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映画マザーを観た

重い。
あまりにも重い。
この映画は、2014年3月、埼玉県川口市で17歳の少年が祖父母を殺害した上、キャッシュカードなどを奪う事件を映画化した作品です。

まったく働こうともせず、家族や親戚、勤務先の上司からも息子に借金を工面させ続け、挙げ句の果てには実の祖父母を殺してまで金を奪わせた母親。

逮捕後の裁判では、「母親から指示はなく、全て自分が悪かった」と言い通し、映画では懲役12年の判決を下された息子。

逮捕後も、「指示なんてしてません」と言い張り、懲役2年、執行猶予3年の判決を下された母親。
(実際の事件では、少年は懲役15年の判決が出て服役中。母親は2014年9月に懲役4年6カ月の判決を受けました)

残された5歳の妹は施設に預けられたが、もしも母親が出所して自身が育てることになってしまった場合、今度は娘に売春させるのではないかと心配してしまうほど、映画の中の母親はどうしようもない女性だった。

映画の中で、拘置所で少年に接見する弁護士が「あなたと母親は共依存だ」と言うシーンがある。
虐待されても尚、母親を庇い、母親に心を寄せる少年と、どのような状況に陥っても愛人と二人で逃走することはせず、必ず息子と娘を連れて行く母親。
映画を観る限り、息子は借金の工面をするための「パシリ」のような存在でしかなく、そこには親心も愛情も、微塵も感じられなかった。

しかし。

そんな母親から逃げ出すことをせず、母親の指示を従順に受け入れ続ける少年。
ここに、親からの虐待を受けている子どもたちを救う難しさがあるのかも知れない、ということを痛感させられました。

この事件、裁判を取材して書かれた、ジャーナリストの山寺香さんのルポ「誰もボクを見ていない〜なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか」も読んでみたいと思いました。

著者の山寺さんの勧めで書いた少年の手記に、こんな言葉が書かれているそうだ。
「自分が取材を受ける理由は世の中に居る子供達への関心を一人でも多くの方に持っていただく為の機会作りのようなものです(同書より)」

この映画を観て思ったことは、親戚や行政や、或いは近隣で生活していた誰かが、彼らの異変に気付いて、手を差し伸べることはできなかったのだろうか?ということでした。

しかし、この手記に書かれた少年の言葉に、僕は自分の軽率な「良心」を恥じました。

「一歩踏み込んで何かをすることはとても勇気が必要だと思います。その一歩が目の前の子供を救うことになるかもしれないし、近くに居た親が『何か用ですか?』と怪訝そうにしてくるかもしれない。やはりその一歩は重いものです。そしてそれは遠い一歩です(同書より)」

傷ついている誰かを救うことは、とてつもなく重く、遠い。


追伸
長澤まさみの演技の迫力。そして今作品が初出演の新人俳優、少年役の奥平大兼(おくだいら だいけん)の演技がスゴい!!!そういう意味でも、是非観て欲しい映画だと思います!

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