には、多くの企業は、「多様性:低」「選択圧:高」という状態にあります。

多くの組織がいる①から、④の自己進化型組織を目指すには、①から②③という段階を経て④まで進まねばなりません。

そのうちの①から②へのステップについてを前回【34】お話ししましたので、今回は②から③へのステップを解説したいと思います。

意見を持つから、表明・共有するへ

そもそも②の状態、すなわち「多様性:低」「選択圧:低」という状態は、どういう状態でしょうか?

「多様性:低」というところは①と同じです。ただ、①の場合は主に「上司の言うことを聞いていれば良い」「言われたことをやれば評価される」という選択圧が高いことによって、多くのメンバーが自分の中で感じていること、思っていることがわからなくなっているという状態にあるがゆえの多様性の低さでした。

そこで、「上司の言うことを聞いていれば良い」「言われたことをやれば評価される」というような選択圧を一旦下げることことが、①から②に向かうステップだったわけです(詳しくは前回【34】記事へ)。

②の状態では、言われたことをこなしていればいいというような選択圧を低くし、「選択圧:低」になった結果、メンバーが自分なりの考え、思うこと、意見を持てるようになっています。

ただ、心に思うことはあるのに、その場でそれを言うことはない、という状態です。

つまり、個々の意見はあるけれど、それがきちんと組織内で表明され、共有されていないということ。

言い換えると、どんなに多種多様な人が集まっていて、それぞれの考えを持っていても、それらが表明・共有されていなければ、多様性が高い組織とは言えないのですね。

ですから、②の状態から③に行くためのステップは、それぞれが持っている意見を表明・共有できるようにすること、となります。

意見を表明・共有するために必要なこと

では、どうしたら、個々が持っている意見を表明・共有できるようになるのか?

環境の側、つまり組織を運営する側について言えば、いかにしてどんな意見でも言いやすい雰囲気を作るか、に尽きるでしょう。

今、よく言われる「心理的安全性」を作る、ということはその一つです。

ただ、個人の側、つまり組織に属する個々としてもできることはあります。

何ができるかというと、答えはシンプルで、自分の思ったこと、考えたことを勇気を出して言ってみること、です。

この時、ものすごく大事なのは、あなたの思ったこと、考えたことを聞き入れてもらうために意見を表明するわけではないのだ、というマインドセットです。

「言っても何が変わるわけじゃないし…」

「この前、思い切って意見を言ったら、スルーされたし…」

そういう経験、多かれ少なかれ、みなさん、あると思うんですよ。

でも、あなたの意見が大事なのは、意見が採用されるためではなく、組織全体の多様性を高めるためだ、という視点で見直してみてほしいのです。

そうすると、あなたの意見が多様な意見の一つとしてその場に出されるということこそが重要だと思えてくるのではないでしょうか? そして、自分の意見が聞き入れられるか否かにはそこまでのこだわりがなくなるのではないでしょうか?

しかも、意見を出したことで目に見えて何かが変わらなくても、実際に何も変わらないということなどありえません。

動作学のレンズを通してみたらそれは明らかで、あなたが意見をきちんと表明(アウトプット)したら、その意見を聞いた全ての人のインプットをちょっとは変えたことになります。

ただ、あなたにはその小さな変化は見えないというだけ。そして、その小さな変化が後の何にどう影響するのかは、あまりにさまざまなことが相互に影響しあっているために直接的にはわからないだけなんです。

これはもちろん、組織を運営する側のみなさんにも覚えておいていただきたいことでもあります。

というのも、「何か一つの正しい意見を選ぶわけではない」「全ての意見が出された上で、そこから納得解を出すのだ」という意識があれば、一見、立派な意見も、そうでない意見も、全ての意見が表明・共有されることがいかに重要であるかがより深く理解できると思うからです。

そのようにして、メンバーの個々の意見が全て表明され、共有されるような状態になったら、③の状態にあると言えます。

…でも、所属するメンバーそれぞれが好きに意見を言っていいことにしたら、組織としてまとまりがなくなってしまうのではないか?

その心配を払拭するのが、③から④に向かうステップ。ここで、再び選択圧の必要性が出てくるのですが、それについては次回改めてお話したいと思います。