【やくだつ原子】Vol.8「塩素(Cl)」
本日の原子【塩素】
キーンコーン♪カーンコーン♪
ひこまる先生
「皆さん、お久しぶりです!一月半ぶりですが、お元気だったでしょうか?(笑)」
一同
「はーい!!」
ひこまる先生
「秋休みを挟んで、久しぶりの『やくだつ原子』の授業となりますが、まずは復習として、前回取り上げた【銀】について振り返りたいと思います。喜多くんからお願いします」
喜多
「ゴールドラッシュならぬ、シルバーラッシュでビッグマネーの可能性が!」
MAX
「銀は銀でも、水銀は銀じゃない(笑)」
カミィ
「シルバーアクセサリーが黒くなるのは、酸化じゃなくて硫化した、いぶし銀」
YMT
「【銀イオン】には消臭効果があるんですよね」
ひこまる先生
「はい、皆さんありがとうございます。【銀】は、私たちにとっても身近な原子なので、覚えておくと何かの役に立つと思います!
さて、それでは、今回取り上げる【塩素】について学んでいきたいと思います。まずは、塩素について、どんなイメージがあるか、教えてもらえますか?」
喜多
「混ぜるな危険!?」
MAX
「プールとか、消毒で使われていますよね」
YMT
「漂白剤として、キッチンとか洗濯で使われたりしていますよね」
カミィ
「確か、戦争で毒ガス兵器にも使われていたとか・・・」
何が「まぜるな危険」?
ひこまる先生
「皆さん、ポイントを押さえていて素晴らしいですね!
それでは、まずはなぜ「混ぜるな危険」なのか、考えていきましょう!」
喜多
「先生、何を混ぜたら危険なんですか?」
ひこまる先生
「混ぜたら危険なものは、「酸性タイプの洗剤」です。【塩素】と酸性のものを混ぜてしまうと、【塩素ガス】が発生します。この【塩素ガス】は、大量に吸い込んでしまうと、意識が朦朧としたり、死に至ることもある、とても危険な気体です」
MAX
「うわっ、本当にヤバイんですね・・・」
ひこまる先生
「そうなんです。
【塩素】には、強い殺菌作用あるので、コロナ対策として、消毒や除菌が徹底されていますよね。よく使われている【次亜塩素酸水】は、比較的安全ではありますが、塩素系なので、酸性の洗剤と混ぜてしまうと、【塩素ガス】を発生させることがあり、要注意です。キッチンの漂白剤などで使われているのは、【次亜塩素酸ナトリウム】と言いますが、こちらの方が【塩素ガス】が発生しやすいので、取り扱いには気をつけてくださいね」
喜多
「どちらも、綺麗にするという同じ目的のはずなのに、やり方が違うだけで危険になるなんて」
カミィ
「『正義も違えば相成らず』ってね」
MAX
「そんなことわざありました?(笑)」
ひこまる先生
「カミィ君、うまいことを言いますね(笑)。確かに、どちらも消毒や除菌する為のものなのに、混ぜることで危険なものになってしまう。一応補足すると、それぞれ対象が違うと言えます。塩素系は、カビや菌を対象にして、漂白したり除菌するのがメインですが、酸性は主に、水回りなどの汚れを落とすことに適しています。なので、プールの消毒に【塩素】が使われているように、消毒や除菌には【塩素】の方が適している、ということですね。
どちらも綺麗にすることが目的であっても、それぞれ違いがあるのですね」
カミィ
「なるほど。人の心を綺麗にする方法は、一つじゃないってことと同じですね」
生活に欠かせない「食塩」
ひこまる先生
「カミィくん、見事にまとめてくれましたね(笑)
次に、【塩素】と言えば、私たちの生活には欠かせない『食塩』の元にもなっています」
喜多
「『塩の素』ですもんね!」
ひこまる先生
「そうですね。『食塩』は、正しくは【塩化ナトリウム(NaCl)】といい、【ナトリウム】と【塩素】が結合してできています。ちなみに、食塩も前回の授業で出てきた『イオン』の結合による結晶なんですよ」
MAX
「『食塩』にも、イオンが関わってたんですね!」
カミィ
「そういえば、『機動戦士ガンダム』でも描かれてましたけど、『塩』がなければ、人間は生きてない。つまり、【塩素】がなければ、人間は生きていけないってことですよね?」
喜多
「タムラコックですね!!」
ひこまる先生
