紀伊國屋ワゴン

顧客行動とデザインを考える

9月20日から数週間、紀伊國屋新宿本店の1階入り口付近に『仕事の説明書』のワゴンが設置されております。このパネルの制作秘話についてお話したいと思います。

このパネルに求めるものとは

設置が決まってから、コピーライター養成講座に通っている方にキャッチコピーを考えてもらうことになりました。いろいろインタビューを受けながら、どういうものか決めていくことになるのですが、一番最初の質問が強く印象に残っています。

このパネルに求めることはなんですか?

自分の中で答えは決まっていました。

足を止めてもらうことです。

キャッチコピーを作る時も何を達成すべきかを第一に考えていて、それはレポートを作成する時、文章を作る時と全く同じなんだと感じました。

パネルに託した役割:【目的の定義】

なぜ、「足を止めることを第一に考えてもらいたい」と伝えたか、その理由をお話します。

『仕事の説明書』は誰の何を解決する本なのか、タイトルでは分かりにくくなっています。名前で検索した際に、確実にユニークになるようなタイトルを考えたのですが、逆に仇となってしまいました。

また、本文に書かれている、ロジカルシンキングマーケティング理論・ビジネスフレームワークは仕事をする上で必要不可欠なテーマではあるが、顕在的に「学ぶ必要がある!」とは思われていないと感じます。

潜在的な顧客に刺さるようなキャッチコピーを考えていただきたかったのです。

パネルに託した役割:【AIDA理論に基づく決定】

また、パネルと本の役割を次のように定義しました。

スクリーンショット 2019-09-21 17.52.21

E・K・ストロング氏がセールスにおける顧客心理の段階を注意・関心・欲求・行動の4 つに分類し、マーケティングにおけるコミュニケーションの手法を提唱したAIDA理論があります。

これに従って、パネルだけで購入(行動:Action)に至るものを作るのは困難だと感じました。ワゴンで足を止めれば、商品を手に取る。商品自体は著者の社会人人生を全て注ぎ込んだものなので自信はある。とにかく商品を手にとって、数ページ見てもらえば、買ってもらえるのではないかと考えたのです。

手に取ってすらもらえなければ、決して購入には至りません。その最初のステップをパネルに託そうとしたのです。

こうした思いを伝えて、2人で何度かブレストをして最終的に

「作業」ができる人より、
「仕事」ができる人になりたい。

と言うキャッチコピーが生まれました。本文にも、

「作業手順書」や「操作マニュアル」はあくまで仕事の一部を切り出したものであり「仕事の説明書」ではないのだ。

と作業と仕事の違いを述べており、同じような悩みを持っている人が足を止めるのでは?と考え、とても素敵なキャッチコピーをいただきました。

デザインを考える:【競合とどう戦うか】

ワゴンは3つあります。どうやったら一番目立つパネルになるかを考えました。そのために、数週間で入れ替わるパネルを見るために、紀伊國屋書店に何度も通いました。

割と多かったのは、
・書影を大きく見せるもの
・書籍と同じカラーを採用しているもの

・情報がたくさん詰まっているもの
が多かった印象です。

いくつかを見た結果、パネルのみで購入の意思決定をさせるために情報をたくさん詰めているのではないかと予想しました。また、自分たちが同様のパネルを作ったら、確実に埋もれてしまうだろうと考えました。

そこで「足を止めてもらうことを目的にしたパネルにしよう」と予め考えていたので、書影は大きくせず、キャッチコピーで勝負してみようと考えたのです。パネルの前に来れば、嫌でも書影を見ることになるので、大きくすべきはキャッチコピーと判断しました。

デザインを考える:【人間が認識しやすい視覚属性(1)】

人間が認識しやすい視覚属性を下図にまとめました。

スクリーンショット 2019-09-21 18.14.08

これに沿って、いろいろ検討をしました。トップのパネルをもう一度、掲載します。

紀伊國屋ワゴン

偶然の産物ではあるのですが、コピーライターさんがiPadでイメージ画像を作った時、書影とテキスト(手書き)を並べてみたところ、彼女の字がとても綺麗で親しみやすいもので、この手書き文字をそのまま採用したいと申し出ました。

周りが活字で溢れる中、手書き文字があると形状に差異が発生するため、より認識しやすくなると感じたからです。

デザインを考える:【人間が認識しやすい視覚属性(2)】

どこにどのように飾られるのか、事前に視察した際に撮影した画像があったので、いくつかのアイデアを雑コラしてみました。

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表紙に使われている紺をベースに考えると、設置場所のが割と暗めなところなので、沈んだ印象を受けます(左側)。逆に明るい色を配置した方が目立った印象を受けます(右側)。

パネルが設置される場所によって、正解は異なる

と言うことを学びました。これは視覚属性の「色」に着目した改善です。
それでもまだまだ改善は続きます。

では、先ほどの右側の画像と最終型に近い画像を比べてみます。

スクリーンショット 2019-09-21 18.43.24

個人的には、右側の方が注目を集めるのではないでしょうか。本や周りの構造物が直線的であるため、あえて斜めのデザインを採用することで、映えて見えると考えます。これは視覚属性の「方向」に着目した改善です。

このように飾られる場所の写真を撮影し、雑でもいいのでコラージュしてみると、作品単体で見るよりも、より一層イメージが湧いて、意思決定がスムーズに進みました。

異なる意見があるかもしれませんが、これが今の僕らにできる最適解であったと信じています。

全ての選択に意思を込める

出版社経験0の自分たちだからこそ、固定概念を捨て、その時々で何がベストかを探りながらチャレンジしています。

また、今回の競合を意識したデザイン、視覚属性、AIDA理論など、全て『仕事の説明書〜あなたは今どんなゲームをしているのか〜』に書いてあります。それを愚直に実行した結果、たどり着いたパネルです。

そんな『仕事の説明書〜あなたは今どんなゲームをしているのか〜』ですが、【東洋経済オンライン、Amazon週間ビジネス・経済書ランキングBEST200】に8週連続ランクインしました!!

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「すべての選択に意思を込める」もよかったら読んでください。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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