販売員をしていた頃の話 2 コンクールに出よう

店長に出ないかと言われたサービスコンクール。

宮城県内のみならず近隣の県から接客に秀でた販売員たちが集結し、ロールプレイング方式で自身の接客を披露し審査されるといったものだった。

予選はおよそ50名が出場し、そのうちおよそ半数が本選へと駒を進めることができるそうだ。

当時はまだ入社して5ヶ月。
そんなものに出られる自信はなかったので丁重にお断りした。

しかし店長は折れなかった。

「あのこちゃん、うちの店からはもう5年もの間誰もコンクールに出てないんだよ。どうしてかわかる?」

「わかりません」

「コンクールに出せるような人材がいなかったからだよ。あのこちゃんを見ていて、久しぶりに楽しそうにいい接客してくれる人が入ってきたなと思ったんだ。
うちにはこんなにいい社員がいるんだ、ってみんなに見てほしいと思った。
練習だって全力で付き合うし、あのこちゃんにとってもいい経験になると思うよ。どう?」

店長は私のことをこんな風に思ってくれていたのか。
そんな素振りを見せてきたことはなかったのでびっくりしたが、純粋に嬉しかった。

翌日の出勤までに出るか出ないか答えを決めて欲しい、と言われた。
考える時間の短さにちょっと笑ってしまった。

帰宅してまず、友達に電話して聞いてみた。

サービスコンクールのことを話すと友達は大興奮。
めっちゃ面白そう、本選進めたら英雄になれそう、出た後色々と得なことありそう、などなど。

でも…と私が言いかけるたびにそれを遮るように全力でおすすめしてきた。
そして風呂に入るとのことで途中で勝手に電話を切られた。
友達はいつもこんな感じなのである。

その後も1人で考えてみた。

本選に進めなくたって何か罰があるわけでもないし、出て損することは絶対にないんだしとりあえず出てみてもいいのかもしれない。

それに心の奥底では、出てみたいと思っている私がいた。
なんだかんだで目立つことは結構好きなのだ。

店長との練習はだるそうだけど、なんか楽しそうでもあるし。
軽い気持ちで出てみることにした。

翌朝出勤するなり、店長に
「どうする?」
と聞かれた。

私は

「出ます!!!!!!」

と大声で即答した。

お店のパートさんたちから拍手が起こった。

「あのこちゃん頑張れ〜!!!」

と言われた。

パートさん達は、5年ぶりにお店からコンクールに出る人がいることがとても嬉しいらしかった。
コンクールは私が思っている以上に大きな大会らしい。

軽い気持ちで出るつもりでいたが、パートさんやお店のためにちゃんと頑張らなくてはならないな、と思った。

その日の仕事終わりから、コンクールに向けて店長との練習の日々が始まった。

続く

関係ないけどきき湯があるとないで入浴の質がてんで違う。肩こりがかなりマシになる。これからもきき湯のお世話になる。

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