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「哀歌」遠藤周作 棄教・ころび

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高校の頃に読んだ「深い河」以来の遠藤周作。講談社文芸文庫の短編集。Kindle unlimitedに入っていた。

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日本でキリスト教が弾圧されていた頃の話がたびたび挟まる。すり減った踏み絵、あっさりころんだ(棄教した)ものの話。拷問を受けて晒し者にされる仲間を見るに見かね、再び囚えられたものの話。

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短い章立てで書いてみる。

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本の感想だけを書きたいのではない。

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日野啓三の短編小説「天窓のあるガレージ」を読み返す。四度目か五度目くらい。福武文庫版、こちらは紙の文庫本だ。

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「天窓のあるガレージ」は、このように番号の振られた短い断章の連なりで、ガレージで過ごす少年の幻想的な風景が描かれている。

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私はころんだものらの話を読みながら、殉教、弾圧、などについて、別のことに当てはめて考えていた。

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会社を辞める。

私が出ることを拒否するようになった朝礼が終わる頃合いに出社する。

運悪くまだ朝礼が終わっていない日も、立ち並ぶ同僚たちの横を素通りする。

「あいつはああいうやつだから」

戻りたくなる時もあった。

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「辞めるのをやっぱりやめます」と叫んで戻ることも考えた。

退職後の不安を想い、朝起きた途端に、全てをなかったことにしたいと唸る日もあった。

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殉教者にはなりたくない。

ころんで、蔑まれて、笑われても、生きていたい。

トップの退屈な言葉の連なりを、分かった振りばかりの的外れな指摘を、聞き続けることは私には出来なかった。

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私は、晴れた日でも、雨傘を差して生き延びる。真夏の直射日光を避けるために、周囲の目は気にしない。

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なぜ殉教出来る。

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遠藤周作「哀歌」の話だ。

私は本の感想を書きたいのではない。

本との関係を書きたい。

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引き継ぎをしつつ、日々の仕事をこなしつつ、カウントダウンが始まる。

不安は薄れ、喜びが勝る。

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ほんとは棄教と呼べるような対象も持ってはいない。

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夜中まで起きてあれこれやら。

朝早く起き出してあれこれやら。

どれもせず、睡眠時間が長くなるばかり。

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「哀歌」との関係を書き終わるまでに、日野啓三「天窓のあるガレージ」、坂口安吾「夜長姫と耳男」を読み終えている。

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本との関係は続く。

物語と物語は関係していく。

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ころんでもころばなくても、物語は続く。

私は、続く。


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