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6面の全てに「カレー」と刻まれたダイスで患者のメニューを決めよ

 入院14日目の昼食にカレーライスが出た。
「カレーライスだあ!」という私の叫びと同時に雷鳴が響き渡り、病棟は真っ二つに割れ、地底からせりあがってきたアンガス・ヤングがギブソンSGをかき鳴らして、遠藤賢司「カレーライス」を絶叫し始めた。

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 あっという間にカレーライスは食べ終わってしまった。正直美味しかったかそうでもなかったかすら分からない。冒頭の「カレーライスだあ!」は実際に発した声ではなく心の叫びである。雷鳴や地割れはフィクションである(真実だと思って心配された方ごめんなさい)。

 驚きは夕食時にやってきた。
 メニューはカレーライスではなかったのである。
「カレーライスではない……だと!?」
 なぜか私は続けてカレーライスを食べられる気でいたのだ。家でどっさりと作ったわけでもないのに。学校の給食だって2日続けてカレーライスを出すことはないだろう。ましてや病院食だ。入院患者に与える食事だ。

 だが待ってほしい。昭和スポ根ものにつきものだった「ウサギ跳び」というトレーニング方法が、今では膝を痛めるものだと周知されているように、炎天下での運動時に水分補給を禁止されていた時代があったように、「病院食で立て続けにカレーライスを出してはいけない」という項目も「古い悪習」という箱に入れて捨て去るべき時代ではないか。

 そもそも自分はそこまでカレーライスが好きであったか、と自問する。これまでの入院生活で、明らかにテンションの上がったメニューはあった。
「うどん!」「牛丼!」「ラーメン!」
 しかし「カレーライスだあ!」には及ばない。

 栄養士さんがうまくやりくりすれば、3食カレーでも問題ない食事ができるのではないか。それが無理なら毎食小皿にカレーライスを入れてくれてもいい。無理なら中皿でも大皿でもいい。朝食のロールパンをカレーパンに変えるという手もある。聞こえているかい、栄養士という名の神様よ。献立にお悩みなら、6面全てに「カレー」と刻んだダイスを転がして、毎食のメニューを決めておくれ。

(了)

※入院生活14日目の昼食に出たカレーライスの衝撃から衝動的にポストしたものを膨らませました。

遠藤賢司「カレーライス」



入院費用にあてさせていただきます。