千人伝(七十六人目~八十人目)
七十六人目 歯車
歯車は視界の端でキシキシと音を立てている。
他の人には見えないが歯車も人である。
歳とともにガタが来てあちこち動きが悪くなるし、一部壊れて二度と戻らない箇所もある。
人であるから油を塗ったところで意味はない。
だから泥ばかり塗りたくり、より一層視界の端でガタガタと言い始める。
七十七人目 ピントウ
ピントウは早朝や真夜中に人の家のインターフォンを鳴らして回る迷惑な人である。住民は寝ていたり、強く警戒をしたりで、既に逃げ出してしまったピントウの背中を見る