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恒川光太郎「異神千夜」

 まだ数冊あると思っていたが、既刊の恒川光太郎作品はこれで全て読み終えてしまった。単行本と文庫本でタイトルの違う作品があったので、まだ未知の作品が読めると思っていたら、既読のものだった。この短編集「異神千夜」も、単行本時は「金色の神、彼方に向かう」を改題したものだ。

 数奇な運命で南宋の貿易商人の元にいた日本人が、元寇に巻き込まれ、元の間諜として故郷の日本でスパイ活動をする『異神千夜』。

 山の中に現れる超自然現象「風天孔」に飛び込む人達を描く『風天孔参り』。

 森に住むかつて人間だったものが、旅の女性に取り憑き、その人と人生を共にしていく『森の神、夢に還る』。

 ふと拾った鼬は、超常の獣だった。動物離れした知性と千里眼で、関わる少年少女達の運命を変えていく。『金色の神、彼方に向かう』。

 こうした粗筋紹介がどこかの誰かの琴線を少しでもくすぐることが出来るかは不明だが、恒川光太郎節が全頁鳴り響いている。

 ここまで一気読みしてきた恒川光太郎作品を、これからは待ちながらでしか読めない。これからの日々が苦しく長いものになりそうだ。当然大好きになれる作家を今後も探してはいくが、そこまで自分は生きていられるか怪しい。自分にしか受けそうもない百パーセント自分好みの作品は、自分で書いた方が早そうだ。



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