野田力「フランス外人部隊 その実態と兵士たちの横顔」
Kindle Unlimitedで読める新書系を漁っている。紙の本よりKindleで読む比率が上がってきた。資源問題的に今後失われていくのが確実な紙の本が、まだ現存しているうちに、絶版ものを中心に、早く電子化されていくことを望む。
フランス外人部隊とはそもそも何か。
フランス外人部隊は、フランス陸軍に属し、主にフランス国籍を持たない外国人志願者から構成される軍隊です。現在は、百か国以上の国から志願してきた八千人ほどの兵士で構成されています。
フランス軍の全体人数が約31万人(日本の自衛隊は約24万人)というから、全体の2.6%程度を構成している。戦争好きのならず者が集まるような偏見もあるが、過去を問わないとはいえ、現役の犯罪者は入れないし(服役終了者は問題ない)、入隊までの関門は多く、ただ人を殺したいとか今の状況から抜け出したいとか、そんな動機で簡単に入れるところではない。
こちらでも採用率は20%となっており、狭き門であることが分かる。
特徴的なところは
・入隊後に本名とは別の名前を与えられる
・フランス人でも入隊は可能(ただし国籍はフランス系の国に変えられる)
・勤務中の多くの時間を施設の清掃などの雑用に費やす。戦地と訓練だけの日々ではない、ということを覚悟しておいた方がいい
などなど。
著者の知り合いの日本人志願兵は、担当者に「キモノ」と名付けられてしまったという。
アフガニスタンに派遣された時に、著者は衛生兵として配備されたが、衛生兵だからといって傷病兵の手当てだけをするわけではなく、前線にも駆り出される。誰も殺し、殺されることもなかったが、命の危険を感じるところは何度かあったと書かれている。
頭を撃たれ、致命傷を負った兵士の手当てをする場面が印象的だ。後頭部には500円玉くらいの穴が開いている。
助けるのは難しいからといって、救命活動を簡単に放棄していいものかといえば、難しいところです。医療半がどこまでのことをやるかは他の兵士も見ています。もし我々が何も処置をしなかったら、”自分たちが負傷しても何もしてくれないかもしれない、と思われ、士気が低下するかもしれません。
5年契約+1年半の延長でありながら、戦地で過ごした期間は意外と短いように読んでいて思えるが、当然事情はある。
派遣期間の設定も難しいところです。アフガニスタンではNATOの基準に合わせて派遣期間を半年としていましたが、四か月くらいが過ぎた頃からピリピリした人が増えていたようにも感じていました。長く戦場にいて、精神面を正常に保つのはそれだけ難しいということなのだと思います。イラクに派遣された自衛官のなかには帰国後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む人がいると聞きます。自殺者が出ているとも聞いています。そうなるのはわかる気がします。
抱える兵数がイコール実戦投入出来る兵数、というわけではないのだ。
ハイライトをつけた部分を読み返してみると、かなりの量があった。普段はあまり触れない事柄について書かれている書物はやはり新鮮である。
書物、という言葉もやがて違う言葉になっていくのだろうか。中身の言葉に変わりはしない。電子化で半永久的に残ってしまうデータからより良質のものを捜していくには、やっぱり量をこなしていかなければならないだろう。
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