さよならは、突然に
小さな違和感に気づいたのは少し前のことです。
「これでいいんだっけ?」
このマガジンに対して、「何かが違う」、そんな感覚が胸の奥にあるのです。
これまでスランプに陥る度に大きく気づくことがあり、試行錯誤を繰り返して、今年になってようやく「こんな感じで書いていけばいいんだな」という手応えを感じるようになっていたというのに…。
でも、川尻*には黙っていました。
「何かが違う」のだとしたら、「何ならあり」なのかが見えてきてから話をしたいと考えていたんです。
が、それってある種の思い込みだって今はわかります。
「何かが違う」と思うなら、そう考える理由なり、あるいは代案なりがないといけないとどこかで思っていただけ。
しかし、先週になってついに私は「何かが違う」感覚に抗えなくなります。
そして、感性のささやきを受け取ること、それを実行に移すことをあれほど説いてきたのに実践していないということに思い至ります。
そう。この違和感は感性のささやきです。
私がすぐに実践できることは、その違和感を素直に川尻に伝えてみることじゃないか?
そう思った瞬間、何ともいえない嫌な気分になりました。何も問題がなく、何なら最近は書き方が見えてきたなどと伝えていた(そしてそれは本当だった)のに、手のひらを返したかのように「何かが違う」と言うなんて、できればやりたくないです。
でも、川尻は受け止めてくれるだろうとも思いました。そして何より私は世界を信頼することを選ぼうと思いました。私が自分の感性に従って動くことこそ周りの人にとって、ひいては世界にとっても最高最善であるはずだ、と。
対話の大事さを再確認する
やっぱり話してみるって大事です。
私が最初に川尻に伝えたのはまさに冒頭に書いたようなこと、「これじゃないという感覚が大きくなってしまった」ということで、なんでそう感じているのか、この先どうしたいのかは見えないままでした。
ところが、川尻に言われて気づくことがいっぱいありました。
「今のマガジンはあなたにとってコンフォートゾーンにとどまることになっちゃっているんだろうね。新しいチャレンジがなくなってワクワクしなくなっているんじゃない?」
ああ、そうだ。
おかげで、心の奥の方に隠れていた「じゃあ何がしたいの?」が出てきました。
私はもっと自由に、これまでの自分の経験値では未体験ゾーンというくらいにとらわれのない状態で書く(動く)ということをやってみたくなってきているのです。
そのように書いていい、どころか、むしろそのように書け、と言われてきたんだから、やればいいだけなのですが、「そうはいってもこれは動作学のマガジンだから」という制約を取り払うことができないでいるのです。
そう伝えると、川尻は言いました。
「動作学となるとやっぱりどうしても俺の言葉になっちゃうしね。もしかしたらこの先はあなたがもっと自分の言葉で書いていくっていうフェーズに入っていくのかもね。あるいはまったく別の形でやっていくのかもしれないし」
その言葉を聞いた瞬間に心が広がるような解放感を感じました。
手放してみるということに挑戦
「ひとまずこのマガジンはクローズするのでいいんじゃない?」と川尻。
「手放したら、またあなたから出てくるアウトプットも変わってくるだろうから、それを受け取ってこの先どうしたいかを考えればいいんじゃない?」
そんなやりとりを経て、マガジン「動作学というレンズを通して」は今回で最終回とさせていただくことになりました。
川尻が言うように、続けてきたことを止めるということはそれだけで私の環境を変えることになりますから、必然、私から出てくるアウトプットも変わってくるはず。もしかしたら、案外すぐに再開したくなるかもしれないし、そしたらそれをまたレポートすれば動作学の実践レポートとして面白そうです。
ところがすかさず川尻に突っ込まれました。
「それって、手を放すって言っておきながら小指を引っ掛けてキープしておくようなもんや。それだと本当には手放せてないと思うねん」
ああ。
手放すことで自分の環境が変わるからこれまでと違うアウトプットが出てくる、ということだから、中途半端な手放しは手放し損、というか、手放し甲斐がない、ということか。
ということは、本当にさようなら、か。
寂しいけど、一方で、未来に対してワクワクする気持ちがまた出てきたことも事実です。
このマガジンがスタートしてから2年強。振り返ればこの連載を続けることは川尻からの動作学に基づく個人コーチングをシリーズで受けるようなものでもあって、とんでもなく贅沢な体験でした。
この経験を通して得た一番大きな宝は、「何をやるにしても自分が心からワクワクする状態からやることこそが社会貢献になる」と心底思えるようになったことでしょう。
皆さん、今までありがとうございました。お元気で。
(他のマガジンは続きますのでお楽しみに)