崖っぷちのサウス・ポイント

サウス・ポイントはアメリカの最南端で、
ハワイ島の南の果て。

先端は切り立った崖になっていて、
かつて崖の下に船をつけて、
荷物や魚を引き上げたという滑車につかまって
覗き込むと高層ビルの屋上の高さぐらいありそう。

真下には白い波が荒々しく当たって砕けてゆく。

崖の周辺を歩くと荒涼とした「果て」の
イメージそのものに赤土がスニーカーを汚していく。

ここはハワイ島の中でも強力なパワースポットで、
ここを訪れた人は今まで迷っていたこと、
決断できなかったことに明確な答えが与えられて
運命が変わる、と言われている場所。

実は、ここに来るのはちょっと大変だ。
レンタカーで事故の時も補償の対象外らしい。

でも、どうしても行ってみたくて、
島を一周するスピリチュアルツアーが
サウスポイントを訪れるというので参加してみたけど、
その時は雨が降っていて、一瞬、車を降りただけだった。

ツアーでは本当はそこで瞑想する予定だった。
でも雨では仕方がない。
瞑想したら、運命を変えられるかもしれなかった。

というわけで、やっぱりもう一度行きたくて、
運転が得意な友達と来た時に
再度サウス・ポイントを訪ねることにした。

南の果てを目指す道は途中から舗装されておらず、
多少ガタつくけど、
特に危ない道ではないことは体験済みだから不安はない。

前方に巨大な風力発電の風車が
何機か見えてきたらもうすぐだ。

今度こそ、運命、変わるかな？と思いながら、
あたりをゆっくり散策してみる。

荒涼とした赤土と断崖絶壁、
その先まで行くと溶岩に覆われた岩場に
さらに大きな波が打ち付けている。

近くまで行って波が砕けるのを
迫力満点で眺めていると、
後ろから釣りをしていたおじさんが
大きな声でわたしたちに、
危ないから、下がった方がいいよ、と教えてくれた。
何人か、ここで波にさらわれて消えたんだと
豪快に笑いながら話してくれたけど、危ないとこだった。

南の果てを満喫したけど、特に迷いも消えず、
スピリチュアルな出来事も起きなかった。

でも自力でまたここに来れたことに満足して、
不思議と気分はスッキリだ。

2021年追記：
サウスポイントに行った頃、
わたしはまだバリバリに会社員で
朝8時前にはデスクに座り、
12時間くらいオフィスで働いていて、
いつもプレッシャーに押し潰されそうになっていたっけ。
今から振り返るとその5年後くらいには
わたしの人生は高速道路のジャンクションで
ゆっくりと大きくカーブを描いて別のハイウェイに
乗り換えるみたいに、いまはまったく別の道を走っている。
だとすると、やっぱりサウスポイントに行って、
その後、運命が変わったということになるのかな？