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【ゲーム開発】ヒットに必要な、たった三つの要素②(全3回)

社外取締役 兼 「ブラックスター -Theater Starless-」プロデューサーの安藤です。
前回に続き、社内向けに「ヒットに必要な、たった三つの要素」と題して行なったプレゼンを書き起こしたものをnoteにて投稿させていただきます。

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安藤武博(社外取締役 / ブラックスター-Theater Starless-プロデューサー)
株式会社シシララ代表取締役/ゲームDJ、元スクウェア・エニックス プロデューサー。代表作は「CHAOS RINGS」「鈴木爆発」「疾走、ヤンキー魂。」「ヘビーメタルサンダー」「ソングサマナー」「拡散性ミリオンアーサー」「実在性ミリオンアーサー」「クロス×ロゴス」等

第1回の記事はこちら

ONLY ONE:誰もやってない

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■FASTをやるとONLY ONEがついてくる

前回からこの二つ目のトピックに入ってますが、FASTをやるとONLY ONEがついてきます。
ONLY ONEっていうのは何か?「誰もやってない」っていうことですね。いまだかつて誰も遊んだことがない。というものでもいい。

例えば、テトリスは突然現れましたよね。ロシアの数学者が考えた。それまであんなもの全くなかったです。グラフィックリソースも別にかかってないし、今、ショートコーディングなら7行で書けるらしいですね。
誰も経験したことのないような遊びだったから、シンプルでもすごく売れた。
そういうことがあると思います。

テトリスは本当に0から作られたものです。残念ながら僕らのクリエーター人生で、稲光のように突如、テトリス級のアイデアが降りてくるのはなかなか難しいと思う。
そういうことを必ずしもする必要はないんです。意外と「誰かやってそうで誰もやってないこと」はないか探すと良いですよね。まだまだあるはずなんですよ。

■二番煎じではヒットの確率は下がる

ドラゴンボールが売れたからってまたスマホでドラゴンボールのゲーム出すのは、ヒットの確率は下がるんですよ。
みんなIPをこぞって取りに行きたいって各社言ってるけど、逆。
そんなことやってもヒットの確率は高くないですよ。だって誰かがもうやってるんだし。
一番最初にスマホでドラゴンボールの本格的なゲーム出したら、それは売れますよ。FASTをやってるんだから。

でも、2番目ってのはよっぽどONLY ONEの体験、ドッカンバトル越えようと思ったらレジェンズくらいのクオリティでようやく噛みつける。それでもなかなかドッカンバトルに勝てない。なぜかっていうとドッカンバトルがドラゴンボールにおいてはFASTだったから。 最初にやられてしまったら、FASTとONLY ONEという視点では二番煎じになってしまう。

こぞってIP取りに行かないほうがいい。大体取られてるし、みんなそのように動くから。IPを取るなら、みんなが望んでる遊びとかサービスで、まだ考えだされてない内容っていうのはアリかもしれないです。

■FFBE誕生秘話

僕はスクエニの時、「ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス」の最初の仕掛けをやってからスクエニを辞めたんですね。

FFを作ろうとしたのはなぜかというと、ファイナルファンタジーっていうテーマがあるにも関わらず、当時あったFFタイトルで自分がスマホのプレイヤーとしてしっかり遊びたいなっていうものがなかったんですよね。

FFのブランドがあったらもっともっと真正面にスマホのロールプレイングゲームをやりたいなって思ってる時に、エイリムからブレイブフロンティアが出たんです。
ブレイブフロンティアが出た当日に、「なんでこれがスクエニから出なかったんだろう?」って思ったんですよね。

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それからプロデューサーとしてエイリムの高橋さんや早貸さんに、すぐ会う機会があった。僕は最初ヴァルキリープロファイルが向いてるんじゃないかと思ったんです。戦闘の手触りやドット絵があっていると思った。

そしたらエイリムの二人から「僕達にファイナルファンタジー作らせてくれませんかね?」って言われて、「え、マジで。」「じゃ、動いてみましょうか。」みたいな話になった。

ずっとオリジナルタイトルだけ作ってスクエニ辞めようかなと思ってたんですが、ついにジョーカー1回切る時が来たかと思った。それくらい彼らの作れる遊びとIPの相性が良かった。ブレイブフロンティアがFFのキャラで動いたら最高だし、それはまだ誰もやってないことだったから。

ブレイブフロンティアのスタッフにFFのブランドを貸して、オリジナルのFFを作ったらすごく売れるだろうという狙い。これはスクエニでないと作れない、スクエニだけがONLY ONEで作れるものがFFです。そこに良いスタッフと企画があって。IPは、そういう時にだけ作るものなんじゃないかと思います。

ドッカンバトルが出た後にドッカンバトルみたいなものを作っても仕方ないし、FFBE出た後にFFBEみたいなの作ってもしょうがない。それでもIPでいきたいと戦略を固定するんだったら、IPでもまだ誰もやってない「ONLY ONE」の内容やテーマか、それが「FAST」かどうかっていうのはチェックしてみてください。

皆さんのプロジェクトにFASTとONLY ONEって入っていますか。入っていたら売れる確率は上がるでしょうね。

■二番煎じまではいけるという話もある

ONLY ONEではなくても、かろうじて二番煎じまではいけるとエニックス(当時)の創業者の福嶋康博さんは言われていました。
ただそれでも「真似はするな」と。ドラゴンクエストが出た後も、ファイナルファンタジーまではいく。数百万本級の超メガヒット。
その次に追随するものってテイルズとかスターオーシャンとか、諸々良い作品はあるけど、JRPGは、その2つに勝てない。2番手までなんです。
モンスターハンターもかろうじてゴッドイーターまででしょ。

ラグナロクオンラインのPSP版も、よく似たような遊びでしたし、妖怪ウォッチバスターズもありましたよね。4人同時で遊ぶコンセプト。一作品目は確かミリオン。でもやっぱりモンハンには勝てないんですよね。

やっても二番煎じまでギリギリ通用するけども、三番煎じのプロジェクトになるとヒットの確率は低いです。

立ち上げる前に絶対にチェックしてください。それが最も「速い」ことなのかとか、まだ「誰もやってない」ことなのかどうか。

次回は
【ゲーム開発】ヒットに必要な、たった三つの要素③(全3回)
を更新します。お楽しみに。

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