不安と希望と無鉄砲

 「不安は一生付きまとう」

 これはアロマの先生の言葉。アロマの勉強していると、発信力のある先生、知識力の高い先生などの活動をSNSで良く触れる。いくら勉強しても適わない。そんな所で自分のインストラクターとしての需要があるのか、と不安を口にした時に貰った言葉。

 私から見たらとても活動的で軌道に乗っているように見える先生も、常に不安を抱えているという。やっぱりそういう物なのか。

「約束された成功も、約束された失敗もない」

 これは私が常日頃感じている事。だから全方向リスク。全方向リスクなら、それはもうリスクじゃないから、好きな方に進めばいい。そう思って動いている。これは崖っぷち人生だから、そう感じているだけなのかもしれないけれど、災害や事故、それこそ不祥事だってあるかもしれない。人気芸能人があっという間に転落している姿がワイドショーを賑わせているのを見ると、ほんと人生何があるか分からない。だから余計に不安にもなる。

 そういえば 子連れ家出をするとき、いや、もっとずっと前から?常に不安を身にまとっていた気がする。そもそも私は無能力者だと思っていた。愚痴になるので詳細は割愛するとして、友人からはドン引きされる位自己肯定感が低かった。だってみんなの前の私はPTAで委員長やったり、色々企画したりして友人も多い。なのに在宅ワークしている夫がいる家に帰るのが苦痛で、無駄にうろうろして、やっと家に帰って明るく振る舞う。無意識に寝転がり「天井が遠いなぁ。なんで床に沈み込んでいけないんだろう」って、常に顔の横に畳を感じていた。今考えると鬱だわ。当てはまる症状多すぎる。そんな私が限界突破の決意して、こっそりと家を借りて荷物を少しずつ運び出す。

「何もできないんだから」

 色々と調べれば調べるほど無謀な気がしてくる。でも精神が限界。元々即断即決タイプ。ウダウダ考えても誰も未来を担保できない。だって次の瞬間脳梗塞で倒れてしまうかもしれない。父が実際にそんな感じだった。叔父もそうだった。ならば。生きたいように生きよう。娘、巻き込んでごめん。かーちゃん、頑張るから。

 勤めたデイサービスでは対人関係では全然問題なくて、でも慣れない仕事に泣きそうになっていった。毎日入れ替わるご利用者は、なんとか名前覚えようにも、「白髪。ショート。杖ついて…」同じ人いっぱいぃぃぃ!いや違う!個性を!個性を覚えるんだぁぁぁ!!!
 介護職員初任者研修で覚えたことは理論。基本。でも「高齢者の皮膚は脆い」等と説明を受けても、目の当たりにするものは全然違う。まさかこの程度で内出血!?あたふたして、3か月以上たっても、出勤前は緊張で吐きそうになる事が多かった。
 同僚はみなベテラン。だから安定していたのだけれど、私はその経験値を埋める為にも勉強していた。介護福祉士の国家試験まで勉強モードを維持するためだと思っていたけれど、今考えると不安を取り除きたかったのも結構ある気がする。

 パートの収入は時間との引き換えで、迫る崖っぷちな未来を打破すべくアロマセラピーなどを勉強していく。疲弊している介護関係者や、認知症や介護保険などが分からず、介護自体に漠然とした不安を抱えている人、そういう人への何某かの繋がりを作りたいと思ったのは、多分初任者研修中だった。研修終盤に行われる個別面接。本当はこれからどういった職場に勤めたいか、という話をするのだけど、すでに就職先が決まっていた私は、研修で学んだ「レスパイトケア」についての感想を話していた。
 ご家族と職員が考え方の差などで揉める原因の一つに、介護疲れがあると思う。そして知識が共有できてない。だからそういう間を埋めて行けるような介護がしたい。
 まだ現実を知らない頃の感想だけど、当たらずとも遠からずって辺り。青いなぁ。年取った青さだなぁと思わずにはいられない。でもその後アロマや介護の勉強して、ちゃっちゃくちゃらになる頭の中をそれを原点に引き戻すワードになっているんだから侮れない。

 SNSを見ていると、その業界のプロが、物凄い勢いで勉強していく。そうすると駆け出しの介護職員である私に出来ることは何もない気がしてくる。アロマテラピーも同じ。それこそ十年以上インストラクターをやって、しかも薬学だったり、医療だったり、植物学だったりに長けている人が、ものすごい勢いで、勉強して、発信している。物凄いポジティブに輝きを放つ姿は太陽神ラー。私の出る幕ないじゃん。いや、そもそも需要ってあるの?こうなるとネガティブ安定の自己否定感発動。夜中に脂汗と共におう吐感に苛まれる。

 ある人が何気なく私に突いた本質「知識は豊富だけど、圧倒的に経験値が少ない」。そう。私に足りないのは経験値。だから語る話が我ながら薄っぺらだ。根っこが欲しい。節操なく色々動き回るけれど、やっぱりどこかで渇望している。ここにきて顕在化する自己否定感。
 ちょっと深呼吸。目を閉じて落ち着こう。これってマインドフルネスってやつかな。
 ご利用者の連絡帳に描く小さな落書きは、ご本人だけでなくご家族にも喜んでもらえている。施設で何かイベントがあり、掲示物があったり小道具があったりすると、相談されるようになったのは工作好きのおかげ。職場のナースはどの部分だか分からないけれど、どの人もすごくべた褒めしてくれる。そしてアロマの勉強の課題。これはどの人に見せてもすごく褒められる。肝臓の位置や機能すら分かっていなかったから、どうせ課題を仕上げるなら、後で資料として耐えうるもの、というめっちゃ自己満足なレポートだったのに、本当に褒められる。

 褒められるっていいなぁ。不安が希望に変わる。

 薬学に長けていなくても、経験が浅くても、私には私なりの人生があり、経験がある。そしてそれは恐らく自分が考えている以上に周りから評価されている。そういう事を一つ一つ思い出し希望にすり替わっていくと、根拠もなく「あ、大丈夫なんだ」って思えてくる。心身医学や健康心理学の授業で、「今ここ」というワードが何度も出てきた。過去や未来へ発想を飛ばし、今ここに戻ってくる。憂いでも仕方ない。自分の足元を見つめ直す作業。

 褒められるって大事。認めてもらうって大事。マズロー5段階では多分承認欲求あたり、つまり4番目位なんだけど、もしかしたら安全と同じくらい大切な事なのかもしれない。だってそれにより生きる気力とかにも関わってくる。

 そして多分私は一生不安と希望と無鉄砲を繰り返す。疲労や不調でマイナス思考になり、右往左往して、今ここに戻ってくる。


 

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