「その通りです!【塩素】がなければ、人間は生きていけないということになりますね。ただし、酸性のものと混ぜてしまえば人の命を奪うことにもなるという・・・」
喜多
「『生殺与奪の権』を握った原子ってことですね!!」
(出典:『鬼滅の刃』/吾峠呼世晴 集英社)
ひこまる先生
「ピンポン!では、どの原子だったか覚えてますか?」
喜多
「えっと・・・たしか【窒素】だ!!」
ひこまる先生
「その通りです!よく覚えていますね!!」
カミィ
「『食塩』と言えば、『敵に塩を送る』ってことわざもありますよね」
喜多
「上杉謙信ですよね!!」
ひこまる先生
「そうですね。塩の供給を止められた武田信玄に、ライバルである上杉謙信が、塩を送ったというエピソードですね。上杉謙信が『義の人』と言われるようになった裏には、【塩素】が関わっていたのですね」
戦争で使用された、毒ガス兵器
カミィ
「日本では命を救った【塩素】も、第一次世界大戦では命を奪う『毒ガス兵器』として使われたんですよね」
ひこまる先生
「そうなんです。第一次世界大戦では、ドイツやフランスが使用し、100万人が犠牲になったそうです。ドイツといえば、アウシュビッツ収容所が有名ですが、有毒ガスによってユダヤ人を大量虐殺したのも、【塩素ガス】を使用したことに起因しているのでしょうね」
喜多
「ドイツの科学は世界一ィィィイイイイ!!」
MAX
「ジョジョのシュトロハイムね(笑)」
(出典:『ジョジョの奇妙な冒険』/荒木飛呂彦 集英社)
ひこまる先生
「毒ガスと言えば、ドイツのイメージがあるかもしれませんが、実は日本でも、第二次世界大戦で化学兵器を研究したとも言われています。
私としては、人を殺す科学を世界一とは認めたくないですが、シュトロハイムは好きです(笑)。
物事には表と裏がありますが、『科学』によって、人を生かすことも殺すこともできます。ただ、私も科学者の端くれとして、人や環境に役立てるように、科学を研究していきたいものです」
オゾン層破壊の一因
ひこまる先生
「最後に、もう一つだけ述べておきたいことが、『オゾン層破壊』についてです」
MAX
「たしか、【酸素】の授業でも触れていましたよね?」
ひこまる先生
「そうです。【フロン】という物質が、成層圏で強い紫外線を浴びると、【塩素】を放出するんです。その【塩素】が、酸素と結合することで、オゾン層が破壊されるんですね」
喜多
「そういえば、そんなこと言ってましたね(^^;」
ひこまる先生
「【塩素】は、食塩として命を育む元になったり、ウイルスや細菌から身を守ってくれたりします。ちなみに、食品性ラップにも含まれており、食卓も守ってくれています(笑)。
反対に、毒ガスとして人の命を奪ったり、オゾン層を破壊して、生物を脅かすこともあります。私たちにとって身近な原子ですが、取扱注意な原子ということですね。
さて、今回の【塩素】はどうでしたか?」
喜多
「やっぱり、『生殺与奪の権』を持った原子ってことですね!!」
MAX
「特に今の時期、なくてはならない原子だけど、使い方を間違えたら危険な原子ですね」
カミィ
「そうだよね。結局は、扱う人間次第だよね」
YMT
「次亜塩素酸水を使うときに、酸性のものと混ぜないように気をつけます」
ひこまる先生
「はい、皆さんありがとうございます。
【塩素】は、人体には有害ではありますが、扱い方がとても重要な原子です。ぜひ、『やくだつ原子』を学んで、役立てていくようにしていきたいですね。
それでは、今回の授業を終わります」
【塩素】のまとめ
・漂白したり、消毒することができる
・「次亜塩素酸水」は、危険性が低く、コロナ対策に必須
・酸性のものと混ぜると、「塩素ガス」を発生させるため、危険
・人体には有害で、毒ガス兵器としても使用されたことがある
・ナトリウムと結合することで、「食塩」になる
・オゾン層を破壊する原子でもある
道楽舎では、「なりたつ原子」アニメ化プロジェクトを実行中!!物語にして小説化、漫画化、そしてアニメ化を目指しています!
「やくだつ原子」シリーズもプロジェクトの一環として、書籍化を予定していています。過去コラムも今のうちに要チェックです!
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